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第6章<持続する>成長のためのエネルギーを精力的に作り出す

この章では、「持続する」という必須要件において、いかに卓越した組織になるかを示す。次のように実践することにより、エネルギーが生まれる

・進捗状況の測定への注力:最も重要な成長の測定を継続的に観察するために、いくつかの測定基準を追跡する。

・より現実的な考え方:経営幹部は最終到達点を期待していない。彼らは、人材開発の加速化に終わりがないことを知っており、それへの焦点の当て方を継続して新しくしている。

・成長に向けた、より徹底したオーナーシップ:CEOや最高経営幹部は、学習活動を許可するだけではない。リーダーを準備のできていない状態からできている状態に変えることに対して、アカウンタビリティを持つ。

・より生産的な、失敗とのつき合い方:経営陣は、リーダーが失敗を乗り越えて、より良く仕事を行うための貴重な学びの機会を支援する。

・成長という共通の体験:経営陣も成長し、人材開発の加速化を組織全体が共有するものにする。成長はビジネス推進の一部である。

1.活気づける~成長を維持する熱意とコミットメントを作り出す

「恐れているのは、われわれ人事部門の人間には準備のできているリーダーを増やすという約束が果たせないのだと、我が社のCEOや世界中のCEOが密かに結論づけつつあることだ」――とある企業の人事担当役員

これは、リーダーシップの成長を加速化する大規模な取り組みが終了した後、レビューの際に聞かれた言葉である。長年にわたる努力と数々の優れたプログラムがあったにもかかわらず、リーダーシップのギャップは広がっていた。

このような運命に苦しんでいるのはこの組織だけではない。本書の最初で述べたように、リーダーシップの人材開発の加速化プログラムにおける一般的な傾向は、上向きになっていない。DDIの世界各国からのデータは、組織が主要な職務や昇進の準備ができているリーダーを候補の中から探そうとする際に、適切な人材が1人もいないケースが全体の半分もあることを示している。

準備の整っているリーダーを増やすためには、現状よりも速い、そして優れた成長を実現させなければならない。この本を通して述べてきたように、それを実現させている組織がある。そのような組織は、行動の変化、スキルの向上、人材の供給体制の強化、リーダーシップの発揮の強化といった形で大きな進歩を遂げている。

これらの組織は、単に短い時間に多くの学習活動を詰めこんで成長を加速化しているわけではない。核となるところで、他とは違うことをしている。人材開発の加速化を、ビジネスのサイクルごとに進化し成長する継続的なプロセスという、規律ある仕組みにしているのだ。

成長の加速化を持続する規律ある仕組みにするには、エネルギーが必要だ。エネルギーを生むのは、ストレッチして成長させるような難題を通してリーダーの能力開発を促進し支援するような、リスクであり、実験であり、大胆な試行である。

集中的なトレーニングコースの緊張感や、詳細なアセスメントで浮かび上がる真実、重要な仕事へのアサインにおけるスリル感、失敗するかもしれないという恐怖にリーダーが直面したとき、そのエネルギーは放出される。わくわくすると同時に少しばかり怖くもあるが、そのエネルギーをうまく利用すれば忍耐力を高めるのに役立てられる。障害が消える。ビジネスのレッスンが心に響く。知恵が広がる。そしてリーダーシップが大きく成長する。

ひとつ確かなことがある。ただ単にプロセスとツールを増やすだけではエネルギーは生まれない。われわれは本書で、人材開発の加速化システムを、エネルギーを消耗するものからエネルギーを生み出すものに変える方法を紹介してきた。

その中で、人材開発の加速化システムを単に学習への参加を促すためのものではなく、「成長したい」という情熱を育むためのものとして説明している。ここまで取り上げてきた5つの必須要件――「コミットする」、「目標を定める」、「特定する」、「診断する」、「成長する」――は、システムの中のエネルギーを増加させる、実績ある手段だ。しかしどれかひとつだけでは、機会、危機、変革という、組織に起こる必然のサイクルの流れを持続させるには不十分だろう。

そしてもうひとつ、人材開発の加速化を取り組む際に考えるべきことがある。成長への前向きなエネルギーを、どのように人材開発の加速化の取り組みの維持につなげるかである。

2.持続させる

プログラムを始めることは、変革を通じてその効果を持続させることより、はるかに簡単だ。持続性は戦術と考え方を組み合わせることで生まれる。人材開発の加速化の必須要件を通じて、われわれはプログラムを続行させるために役立つ多くの戦術について触れてきた。しかし、その戦術だけに焦点を当てて

いては、今まで多くの組織が経験してきたように目標を達成できずに終わってしまうだろう。組織を「人材開発の加速化の必須要件」に則して評価し、前進に導く計画を立てることで、すべての関係者がいなくなっても残り、組織のDNAの一部として受け継がれるような人材開発の加速化システムを作ることができる。そして、その計画に組み込むべき重要なことがいくつかある。

3.成長の点数をつけないなら試合に出るな

点数をつけることは緊張を生む。どんな試合や競争も、スコアボードの存在によってエネルギーが満ちる。しかし、リーダーシップの人材開発の加速化に関しては、点数をつけると決めるだけでは十分でない。重要なのは、何を測定するかだ。

リーダーシップの能力開発への投資が準備度向上につながらない大きな理由のひとつは、間違った成果が測定されることだ。例えば、ビジネス上の大きな転換に乗り出したある金融サービス会社は、新しいベンチャー事業に外部からの人材を割り当てるのはリスクが大きすぎると考えた。そこで、経営陣は緊急にリーダーの人材開発の加速化の取り組みを実施した。だが、成功を確認するための測定基準を2つしか選ばなかった。ハイポテンシャル・リーダーの定着率と、能力開発計画の有無である。この取り組みが有意義な成長を生まず、ベンチャー事業が失敗に終わったのは意外なことではない。

大手海運会社のCEOは、最高経営幹部の相次ぐ定年退職に頭を悩ませていた。後任者の候補もいなかった。候補者を用意するために始めた人材開発の加速化プログラムの成功の評価基準は、全参加者が「プロセスを楽しむ」ことだった。

リーダーの準備度を向上させるために作られる人材開発の加速化システムで、唯一重要な評価基準は、成長である。そして、前にも述べたように学習自体は成長ではない。学習が仕事に適用されたときに初めて、成長が実現するのだ。つまり人材開発の加速化システムの測定も、そこを対象にすべきである。学習者は仕事への適用に成功したときに得点する。そして学習者が得点したときに、上司やメンターも得点される。経営陣は、成長がグループやビジネスユニットに波及したときに得点する。果たして能力開発はビジネスに影響を与えたのか?どうしてそれがわかるのか?リーダーシップの準備度の向上を示す証拠はあるのか?取り組みがうまくいっていることを示すデータを提示できるのか?そして、そのデータの中でこれまで改善してきたことを示せるか?

測定作業は、退屈で時間がかかる。成長に関する最も重要な測定基準のみを選んで、徹底的に追跡し続けるのはそのためだ。多くの事項を不正確に測定するよりも、わずかな事項を正確に測定する方がはるかに効率が良い。選んだ測定基準で確実にリーダーと組織の成長の点数がつけられれば、測定は、費やすエネルギーよりも多くのエネルギーを創り出すだろう。

4.おすすめ人材アセスメントソリューション

5.DDIとは

DDIは、世界最大手の革新的なリーダーシップ・コンサルティング企業です。1970年の設立以来、この分野の先駆者として、リーダーのアセスメントや能力開発を専門としてきました。顧客の多くは、『フォーチュン500』に名を連ねる世界有数の多国籍企業や、『働きがいのある会社ベスト100』に選ばれている世界の優良企業です。
DDIでは、組織全体におよぶリーダーの採用、昇進昇格、能力開発手法に変革をもたらす支援をすることで、すべての階層において事業戦略を理解し、実行し、困難な課題に対処できるリーダーの輩出に貢献しています。
DDIのサービスは、現地事務所や提携先を通じて、多言語で93カ国に提供されています。また、同社の研究開発投資は業界平均の2倍であり、長年にわたる実績と科学的根拠に基づいた最新の手法を駆使して、組織の課題を解決しています。

◆DDI社の4つの専門分野

DDI社は、4つの専門分野を中心に、長年の実績と科学的根拠に裏付けられたソリューションと、より深い洞察を提供し、優れた成果を生み出しています。

6.会社概要:株式会社マネジメントサービスセンター

創業:1966(昭和41)年9月
資本金:1億円
事業内容:人材開発コンサルティング・人材アセスメント

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