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リーダーは人を通じて結果を出す

1.結果より和を乱すことを恐れる日本人

シンクロナイズドスイミングの指導者で、リオデジャネイロオリンピックのヘッドコーチを務めた井村雅代さんのことは、多くの方がご存じでしょう。1978年に日本代表コーチに就任し、シンクロが正式競技となった1984年のロサンゼルス五輪から6大会連続で日本にメダルをもたらし、「シンクロの母」と称された方です。 


その後、中国代表などの指導に当たられていましたが、低迷する日本シンクロ界から請われて日本代表コーチに復帰。2016年のリオ五輪では、デュエットで2大会ぶり、チームでは3大会ぶりのメダル獲得に導きました。 

ナショナルメンバーを預かったときに、井村さんは、チームメンバーに好きな言葉を聞いたそうです。そこで返ってきた答えは、「絆」と「チームワーク」。一方で、嫌いなことは、「目立つこと」。これを聞いた井村さんは、「このチームは、このままでは絶対に世界で勝てない」と思ったそうです。 

「挑戦的な高い目標を掲げ、絶対に結果を出す」という気持ちをメンバー一人ひとりが持ち、そのために、自分に課せられた役割を自らが最後まで果たすという意識、そして、チームメンバーと切磋琢磨することが必要なのに、良くも悪くも目立たないように振る舞い、集団から浮くことを嫌う。結果を出すことより、チームの和を乱すことを避けようとする。これでは世界と戦って勝てるわけがありません。

このエピソードには、日本企業の現状が象徴的に表れていると思います。日本企業のリーダーも、結果を出すことを目指しているはずですが、それよりも、衝突を避け、調整することを重視している人が多いのが現状ではないかと思います。 

リーダーとは、ひと言で言うと、「人を通じて結果を出す人」。チームメンバーの能力を最大限に引き出し、結果を出すことがグローバル共通のリーダーの役割です。グローバル企業における多様性の中でのチームワークと、日本の組織の中で重視してきた調和との大きな違いは、リーダーの視線がどこに向いているかの違いではないでしょうか。 

世界全体を見る広い視野でマーケットやビジネスの動きをとらえ、「ビジネスに勝つ」ことを優先する外向き志向で考えるのか、日本の中だけを見て社内事情を優先する内向き志向なのか。日本企業が世界で戦うためには、リーダーは、これまでの成功パターンを踏襲した従来の考え力を捨て、新たな勝ちパターンへと転換していく勇気と自己変革が問われています。

2.「頑張っているから」で終わらせてよいのか 

シンクロナイズドスイミングに限らず、スポーツ中継を見ていると、結果を出せなかった選手に対して、「よく頑張りました」という労いのコメントを耳にすることがあります。頑張ることへの労いは大切ですが、結果に率直に言及することも必要ではないでしょうか。オリンピック選手であれば、国を代表して出場している選手です。頑張りを認めることだけで終わるのではなく、結果についても言うべきことはあると思います。 

日本企業は、「チームで頑張ることを重視し、個が突出することを好まない」。そのため、結果が出なかったことよりも、みんなで頑張ったことを評価しがちです。アメリカ的な個人主義・成果主義が100%正しいとは思いません。しかし、日本は、ビジネスにおいてコミットした成果が出なくても「みんなでよく頑張った、次に頑張りましょう」と、結果責任を曖昧にしてしまうことが往々にしてあります。このままで、グローバルの競争に勝てるのかと危機感を覚えます。 

リーダーは、チームの力を最大限に引き出し、達成すると決めた結果にこだわる責任があります。「頑張ったから」ですませていては、いつまでたっても一流の人材は育ちません。失敗からの学習がなければ、次に向けての挑戦的な目標を達成することは厳しくなります。

3.リーダーに問われる結果責任 

井村さんは、ナショナルチームのパフォーマンスを最大限に引き出して、必ずメダルを獲るという結果責任を自分自身に課していました。リオ五輪の成果は、井村さんの勝ちへの本気度がメンバーに伝わり、井村さんのリーダーシップによってチームのパフォーマンスを最大化したことによる成果とも言えます。このように、リーダーは、ぶれない軸と強い目的意識を持つことが絶対不可欠です。 

日本の経営者や人事担当者は、「われわれの会社は社員同士のチームワークがよい」とよく言います。チームワークは組織力を高めるうえで重要ですが、衝突を避けて、全体調和を優先することではありません。 

日本のリーダーは、変化の激しい時代に多様なチームメンバーを率いて結果に向かってパフォーマンスを出すことを訓練されていません。グローバルポジションを獲り、「世界に勝つ」ために、真のチームワークとは何かについて改めて学ぶ必要があります。

4.おすすめ人材アセスメントソリューション

5.グローバルポジションを獲りにいく

グローバル企業において、日本人は優秀な部下にはなれるが、グローバルポジションはとれないという事態が起きつつある。外国人、とりわけアジアの優秀なリーダーたちが、日系企業の重要ポジションを占め始めている。このままでは、日本人はグローバルはおろか、国内でも重要なポジションをとれないことが危惧される。
日本企業では、なぜリーダーシップ開発が停滞しているのか。グローバルポジションをとれるリーダー人材は、いかにして輩出されるのか――。
日本人のリーダーがグローバルで戦うために世界基準で獲得すべきリーダーシップスキル、及びリーダーシップ開発成功の要諦、人事が起こすべき変革、経営のコミットについて、具体的事例とリーダーシップに関するグローバル・データを織り交ぜながら解き明かす。

6.会社概要:株式会社マネジメントサービスセンター

創業:1966(昭和41)年9月
資本金:1億円
事業内容:人材開発コンサルティング・人材アセスメント

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