Masanao Kata

油を売ったり、管を巻いたり、詩を紡いでお茶を濁しては、細々と市井で糊口を凌いで心を潤してます。古典ミステリと電子音楽が好き。 日本シャーロック・ホームズ・クラブ会員、八雲会会員、萬年筆くらぶ会員、近代詩復興委員会会員。 https://bccks.jp/user/112042

Masanao Kata

油を売ったり、管を巻いたり、詩を紡いでお茶を濁しては、細々と市井で糊口を凌いで心を潤してます。古典ミステリと電子音楽が好き。 日本シャーロック・ホームズ・クラブ会員、八雲会会員、萬年筆くらぶ会員、近代詩復興委員会会員。 https://bccks.jp/user/112042

マガジン

  • 読書三十六計

    有名・無名問わず本や文学にまつわるあれこれ。 強引に五文で仕留めます!

  • 万年筆の徒歩旅行

    万年筆くらぶ会誌『フェンテ』に投稿した雑感を順不同で転載するアーカイブ。 万年筆を筆記具より文化的な視点で話そうかと思っています。 マガジンタイトルは、中原中也の詩「自滅」から。

最近の記事

ジェイムズ・P・ホーガン『時間泥棒』

タイトルだけだとミヒャエル・エンデの『モモ』かと思うが、『星を継ぐもの』からなる巨人たちの星シリーズで知られるジェイムズ・P・ホーガンの作品。 ホーガンのハードSFと呼ばれる作風からするとちょっとこの作品は異質で拍子抜けするかもしれない。 物語は、ニューヨークのいたるところで時間が狂い出し、主人公は刑事として治安のために目に見えぬ時間を取り戻すべく奮闘するSFストーリー。 ホーガンに親しんだ方には物足りないかもしれないが、170頁の薄めな物語は終盤に向けて一気に加速するので、

    • 蓮見恭子『神戸北野メディコペンナ』

      万年筆の小説というと、万年筆愛好歴30年の私は読まずにはいられない。 「あなたの人生が変わります 万年筆よろず相談」と謳った看板を掲げる万年筆のペン先調整と販売の専門店「メディコ・ペンナ」を舞台に、万年筆の調整や購入で訪れる客たちが万年筆はおろか、人生の悩みも解決させて行く五話からなる短編集。 主人公は、「メディコ・ペンナ」でバイトをすることになる女子大生だが、店主との出会い、客との出会いで人生が少しずつ動いて行くハートウォーミングな作品だ。 話の軸は客たちの悲喜こもごもであ

      • 詩159「葬られたる秘密」改訂版

        「葬られたる秘密」 抽斗に閉じこめた彼女の色濃い記憶が 秘密の息遣いをしている  秘すれば花とは言うけれど  箪笥の中で踊る時間は 盗まれた手紙のような危うさであり  はたまた ボヘミアの醜聞のような艶やかな赤い仮面を想わせた 彼女が案じられるままに眠らせたその花は  やがて苦悩を残して文車妖妃と化けては悶え 念じられるうちに人知れず 煙の中へと散って行った ※急に書き直したくなり、手を入れました。 元は、3年半ぐらい前に載せた詩117「葬られたる秘密」です。https

        • その17:万年筆の機械化

          日本が世界に誇る万年筆メーカーのひとつ、セーラー万年筆にはロボット機器事業部がある。 この部署は、万年筆やボールペン等のプラスチック形成部品を生産する工程を改善すべく立ち上げられ、そこから組立装置や検査装置を経て、筆記具を超えて医療用具、食品容器等の工程機の設計と製造までも行っている。 あくまで生産工程の機械化である。決して万年筆のロボット化を図る訳ではないのだが、今やアナログ製品でもある万年筆がロボット化されたり、メカニックな構造を果たす未来も面白いことだろう。 機械式筆記

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        • 読書三十六計
          55本
        • 万年筆の徒歩旅行
          16本

        記事

          安藤祐介『本のエンドロール』

          一冊の本が手元に届くまでにどれだけの人の労力が携わっているか。 この本は、印刷会社で働く人たちの物語。 書籍から電子書籍へと時代が変遷する中で、作家や編集者にも劣らぬ本への情熱を持ち、また会社員として、会社のため、家族のため、そして自分のために「働く」ことに思い悩みながら日々を葛藤する。 彼らの成長と様々な想いと共に形になろうとする本たちを通し、印刷の工程を知ることも出来る。 形を成すということは、形にした人たちが居て、その人たちの想いが乗っていることを忘れてはいけない。

          安藤祐介『本のエンドロール』

          かつての詩158「夏帽子」

          かつての詩158「夏帽子」

          【宣伝】五冊目の電子詩集『黒い鳥』

          ここに宣伝を載せることをすっかり失念しておりました。 去ること2月22日、5冊目の電子詩集『黒い鳥』をリリースしております。 本当は出すことなんて考えていなかったのですが、これまでに書いてきて詩の中には、奇をてらった作品もあり、その斬新な作品を埋もれさせては勿体ないと思い立ちました。 合わせ鏡のような「イン ザ マスク」、山村暮鳥の「風景」のように同じ言葉で構成させた「はじめから終わりまで」、モールス信号を用いた「ダークマター」等、折角書いた未踏の作品なら、これは世に痕跡を残

          【宣伝】五冊目の電子詩集『黒い鳥』

          詩157「雨の散歩道」

          「雨の散歩道」 雨は人を急き立てることがある 21世紀美術館から鈴木大拙館へのアスファルトの硬い道程も 街の賑わいとは裏腹に創造のイカロスは飛ばず 雨は人を急き立てることがある 傘を濡らして道をも濡らす 金澤詩人 20号掲載 Anywhere Zero Publication© 2023 Hiraya Akizuki© 2023

          詩157「雨の散歩道」

          詩156「夏の山景」

          「夏の山景」 碧(みどり)を碧(あお)とも呼べるのは 山並みの万緑が空の青さに溶けて行く そんな夏の景色の賜物だろうか 熊谷守一が描いた「夏」の思想に その答えがあったと思う 金澤詩人 20号掲載 Anywhere Zero Publication© 2023 Hiraya Akizuki© 2023

          詩156「夏の山景」

          詩155「ひとこと、みこと」

          「ひとこと、みこと」 言葉を離すべきじゃなかった 届かなければ伝わらない言葉だというのに アネモネの花ほどの価値があったというのか ぼくは負けたくない一心で 放り投げた言葉について話せずにいる 金澤詩人 20号掲載 Anywhere Zero Publication© 2023 Hiraya Akizuki© 2023

          詩155「ひとこと、みこと」

          その16:紛い者の万年筆

          万年筆がタイトルに付く歌がある。  2018年にデビューした青森県出身の3ピースバンド SWALLOWの3rdシングル「紛い者の万年筆」 (2021年) だ。 厳密に言えば、元のバンド名 「No title」では11曲のデジタルシングルが出ており、2020年に「SWALLOW」へと改名してからの3枚目のシングルに当たる。 この曲は、三沢市出身の彼らが青森の冷たい冬の空気をイメージした楽曲で、工藤帆乃佳 (Gt.Vo)が作詞・作曲・アートワ ーク、安部遥音(Gt)が編曲を担当。

          その16:紛い者の万年筆

          詩154「言葉の無い正解」

          「言葉の無い正解」 幻想を築くには言葉を組み立てよ ありもしない正解を世界にして我々を導き入れよ 現実から回避した者たちは逃げ出すことなどない 言葉の煉瓦をひとつひとつ積み重ねた堅牢な城でも たった一言で崩れ去ることさえあるだろう どんな世界も脆くそびえ建っているものなのだ 命は一つでも言葉は無数の星であり 危うい戦場を生き抜く不確かな言葉たちは 元素も曖昧な世界の蓋でしかない かつて言葉のない世界があった そこに質素な言葉でセイレーンのハミングが結界を築けば 幻想は現

          詩154「言葉の無い正解」

          詩153「旅人は待てよ」

          「旅人は待てよ」 帰らぬ旅人が帰ってきた 消え失せんと望むはうつつ 記された足跡は永遠となって 誰かが望めば 赤い詩集の果てから帰ってくる むしろ難しいことなどなくて 場所も時間も選ぶこともなくて 瑠璃色を纏った言葉が手紙となって 我々のもとに戻ってくる 理屈などはどうでも良いと思えた時には あのレインコートを羽織った旅人が見える 失われた時を知る豊穣の女神は歌い この宝石を南の風で濡らすことだろう 旅人は待てよ Masanao Kata©️ 2024 Anywhere

          詩153「旅人は待てよ」

          詩152「メテオの邂逅」

          「メテオの邂逅」 その契りは真夜中に起こる 創作の神と偽って飛来する酩酊のメテオ 言葉には三神が宿るというが 踊る文字はさながら呪文か魔法陣と化し たちまち言葉が熱を帯びて送り出す 有無を言わせぬ契約は創造の深みへと魂を突き落として それを灼熱の温度まで高めてしまうだろう 今まさに月に冴える深夜の創作は疾走した まだ見ぬ失われた創造性を探し出すかのような快感こそが 我々を陥れようと目論む牧神かサテュロスの罠である 静かな夜に切り拓かれた創造の幻野はどこまでも広くて美しいが

          詩152「メテオの邂逅」

          その15:万年筆の怪人

          男は誰しも少年だった。そして少年は、ヒーローに憧れを抱いて大きくなる。 1966年のウルトラマン、 1971年は仮面ライダー、 1975年には秘密戦隊ゴレンジャーと、 特撮ヒーロー番組のシリ ーズは2023年の現在まで脈々と続き、毎回手を変え品を変え、様々な怪人が地球(日本?)を脅威に晒し、ヒーローたちに都度打ち負かされている。この構図がもう半世紀以上続いていることになる。 怪人もユニークな着想から生まれたものが多く、それこそ未だヒーローを凌ぐ勢いで愛されているキャラクターさ

          その15:万年筆の怪人

          詩151「異彩」

          「異彩」 異才の奇祭は胡散臭い 委細は一切言い出さないまま 雲散霧消な韜晦術で まくのは煙かそれとも餌か 倒壊する論理には追い付けないが それでも偉才と褒め称えられ 叩いて消えることさえない ただ居るだけでも様になるので 冴えない無様な成りでも神々しい 嘘と誠が混合すればインサイドで競り合って 玉虫色の魂の妖しい彩りは雄鶏のアシメントリー 色とりどりの折々のまとまりは始まりで終わり つまりはあとの祭りという訳だ Masanao Kata©️ 2023 Anywhere Z

          詩151「異彩」