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経営人材選抜の質を高める3つの方法

1.経営幹部の採用、選定、育成に関する決定にはデータが非常に重要

「困ったことになりました」。こんな言葉で始まる電話は誰だって聞きたくないものです。しかし、これはあるグローバル小売企業のCHROから受けた電話の第一声でした。彼は数ヶ月前に、私たちがエグゼクティブ・アセスメントを行った候補者について、悩んでいました。


彼は困惑した様子で続けました。「数ヶ月前に、CEOとあなたと私の3人で、経営幹部候補者について話し合ったことを覚えていますか?あなたはエグゼクティブ・アセスメントのデータに基づき、彼はその役割に適していないと言いましたね。しかし、社内の政治的な圧力が働いて、結局彼を採用したんです」

「現在、彼は大きな会議に出席しても、視野が狭く、全体像が見えていません。また、尋ねるべき質問を予測できず、チームの士気は下がっています。まだ数ヶ月しか経っていないにもかかわらず、彼のチームの何人かが辞めてしまいました。正直、彼を採用しなければよかったとさえ思います。このような状況でも彼を指導することはできるのでしょうか?」

この企業は、経営幹部として不適切な人材を採用したことでパニックに陥った初めての例ではありません。経営幹部職の採用は非常に高いリスクを伴うもので、失敗の代償は極めて大きくなります。雇用する際の直接的なコストに加え、機会損失も発生します。 このケースでは、その経営幹部は数ヶ月後に解雇されましたが、会社はその役職を充足するのにほぼ1年を要しました。

その結果、1年間にわたり生産的な活動が行われず、会社にとって膨大な時間と費用の損失となりました。だからこそ、経営幹部の採用、後継者の選定、育成に関する決定にはデータが非常に重要なのです。

2.エグゼクティブ・アセスメントを活用して、より良い意思決定をする方法

ここからは、効果的な意思決定を行い、重要な人材戦略の判断に伴うリスクを軽減するのに役立つ、エグゼクティブ・アセスメントの3つの手法について説明します。また、それぞれの手法をどのような場面で、なぜ使用するか、(そしてなぜ使用しないか)についても解説します。 ここでは主に経営幹部に求められるリーダーシップ・スキルを測定するアセスメントに焦点を当てますが、私たちはほとんどの場合、エグゼクティブ・アセスメントとパーソナリティ診断のデータを組み合わせて、経営幹部の特性や傾向について、より深い洞察を得るようにしています。

①エグゼクティブ・インタビュー・アセスメント

前述の小売企業の場合、CHROは適切な経営幹部を探すために、エグゼクティブ人材紹介会社を利用しましたが、一般的な面接だけでは不十分だと考えました。そこで、彼らは私たちと協力してエグゼクティブ・インタビュー・アセスメントを実施することにしました。

エグゼクティブ・インタビュー・アセスメントは、専門的なスキルをもつ客観的な外部評価者によって行われます。通常、1回数時間のセッションで実施されます。候補者には、採用企業でその職務に就いた場合に直面するであろう現実的な課題に基づくビジネス状況のシナリオが与えられます。

評価者は、候補者のビジネス状況への対応を基に測定を行います。問題解決に向けた提案の仕方、計画性や対人関係スキル、プレッシャーのかかる状況での対応などが評価されます。 この方法では、ビジネスへの影響に関する質問も盛り込み、過去に同様のビジネス課題をどのように対処してきたかを確認します。これらの行動例と信頼性のあるパーソナリティ診断のデータを統合し、候補者に関する洞察を採用企業に提供します。

✅エグゼクティブ・インタビュー・アセスメントの使用場面

エグゼクティブ・インタビュー・アセスメントは、短時間で実施する必要があり、プロセスに客観性をもたせたいときによく使用されます。インタビュー・アセスメントは社内の人材にも使えますが、社外の候補者を採用する際には特に重要です。

この種のエグゼクティブ・アセスメントは、しばしば “失敗の影響分析”とも呼ばれます。主な目的は、その役割において失敗する可能性の高いポイントに基づき、候補者の採用はリスクが高いかどうかを把握することです。

私はこのプロセスを保険契約に例えています。このアセスメントから得られたデータは、採用チームに、通常の面接や推薦状の確認よりも候補者を徹底的に調査したという自信を与えます。 インタビュー・アセスメントの利点は、特に予算や時間の制約でより綿密なアセスメントができない場合でも、有力な候補者について追加の洞察を得られることです。

✅エグゼクティブ・インタビュー・アセスメントについて知っておくべきこと

エグゼクティブ・インタビュー・アセスメントは、限られた時間と予算の中で、有力な候補者に関する客観的な洞察を得るための手段です。しかし、将来のパフォーマンスを正確に予測するための最善の方法ではありません。むしろ、リスク要因を特定し、前述のCHROのような状況に陥るのを避けることができる優れた方法です。

このCHROは、保険としてインタビュー・アセスメントを使用しました。インタビューを行った評価者は、候補者にいくつかのリスク要因があることを見抜いていました。例えば、その候補者には社風に合わない性格の阻害要因があり、戦略的および対人関係の機敏さに欠けていました。要するに、彼はその職務に就く準備がまったくできていなかったのです。

しかし、社内の採用チームは候補者の過去の業績に目を奪われ、早急にポジションを埋める必要性があると感じてしまいました。高額な給与を提示し、かなりの転居費用も負担しました。そして、数ヶ月間彼が低迷するのを見て、最終的に解雇しました。

②インタビュー形式の360度診断

インタビュー・アセスメントは、即座に役割を埋める際のリスクを把握するために使われます。一方、360度診断は将来の役職に向けて、社内の人材を育成することに焦点を当てています。対象者は、将来より大きな役割を担う可能性を秘めたパフォーマンスの高い人材ですが、現時点では、いくつかの課題に取り組む必要があります。

一般的に、360度診断には2つの方法があります。よく知られているのは、リーダーの上司、直属の部下、同僚が、リーダーのパフォーマンスについて匿名でフィードバックを行うアンケート形式です。

アンケート形式は経営幹部層でも用いることができますが、インタビュー形式のアプローチの方が有用な場合がよくあります。この方法では、外部評価者が主要な関係者と一連の面接を行い、個人の強みと能力、課題、そして成功する方法を探ります。 質問には、「実行と成果の推進において、どの程度優れているか?」「重要なパートナーとの交渉や影響力の発揮において、どの程度優れているか?」などが含まれます。

評価者は、関係者から得た洞察とパーソナリティ診断のデータを組み合わせ、機密性の高いサマリー・レポートを作成します。その後、経営幹部とフィードバックを共有し、リーダーシップ開発計画の作成を支援します。

✅インタビュー形式の360度診断の使用場面

あるグローバル企業が、インタビュー形式の360度診断を活用し、どのように将来有望な若手事業部長のキャリアに役立てたかという事例を見てみましょう。

「彼は素晴らしい。すごくうまくやっています。あとは微調整が必要なだけです」

彼は創造性に富み、周囲から愛されるハイパフォーマーとして評価されていましたが、経営幹部職の経験はありませんでした。組織は、この役割が彼にとってやや“ストレッチ”な任務であることを認識していました。そこで、彼の成功を支援するために、エグゼクティブ・コーチング・プロセスの一環として、インタビュー形式の360度診断を実施しました。

若手事業部長へのフィードバックから、より効果的に戦略を策定・実行し、チームの他のメンバーに仕事を委譲する必要があることが明らかになりました。そこで彼はコーチとともに、これらの課題を克服するための能力開発計画を作成しました。

6ヶ月後、再び関係者にインタビューを行ったところ、明らかな進歩が見られました。さらに、彼が次に開発する必要がある点についてのフィードバックも共有されました。 インタビュー形式の360度診断は、アンケート形式と比較して、経営幹部が自身のパフォーマンスにおける重要なテーマを理解するのに役立ちます。その結果、能力開発の焦点を絞り込むことができます。

また、経営幹部は関係者からのフィードバックに感謝し、変化に対する説明責任を果たすことができます。これにより、関係者との信頼が構築され、行動変容を優先させるための健全な緊張感が生まれます。

✅インタビュー形式の360度診断について知っておくべきこと

一般的に、360度診断は、速やかな経営幹部の選定を支援するためのものではありません。むしろ、リーダーシップ開発に役立てるためのものです。 このデータを活用して、時間の経過とともに経営幹部がどれだけ成長したかを測定することができます。これは昇進の判断の際に考慮されることもあります。フィードバックを受け入れて即座に改善した人は、フィードバックを無視したり行動変容に時間がかかったりする人に比べて、新しい役割に迅速に適応できる可能性が高くなります。

③経営幹部の1日を体験するエグゼクティブ・ビジネス・シミュレーション

360度診断は、現在の職務においてその人がどのようなパフォーマンスを発揮していると周囲から認識されているかを示すのに対し、経営幹部の1日の職務を体験するエグゼクティブ・ビジネス・シミュレーション(アセスメントセンターとも呼ばれる)は、より未来に焦点を当てた経営幹部向けのアセスメントです。これは、経営幹部職に明日昇進した場合に、どのような行動を取る可能性があるのかを把握するのに役立ちます。

この方法は、社内の配置転換や社外からの採用の決定、キャリア開発や後継者育成の目的にも使用できます。

1日の体験型エグゼクティブ・ビジネス・シミュレーションは、その名の通り、経営幹部の1日の職務を体験するものです。対象者は役員室のような部屋に1日入り、経営幹部としてさまざまな課題に対応していきます。この体験には、ロールプレイングやオンラインでの対話、その他の演習があり、対象者が実際にその職務に就いたときにどのような行動をするかを測定します。

シミュレーションは通常、特定の職務と経営戦略に関連する重要な優先課題(ビジネス・ドライバー)に合わせて設定されます。ビジネス・ドライバーとは、リーダーが知識、スキル、個人特性を駆使して取り組む必要のある、経営戦略を推進するために乗り越えねばならない重要なリーダーシップの課題のことです。

✅エグゼクティブ・ビジネス・シミュレーションの使用場面:選抜

エグゼクティブ・ビジネス・シミュレーションは、採用や昇進を迅速に決めなければならないときと、能力開発の両方に活用できます。ここでいくつかの例を紹介します。

あるグローバル製造会社では、最も重要な部門を統括する経営幹部を探していました。同社は社内で候補者を選定したいと考えていましたが、適任者がいませんでした。そこで社外の候補者に目を向けました。

社外の候補者には、面接とパーソナリティ診断に加え、組織が事前に選定したビジネス・ドライバーの準備度を診断するために設計されたアセスメントセンターを実施しました。各候補者に関する広範かつ詳細なデータが提供され、採用チームは自信をもって決断を下すことができました。 数ヶ月が経過し、新しい経営幹部は成功を収め、必要な改革を進めています。シミュレーションから得られたデータは、彼の成長を加速させるだけでなく、迅速かつ成功裏に役割を遂行させるために優先すべき活動を特定するのにも役立ちました。

✅エグゼクティブ・ビジネス・シミュレーションの使用場面:能力開発

次は、ある大手医療システム会社が、後継者候補の能力開発のために1日体験型シミュレーションを使用した例です。同社は、社内のポテンシャルの高い経営幹部候補が現在どのように評価されているかについての360度診断データをすでにもっていました。

しかし、ステークホルダーは、特にパラダイムシフトや組織の課題に照らして、これらのハイポテンシャル人材が将来どのような価値を提供する可能性があるのかを把握するのに役立つ、将来のシナリオにおけるデータを求めていました。

各ハイポテンシャル人材はシミュレーションに参加し、そのデータを基にフィードバックを受けました。その後、人事部門は統合されたデータを見て、ハイポテンシャル人材グループ全体の能力とギャップを理解しました。その結果、このグループを対象としたラーニング・ジャーニーを作成することができました。

また、このデータを用いて、個々人のニーズに合わせたキャリア開発計画も作成しました。 後に重要な役割を担う数名の経営幹部の退職が発表された際、この会社は非常に有利な立場にありました。すでに、ハイポテンシャル・プールの中で、間もなく空席となる経営幹部職には誰が適任かを把握していたからです。

✅エグゼクティブ・ビジネス・シミュレーションについて知っておくべきこと

エグゼクティブ・ビジネス・シミュレーションは、将来のパフォーマンスを予測するための最適な方法ですが、時間がかかります。労働市場がひっ迫している状況では、社外の候補者の中にはこのシミュレーションに自分の時間を投じるのを躊躇する人がいるかもしれません。そのため、組織は、エグゼクティブ・インタビューという短時間で実施できる方法を選択するかもしれません。

しかし、特にリスクが高く、重大な責任を伴う職務に就く候補者の中には、シミュレーションをチャンスと捉える人もいます。彼らは、自分がその職務に本当に適しているかどうかを確かめるために、組織が十分な調査を行っていることを評価するでしょう。採用されたときには、自分が成功する可能性が高まるだけでなく、迅速に弱点を克服するための能力開発計画も得られると考えるからです。

3.エグゼクティブ・アセスメントの成功はデータの使い方次第化

経営幹部の失敗には高いコストが伴うことからも、重要な役割を選定する際は、人事部門、CEO、取締役がデータを要求する必要があることは明白です。さまざまなタイプのエグゼクティブ・アセスメントは、時間枠、ビジネス戦略、役割に対する特定の基準に基づいて意思決定を支援します。

しかし、データはその使い方次第で、良し悪しが決まります。最初に述べたように、どんなに素晴らしいデータも、チームが適切な文脈で活用する方法を知らなければ、意味がありません。

エグゼクティブ・アセスメントから得られるデータを適切に使用すれば、重要な役職に対して正しい決断を下し、パフォーマンスを向上させることができます。では、優れたデータをもたないという選択肢はあるでしょうか?

■執筆者: DDI社 産業心理学者、エグゼクティブ・コンサルタント マーティ・ファクターPh.D.
■原文はこちら

4.マネジメントサービスセンター(MSC)のアセスメントソリューション

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6.会社概要

会社名:株式会社マネジメントサービスセンター
創業:1966(昭和41)年9月
資本金:1億円
事業内容:人材開発コンサルティング・人材アセスメント

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