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第5章<成長する>より早くリーダーをゲームに引き入れる

1.早急にスキル、知識、経験を積む任務を作り出す

本コラムではすでに、リーダーをゲームに引き入れる必要性について述べてきた。さあ、ゲームの時間だ。将来のスター選手がサイドラインの外に立っていては、必要な成長は実現しない。リスクを冒す必要があるし、経験という概念について考え直さなければならないかもしれない。組織にはたいてい、有能でリーダーシップのポテンシャルはあるが、まだ主要な役割に就くほどの経験がない者がいる。彼らのような経験の浅いリーダーをもっとビジネスに関わらせたいが、本当にニーズがあるビジネスに関わらせるには経験不足なのだ。これは非常にリスクが高く、ジレンマがある状況だ。


ここで、多くの組織が手痛い過ちを犯す。時間とともに経験が身につくと考えてしまい、待ってしまうのだ。タレントレビューの中では、「2年後に準備ができる」、「5年後に準備ができる」という具合に、時間を基軸とした準備度を予測する。だが、より重要な職務に就く準備を整えるために、必要なスキルと経験をいかに早く積むかは、時間だけで決まるのものではない。一定期間同じ肩書を持っていても準備度は上がらない。準備度は、新たな課題に直面することで上がるのだ。われわれはこれを成長課題と呼ぶ。学習者に、適切なタイミングで適切な課題を与えることで、スキルや知識、経験を速く身につけさせることができる。

成長課題を、学習者の使命と考えよう。ビジネス上の使命、リーダーシップの使命だ。実行すべき重要な任務だが、キャリアとビジネスを危険にさらす無謀で無計画な探求ではない。成長課題は、リーダー個人と組織に的を絞って影響を与える意図的な取り組みである。ただ決めるのではなく、あなたと経営陣が、学習者に必要なリーダーシップスキル、知識、経験を育てつつ、ビジネス目標に合うよう設計するものである。

人材開発の加速化システムのこの部分がうまく機能すると、経営幹部は成長課題となるようなリーダーシップのニーズを常に探すようになるだろう。そして見つけた課題を、その克服が求められる学習者に取り組ませる。これは人材開発の加速化プロセスにおいて、重要な要素であるが複雑ではないので、ちょっとした訓練と基本原則の適用で経営幹部はすぐに熟練することができるだろう。

2.仕事のことを考えるのはやめて、成長課題のことを考える

経営幹部は成長課題と仕事を同一視しがちである。この考え方は、人材開発の加速化を阻害してしまう。 理由を説明しよう。従来のシナリオでは、組織の階段を上っている途中のリーダーは昇進によってひとつずつポジションを移っていく。そして昇進していくうちに、ビジネスの重要な側面を学び、徐々に難しい職務を引き受けてリーダーとしての経験を積む。このように仕事ごとに能力開発をする方法だと、人材開発の加速化は、a)在職期間を短く切り上げて早く昇進させる、b)リスクを冒して慣れていない分野の仕事に就かせる、c)現職よりも2~3階層上の職務に昇進させる、のどれかでしか完了しない。こういった戦術は有用であるが、リーダーの準備度を加速させる唯一の手段として使われる場合、次のような結果を招いてしまうことが多い。

・仕事は変わるが、リーダーシップスキルは向上しない。
能力開発の目標が具体的でなく、学習の成果と結びついていない。これは経営幹部が、必要な学習が新たな仕事に自動的に付随するという誤った考えを持つためである。正しく計画しなければ、そのようなことは自然には起こらない。

・経営幹部がリーダーの能力開発に慎重になりすぎる。
深刻なリーダー不足に陥っている組織は、リスクの高い異動を検討せざるを得ない。リスクが高いのは、責任の大きな飛躍になるからだ。だが、しっかりと準備をしていないと、飛躍するリーダーの成功率は一定せず、このようなリスクを負い続ける動機を失う。異動に変わる人材開発の選択肢がないまま、経営幹部はリスクをまったく負わないようになる。

・リーダーの成長が止まる。
すぐに空きポジションが足りなくなり、学習者に能力開発をする機会を与えられなくなる。
より多くのリーダーの成長を、より早い段階で加速化しようとするなら、異動(ジョブローテーション、昇進、同じ階層での異動)を計画するだけでは不十分だ。経営幹部とともに、学習者の独自のニーズに合う成長課題を作り、異動しなくても、重要なリーダー職務に就く準備を素早くできるようにすることが必要だ。

より多くのリーダーの成長を、より早い段階で加速化しようとするなら、異動を計画するだけでは不十分だ。

成長課題は、学習者が高い階層のリーダーのサクセス・プロフィールに向けて効果的にふるまえるよう準備を整えるものだ。

🔶成長課題とは――

・リーダーに、将来の仕事で成功するために必要な経験を速く身につけさせる。
・リーダーがコンピテンシーを開発し、阻害要因を克服するのを可能にする。
・リーダーに、より高い階層の職務に就くための広い洞察、理解、知識、自信を与える。
・短期(1~6カ月)でも長期(1年かそれ以上)でも良い。
・異動の一部であっても良い(たいていはそうではない)。

3.影響力の高い成長課題の例

・合併、買収、合弁事業、戦略的提携のため(あるいはそれらへの対抗のため)の検討書を作成し、提示する。
・組織レベルのプロセスやシステムの変革を実施する。
・経費削減や在庫管理の計画を立案し、実施する。
・社外の提携相手や規制機関と契約交渉を行う。
・メディア対応など、重圧のかかる、あるいは可視性の高い状況を率いる。
・人員削減を先導する。

異動から成長課題に焦点を移すことで人材開発の加速化が進むが、ひとつ注意しなければならないことがある。経営幹部の中には、このような育成計画を立案する力がなく、人材開発の加速化の取り組みを作るのは人事部門の責任だと考えて、立案を引き受けるのに抵抗する人もいる。だが、より重要な職務への準備度を上げる使命を作り出すためには、経営幹部が人事部門と協力して、学習者の能力開発ニーズに最も合う取り組みを特定しなければならない。忘れないでほしい。目標は、リーダーをビジネスというゲームに引き入れることである。そのために、経営幹部は成長課題を作り出さなければならない。

4.おすすめ人材アセスメントソリューション

5.DDIとは

DDIは、世界最大手の革新的なリーダーシップ・コンサルティング企業です。1970年の設立以来、この分野の先駆者として、リーダーのアセスメントや能力開発を専門としてきました。顧客の多くは、『フォーチュン500』に名を連ねる世界有数の多国籍企業や、『働きがいのある会社ベスト100』に選ばれている世界の優良企業です。
DDIでは、組織全体におよぶリーダーの採用、昇進昇格、能力開発手法に変革をもたらす支援をすることで、すべての階層において事業戦略を理解し、実行し、困難な課題に対処できるリーダーの輩出に貢献しています。
DDIのサービスは、現地事務所や提携先を通じて、多言語で93カ国に提供されています。また、同社の研究開発投資は業界平均の2倍であり、長年にわたる実績と科学的根拠に基づいた最新の手法を駆使して、組織の課題を解決しています。

◆DDI社の4つの専門分野

DDI社は、4つの専門分野を中心に、長年の実績と科学的根拠に裏付けられたソリューションと、より深い洞察を提供し、優れた成果を生み出しています。

6.会社概要

会社名:株式会社マネジメントサービスセンター
創業:1966(昭和41)年9月
資本金:1億円
事業内容:人材開発コンサルティング・人材アセスメント

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