山田風太郎「巴里に雪のふるごとく」
忍法帖シリーズや『魔界転生』などで知られる山田風太郎には、明治ものという逸品なシリーズもあり、そのひとつ『明治波涛歌』下巻に収められている「巴里に雪のふるごとく」は、山田風太郎作品の中でも最高傑作の名高い短編小説だ。
明治時代、巴里へ司法視察に赴いた川路利良、成島柳北、井上毅の一行は、芸人として巴里に在住していた元芸者の日本人女性が殺される事件に出くわす。
そこにゴーギャンやヴェルレーヌ、果てにはエミール・ガボリオの(創作した)世界初の警官探偵で知られるルコック警部が登場し、初代警視総監として「日本警察の父」となる(実在した)川路利良と共に事件に挑む。
山田風太郎の明治ものの面白いのは、我々が歴史的に知る実在の人物たちが登場して物語を彩り、この川路利良においては『警視庁草紙』や『明治断頭台』では敵役のような位置だったりするという天才作家の奇抜な采配が光る。
『明治波涛歌』の上下巻には明治期の偉人が織り成す短編小説が魅力的に収められているが、特に下巻の「巴里に雪のふるごとく」は、映画化してほしいくらい華の都パリで侍たちが活躍する姿がたまらない。
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