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効果的なリーダーシップの条件~アカウンタビリティとは?

1.「アカウンタビリティ」は重要なテーマ

「アカウンタビリティ」という言葉は、日本でも市民権を得つつあります。辞書を引くと「説明責任」と出ています。グローバル基準のリーダー養成プログラムでは、アカウンタビリティは結果を出すための重要なテーマとして必ず取り上げられます。適切な日本語訳がないので「アカウンタビリティ」という表現をそのまま使っていますが、その意味するところを改めてここで定義しておきます。 


アカウンタビリティとは、部下一人ひとりに対して、責任と権限を明確にし、出すべき成果を明確にして“結果”に対する責任を個人に課す、「結果責任」です。 

アメリカのコンサルタントと一緒に仕事をしたときに、「アカウンタビリティという言葉について、共通認識を持つのが難しい国は日本だけだ」と言われたことが印象に残っています。アメリカ人と仕事をすると、「この結果に対しては、誰がアカウンタビリティを負っているのか?」と問われます。「達成できなかった場合、どういう責任の取り方をするのか」というところまで言及するのがアカウンタビリティの概念です。メンバー一人ひとりに結果に対する責任を負わせることが、リーダーには求められます。 

日系大手企業の部長層を対象としたリーダーシップ研修で、「あなたの会社の社員は、アカウンタビリティを負っていますか?」という問いに対し、参加者の意見は二つに分かれました。負っていると回答した人たちは、個々人の目標設定は行っているし、進捗管理も行っていると主張しました。一方で、負っていないと回答した人たちは、最終的に個人に対して、できていないことに対する厳しい評価もしていない。できても、できなくても大きな差はつけていない。日ごろから、部下に結果責任を意識させるような対話やフィードバックも行っていない、という意見が出ました。

多くの部長にとって、この議論は、部下にアカウンタビリティを課す、ということについて深く考える有意義な機会になりました。「あなたが結果を出せなかった場合、チームにおよぼす影響、そして、結果が出せなかったことによるあなた個人が負わなくてはならない責任は何か」というところまで部下と踏み込んだ話し合いをする日本人のリーダーは、稀有です。部下との人間関係を配慮して、結果責任に言及することを躊躇してしまうようです。 

日本には、「阿吽の呼吸」という言葉があるように、ハイコンテクストな文化が根づいています。争いを避け、空気を読み、「言わなくても分かるだろう」という意識から、言葉で直接相手に考えを伝えないことが、さまざまな場面で見られます。言葉ではっきりと部下にアカウンタビリティを伝えることが、リーダーの責任です。

2.リーダーのアカウンタビリティ

オリンピックの戦いの前に、井村さんは、「チームワークを考える前に、自分ができることを100%やりなさい」と言って選手たちを送り出したそうです。シンクロナイズはチーム一丸となって最高のパフォーマンスを出す、何よりも「絆」と「チームワーク」が大事と信じていた選手たちにとっては、井村コーチの言葉に驚いたそうです。

アカウンタビリティというのは、個人個人に課すものであって、複数人で負うものではありません。シンクロナイズドスイミングもチームワークの競技ですが、一人ひとりにアカウンタビリティが課せられています。一人ひとりが自分の責任を全うして結果を出したときに、チームとしても最高のパフォーマンスが出せるのです。 

一方で日本人は、「連帯責任」が好きです。複数で仕事をする場合も、個々人の役割を明確にしないことも多く、各人のミッションを決めたとしても、できない人がいたら、誰かが代わりを務めます。Aさんができないと、「じゃあ、Bさんお願い」としてしまい、最終的に誰がアカウンタビリティを負っているのかがはっきりしません。「誰かがやってくれるだろう」と、自分の責任を第三者に依存する、いわゆる他律他責を容認することにもなりかねません。 

日本から海外に赴任したリーダーの中には、ローカルスタッフとうまく仕事ができず、成果を出せないまま日本に戻ってくる事例が少なくありません。日本ではうまくやれていたのに海外で失敗する原因の一つが、ローカルスタッフ一人ひとりに明確にアカウンタビリティを課すことができないことにあります。リーダーには、「これはあなたの責任だから、ここまで結果を出さなければならない。もしその結果を出せなかった場合には、あなたが取るべき責任は何か」について部下と話をし、結果を出すことに対して部下に継続的な緊張感を持たせ続ける責任があります。部下にアカウンタビリティを課すことが、リーダーのアカウンタビリティなのです。しかし、その認識が甘いことが、日本人リーダーの陥りがちな落とし穴なのです。

3.個のパフォーマンスを引き出す

アカウンタビリティを課すことについて、「メンバーとの人間関係が壊れてしまうのではないか」という不安や懸念を感じるリーダーは少なくありませんが、それは違います。アカウンタビリティを曖昧にしがちな組織では、できない人の仕事をハイパフォーマーが代わりに行っていることが多々あります。

結果として、ハイパフォーマーが不満を感じることも少なくありません。場合によっては、ハイパフォーマーのモチベーションは下がり、リーダーに対する不信感も高まります。仕事や組織へのエンゲージメントを低下させ、退職してしまう可能性も秘めています。 

日本人だけの組織であれば、ハイコンテクストな文化でも成果を出すことはできていたかもしれませんが、グローバル化が加速し、組織の中に一人でも、インド人、中国人、アメリカ人などが入るとどうなるでしょうか。彼らは、アカウンタビリティが明確であるからこそパフォーマンスを発揮します。

個のアカウンタビリティが曖昧なままの「チーム責任」という考え方では、個のパフォーマンスを引き出すことができず、チーム全体の生産性に影響をおよぼしかねません。優秀な外国人メンバーのリテンション問題にもつながります。 

日本のリーダーは、メンバーとの人間関係の維持、嫌われないようにすることに気を配りがちです。メンバーとの人間関係は、上司のリーダーシップの発揮の仕方、コミュニケーションのとり方、日ごろからのメンバーとの対話を通じて築かれていくものです。アカウンタビリティが原因でメンバーとの人間関係が壊れるのではありません。

4.おすすめ人材アセスメントソリューション

5.グローバルポジションを獲りにいく

グローバル企業において、日本人は優秀な部下にはなれるが、グローバルポジションはとれないという事態が起きつつある。外国人、とりわけアジアの優秀なリーダーたちが、日系企業の重要ポジションを占め始めている。このままでは、日本人はグローバルはおろか、国内でも重要なポジションをとれないことが危惧される。
日本企業では、なぜリーダーシップ開発が停滞しているのか。グローバルポジションをとれるリーダー人材は、いかにして輩出されるのか――。
日本人のリーダーがグローバルで戦うために世界基準で獲得すべきリーダーシップスキル、及びリーダーシップ開発成功の要諦、人事が起こすべき変革、経営のコミットについて、具体的事例とリーダーシップに関するグローバル・データを織り交ぜながら解き明かす。

6.会社概要:株式会社マネジメントサービスセンター

創業:1966(昭和41)年9月
資本金:1億円
事業内容:人材開発コンサルティング・人材アセスメント


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