見出し画像

"COPY BOY" ぼくのクローンは小学生㉒【ハロウィーン!】

ワケあって、大学生の僕はクローンと暮らしている。ヤツは小学2年生。8歳の子どもだ。
顔は、幼い頃の僕と全く同じ。ジャンケンすると決着がつかない。
なんで、こんなことになったのか。よかったら、そのワケを聞いてほしい。
(※第1話へ)

<秋、第22話>

ちょっとやっかいな問題が起こってしまった。

小学校のハロウィンパーティーのこと。ほんの遊び心で、僕とチビは仮装をしてみた。
腹話術の人形の仮装だ。
揃って同じ青い半ズボンにサスペンダーと蝶ネクタイ。口の両端から顎にかけて縦に2本の線を書き、ほっぺを赤くメイクしただけ。元々同じ顔だ。僕がチビの背中に手を添え、まるで同じ顔をした腹話術の人形が2体。大きな人形が小さな人形を操っているように見せた。

画像1

2人揃って…、

「こんにちは」
「こんにちは」

「マネすんな」
「マネすんな」

「お前こそ」
「お前こそ」

頭を叩く”パコン!”
頭を叩く”パコン!”

首が伸びて「ヒャー」
首が伸びて「ヒャー」

ただそれだけ。それだけなのに、小学生にはウケた。子供騙し、とはよく言ったもんだ。
なにせ同じ顔で見事なまでの同じ動きと同じ言葉のシンクロ。初めてのペアルックもそれらを際立たせた。おかげでチビっ子たちに”キモカワ”と絶賛された。人によっては同じ顔に驚いて「特殊メイクですか?」と本気で尋ねられることもあった。何度も繰り返し披露するうち、どんどん人が集まり、一気に人気者になった。

画像2

しかし、問題はこれから。
注目を集めてしまったために、誰かが動画を撮っていたらしく、SNSにアップされたばかりか、ネットで話題になってしまったのだ。

2人揃って、

「こんにちは」
「こんにちは」

「マネすんな」
「マネすんな」

「お前こそ」
「お前こそ」

頭を叩く”パコン!”
頭を叩く”パコン!”

首が伸びて「ヒャー」
首が伸びて「ヒャー」

ここからは偶然のアクシデントが重なってしまった。
たまたま友達に「ユタカくん」と呼ばれて…、

「ん?」と振り向く。「なに?」
「ん?」と振り向く。「なに?」

たまたま居合わせた犬に「ワン!」と吠えられ…

「ヒャー!」とビックリ
「ヒャー!」とビックリ

揃って気まずくて…、

頭をポリポリ掻く。
頭をポリポリ掻く。

と思ったら…、

「へえっくしょん!」と大くしゃみ
「へえっくしょん!」と大くしゃみ

これをあまりに揃って同じ顔でやったもんだから、「面白い」と動画で投稿されてしまった。
ネットの世界で一気に拡散され、学校や近所でちょっとした有名人だ。チビは人気者になった。
こうなると、いつもいじめてくる子でさえも、「俺は”ユタカくん”と友達だよ」と周囲に自慢してへんなアピールをしてきた。「くん」付けして、急に優しくなって…。あきれたけど、まあ、これはこれでよかったかもね。

テレビの取材の申し込みがあったり、人気が出るのは嬉しいが、
犬巻から軽率な行動するな、目立つとバレてしまう、とこっぴどく叱られた。「契約書に書いてあります」とぴしゃり。

人の興味なんてそれほど続かない。やがて話題も収束していった。

しかし、ほっとするのも束の間…。
そのあと、さらに事態は大きく動く。


(つづく)

第1話へ   前へ  次へ



いいなと思ったら応援しよう!

シオツマ
シオツマのnoteはすべて無料です。お代は頂戴しません。 少しでも多くの方に楽しんでいただけたなら…それだけで幸せです。

この記事が参加している募集