小酒井不木「死の接吻」

生誕130年を迎える小酒井不木は、森下雨村と共に江戸川乱歩を見出だして後押しした作家であり、その一方で生理学や血清学を専攻した優れた医学者としての顔も持つ。
少年科学探偵 塚原俊夫君、霧原警部などを主人公にした探偵小説を法医学などの医学知識を生かして書き、海外の推理小説への造詣も深く、日本の推理小説界におけるパイオニアの一人であった。
残念なことに36歳という短命が惜しまれる作家であり、短編作品の多くが今では青空文庫で読むことが可能だ。
代表作を挙げるなら『恋愛曲線』『闘争』『疑問の黒枠』といったところだろうか。
この『死の接吻』は同じタイトルもあれこれあるが、書き出しからのコレラが流行する時代背景の記述が今のコロナウイルスの流行と酷似しており、今読むと感染の流れ方や人の感情などがいささか奇妙な感覚にとらわれてしまう。



小酒井不木『死の接吻』青空文庫(Amazon Kindle)


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