個性が光るアナザー東方!君は「連縁Project」を知っているか
話をしよう。あれは今から20年、いや、10年前だったか。
まあいい。彼らにとっては大昔の出来事だが、君たちにとっては…
\カッコつけてんじゃねえよ!/
彼らには私の知る限りで3通りの…
\関係ない語りはいいから説明始めろ!/
確か最初に知ったときは、「ラプサス」…
\エルシャダイとか何年前だと思ってんだよ!/
そう、彼らはただの東方好きの、福井の…
\前置き長いんだよ!さっさとやれ!/
わーかったよ!本題入るから!
(関係あるけど…別にいいか)
「連縁」とは 〜 それは東方にして東方にあらず
よく来てくれた。
まず最初の質問だ。君は「東方Project」の事は知っているかな?
知っているなら構わない。
知らなくても…今回は別に読み続けてもらって構わない(東方を知っている前提で進めるが)。
前に海鮮堂(仮)の東方二次創作ゲームの話をした時と違って、この作品は東方Projectとは一切関係ないからだ。
\タイトルで「東方」って言ってんじゃねーか!/
まあ少し聞いてほしい。
「連縁Project」、それは現実の裏側にある世界「无現里(むげんり)」を舞台に、闡裡(せんり)神社の神主に選ばれた主人公達が…
\名前違うだけでやっぱり東方のパチモンじゃねーか!/
\つまんねーの!/
落ち着いて、落ち着いて!
確かに、東方と同じ弾幕シューティングだし、東方と同じで現実世界から隔離されたある種の異世界が舞台だし、東方と同じでスペルカードという形で弾幕に名前をつけて決闘するし、東方と同じキャラクターのプロフィールの体裁をしている(細かい用語に違いはあるのだが…)。
事実、この作品は「東方風のオリジナル作品」という所から始まっている。
しかしそこまでフォーマットが同じでも、そこにいるキャラクターや物語に違いは生まれる。
ガンダムシリーズをご存じであれば、「宇宙世紀ガンダム」(初代、Ζなど)に対する「アナザーガンダム」(W、00、鉄血のオルフェンズなど)といえば分かりやすいだろう。
先ほど「東方Projectとは一切関係ない」としたのも、これが理由だ。フォーマットが同じだけで、基本的に東方との繋がりはない、一次創作だ。
東方を知っていても君の心の中の幻想郷オープンワールドRPGにMODがインストールされて新しい何かが増える訳ではないし、東方を知らないとついていけない訳でもない。
もしかしたら東方に興味がなくても連縁には興味を惹かれるという可能性もあり得る。
ゲーム性 〜 弾幕に映る戦技
先ほど弾幕シューティングである事は話したが、このゲーム性の部分にも東方との違いが現れている。
東方の通常の6面制の作品では、全体的な流れを強く意識し、少しずつ弾幕の濃さが上がっていく形をとっているが、連縁ではそんな事お構いなしにボス戦で弾幕の濃さが跳ね上がる。
こうして聞くと印象が悪いが、ちゃんと理由がある。
連縁は東方以上にキャラクターの個性を弾幕に反映しようとしているからである。
東方がわかるなら、「キャラクターの大多数に鬼人正邪ばりのギミックがあり、6面制の作品でもお構いなしに文花帖・弾幕アマノジャク・秘封ナイトメアダイアリーの弾幕を使ってくる」と言えばわかりやすいだろうか。
その一部を少しだけお見せしよう。
●暗牌「ブラインドショット」
シリーズ第1作「連縁无現里」より、プレイヤーが一番最初に出くわすスペル牌である。
使用者である「烏蛇(くろへび)」の暗殺用生体兵器としての性質を反映し、暗い背景に黒い弾を撃ってくる。
東方ならご法度レベルの邪道技を1面から堂々と使ってくる。連縁の弾幕の何たるかが伝わってくるだろう。
●毒矢「瘴気の矢」
シリーズ第4作「連縁天影戦記」より、ゲーム中盤で出現するスペルである。
なんとこの弾幕、矢の軌跡に毒霧が残り、そこに居続けるとミスになる。
このキャラクター限定で、独自の弾そのものではない要素が絡んでくるというのもやはり「個性」の表現のためだろう。
●髄砲「ボーンバスター」
シリーズ第3作「連縁霊烈傳」より、Extra最終盤のスペルである。
両端に伸びた骨で自身を地面に固定し、長い溜めの後極太のレーザーを発射する!
ベクターキャノンとか竜撃砲とかゲロビームとか言えばわかる人もいるだろう。
無論東方にも霧雨魔理沙のマスタースパーク等があるが、連縁はさらに表現力に磨きがかかっている。
これで燃えるなら男の子だ。
これでもまだ序の口である。執筆時点で全4作、総勢40人近いキャラクターが登場しているが、それぞれに個性があり、もはやアクションゲーム同然と思ってしまうようなものも少なくない。
弾幕を通して映し出されるバトルスタイルは、連縁の魅力の一つといえるだろう。
表現力に溢れる音楽
東方に影響を受けたシリーズなら、当然音楽にもこだわりがある。
そしてその音楽もまた、「個性」を重視している。
早速その一部を紹介しよう。
●永劫舞踏機関 〜 Shall We Dance!!
「連縁无現里」より、主人公達を无現里へと導いた(婉曲表現)謎の人物「闡裡鶴喰(せんり つるばみ)」のテーマである。
未だこのキャラクターは謎が多いが、おちゃらけた人物である事はひしひしと伝わってくるだろう。
これでタイトル通り踊りだしたくならなければ音楽味音痴と言っていい。
●モノアイ 〜 ironic FATE
「連縁蛇叢剱」より、「徒雲蛇穴丸(あだぐも の さらぎまる)」のテーマ。
以前ファンの間で行われた音楽人気投票で得票率脅威の40%、1位を獲得した人気曲である。
哀愁とかっこよさが同居するメロディを聞けば、その人気も納得できるだろう。
●空を広くする喪失道
キャラクターテーマだけではなく、ステージ曲も侮ってはいけない。「連縁霊烈傳」より、Extraステージの道中で流れる。
何者かにえぐられた跡が一直線に残る長い道。作中での舞台は冬だが、私はつい走り出したくなるような爽やかな夏空を感じた。
●大天 〜 Spirit of nagara
「連縁天影戦記」より、「大天朱壬鳥(おおあま の あけ の みとり)」のテーマ。
こちらは連縁の知名度の低さにも関わらず、第11回・第12回の「みんなで決めるゲーム音楽ベスト100」でトップ1000入り、同主催の「みんなで決める2016年新曲ランキング」トップ100入りを果たした曲である。
つまりゲーム音楽愛好家達からは「決戦!サルーイン」や「Escape from the City」、「月まで届け、不死の煙」などと肩を並べる程の曲と見られていると言える。
曲そのものは「朱に染まる夜明け」の名を名乗る者のテーマにふさわしく、夜明け、新たな始まりを感じさせる壮大なものとなっている。溢れ出る感情は評価に裏打ちされている。
●MO-NA-D-2 〜 記憶偽筆
「連縁天影戦記」より。
今は何も感じないかもしれない。だが、次に君がゲーム内でこの曲に出会ったとき、私がここでこの曲を紹介した理由がわかる…かもしれない。
これだけ聴けば東方とのスタイルとの違いもなんとなくわかるだろう。
ミキシングが未熟な点なども目立つかもしれないが、弾幕同様に表現力が輝いている事は否定できないはずだ。
ストーリー 〜 連なる縁の物語、そして曖昧な性別
次は物語の話題だ。
東方をご存知なら「え?巫女が出て殺すだけじゃないの?」と思うだろう。
連縁はそれだけではない。
物語が続いていく過程の中で、端々に无現里や主人公たちの過去、そしてある人物の登場を期に見え隠れし始める真実…。
ギャグ漫画的なルーツを持ち、一話完結性、「いつも通り」を継続する東方に対し、連縁は明確な連続性がある。
特に第1作「連縁无現里」は作品全体がプロローグとしての体を成しており、主人公達がどのようにして无現里にたどり着いたのかが描かれる。
複数の作品を通して大きな物語が描かれていく様は、2019年1月末の最新作の発売が記憶に新しい「キングダムハーツ」シリーズをも思わせる。
ただし、キングダムハーツと違って、何作も長い長いRPGをやるハメになる訳ではない。
その物語を彩るキャラクターだが、現状ゲーム内に登場するものに関しては一貫したルールがある。
それは「性別が不明」である事である。
「宝石の国」だの「スティーブン・ユニバース」だのと違って宝石族だから性別は無いとか、作中の人物一人だけが性別不明で、それかがアイデンティティになっているとかではない。
基本的に、画面に映ったなら、無条件で性別不明なのである。むしろこのシリーズ内では性別がある方が珍しい。
以下は作者、JynX(ジンクス)氏が過去に海外のファン(こんな作品にも海外ファンが居るのである ネットのちからってすげー!)からインタビューを受けた際の本人の回答である。
「クッパ姫」だの「バーチャル美少女受肉」だのと、性別の壁を超える事に関する話題が絶えない昨今だが、連縁は2013年の時点で新たなアプローチを試していたのである。
リンク集 〜 Train stop
これだけ話せばもう君の次の目的地は无現里になっている事だろう。
以下はその道筋…ダウンロードリンク(言い忘れていたがフリーゲームだ)である。
●「トリック・ノスタルジー」公式サイト:http://mugentrick.tubakurame.com
とりあえず必要な物はここに揃っているはずだ。
東方同様、ファンアートを描きたくなった時などに目を通しておくべき二次創作ガイドラインも用意されている。
ちなみに「トリック・ノスタルジー」はJynX氏のサークルとしての名義である。
この名前は過去に東方ProjectのPC-98時代の作品(通称「旧作」)を現行の作品風にしたモックアップ動画をエイプリルフールとクリスマスに作っていた事から来ていると思われる。
●ふりーむ!:
https://www.freem.ne.jp/brand/7057
前回紹介した海鮮堂(仮)東方同様、「魔女の家」や「影牢」、「DeathForest」など、伝説的な作品が軒を連ねるフリーゲームホスティングサービス「ふりーむ!」でダウンロードできる。
現在リリースされているゲーム、全4作がここで揃う。
●公式YouTubeチャンネル:
https://www.youtube.com/channel/UCSYniDuuSiM-HutLDTBbIlg
なんと公式のYouTubeチャンネルがある!
マスコットのレイくん&ゼロちゃん(本編とも関係あるらしい)が作品を紹介する動画や、ゲームのサントラが置かれていたりする。
●Twitter:
https://mobile.twitter.com/mugen_Jinx (JynX氏個人のアカウント)
https://mobile.twitter.com/TN_Rei (広報用アカウント)
全体的にTwitterで動きを見せる事も多い。
JynX氏、広報のレイくん&ゼロちゃん、どちらからも貴重な情報を拾えたりする事があるので要チェックだ。
●謎のTwitterアカウント:
https://mobile.twitter.com/3DM5r5AOnKN9RPN
https://mobile.twitter.com/EnHaL03472833
シリーズ5周年(11月11日が記念日であり、公式側からも動きがある事が多い)の前日に不穏な動きを見せたアカウント。
片方は作中に登場するキャラクターと同じ「鵐(しとど)」の姓を持つ様だが…?
●Bandcamp:
https://tricknostalgie.bandcamp.com
こちらはJynX氏の音楽関係の作品が置かれている。現在は過去の東方作品しかないが、今後連縁関係でも利用されるだろう。目を光らせておいて損はない。
終わりに 〜 Your DECISION
単に「アナザー東方」的な作品というだけでなく、シリーズが進むにつれてシリーズ全体の個性が見え隠れし始めた連縁。
それに伴って、連縁そのもののファンも増加しつつある(無論私もその一人である)ように見える。
それでも、まだまだファン層は小さい。
初期の「絵柄が(東方以上に)変な東方のパクり」のような評価だけでは測れない部分がある事が証明された今、連縁は連縁として、正当な評価と愛を求められているように見える。
そして今ここで新しく知り、バイアスの無いまま飛び込んでいくあなたが、その評価を下すにふさわしいのだろう。
実際の所、連縁は物語の中でも、外でも、まだ始まったばかりだ。
連縁の未来は明るいと信じたい。
そしてその未来にあなたの姿がありますように。
(2018/2/15 曲紹介に「大天 〜 Spirit of nagara」を追加、見出しを追加)