【特別対談】人的資本経営の鍵を握る後継者計画~その秘訣、日本の現状と世界の違い
1.産業構造の変化に伴い、人的資本経営の必要性が生まれた
吉岡:昨今、日本国内では人的資本経営が頻繁にメディアで取り上げられ、政府も度々言及しています。なぜこれほどまでに人的資本経営が着目されるのでしょうか。
岩本隆氏(以下岩本):もともとは経済産業省が仕掛けたことです。日本は産業構造の変革ができないまま今に至り、失われた30年とも言われています。そうした状況にも関わらず、2017年に「働き方改革」が閣議決定され、残業を減らし、有給消化率を高めることが推奨されました。経済産業省は危機感を抱き、生産性を高める「働き方改革2.0」を推進する産業政策として人事政策に乗り出したのです。生産性を高めるためにはHRテクノロジーの活用は欠かせません。HRテクノロジーのツールはヒューマンキャピタルマネジメント(HCM)アプリケーションと呼ばれており、HCMを訳した「人的資本経営」という言葉が定着しました。
他方、人事政策を人事のものとして人事部門にとどめてしまうと、思うように前には進みません。そこで株式市場からプレッシャーをかけCEOマターとしました。投資家が人的資本に関する情報を求めるので、データを集め開示せざるを得なくなっています。今やすべての経営者が人的資本経営、人的資本開示に関心を持っていると言っても過言ではないでしょう。
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吉岡:そういう意味では、経済産業省の政策はとてもうまくいっているように感じられますね。
岩本:はい。2018年12月には人的資本のレポーティングの国際規格、ISO 30414が出版され、内部・外部にレポーティングする際に活用されています。
吉岡:欧米諸国は日本と比較すると、早い段階から人的資本経営に取り組んできました。なぜ欧米の企業は、世界に先駆けて人的資本経営に乗り出したのでしょうか。
Bruce Watt氏(以下ワット):歴史的背景を振り返ると、1998年にマッキンゼー・アンド・カンパニーが出版した『ウォー・フォー・タレント』(原書:The War for Talent)が始まりだったと考えられます。同書は、従来の採用、学習、育成のあり方では社会的・経済的な必要性には対応できないと強調しました。当時、欧米の社会は高齢化が進んだことで労働者が減り、また、産業構造の変化で知的労働が求められるようになっていました。社会の変化のスピードも速く、採用を変えると共に、内部でリーダーを育てることが肝要だと結論づけたのです。この時、重要な観点となるのが人材を資本のように扱うことです。
ただし、人的資本は他の資産のように投資をすればすべてが成長するということはありません。ポテンシャルのある人材を把握した上で、適切に投資を行う必要があります。ポテンシャルのある人材を見つけ出すことを、組織のリーダーが乗り越えるべき重要な課題、つまり、ビジネス・ドライバーとして欧米の企業は解決に取り組んできました。この結果、2000年~2010年にかけて、景気の浮き沈みの影響を受けながらも外部環境にうまく対応できた。その大きな要因になっています。
吉岡:ビジネス・ドライバーについて言及がありました。遠山さんにビジネス・ドライバーについて簡単にご説明いただければと思います。
遠山:リーダーが乗り越えなければならない重要な課題のことを、ビジネス・ドライバーと呼んでいます。会社が目指す戦略を実現するために、リーダーが直面する課題です。そして、その課題の内容に明確に紐づけて、リーダーとして求められる要件を定めていこうとするのが我々の考え方です。つまり、それぞれの会社のビジネス・ドライバーに的確に取り組める人材を見出したり、育てたりすることが重要ということです。
ワットさんは、産業構造が速いスピードで変化した時に、人的資本経営が本格化し、リーダーへの投資のあり方が変わってきたと言及しました。本当は日本も同様に変化しなければならなかったはずですが、今、少しずつ人的資本経営が国内に浸透し始めています。ビジネス・ドライバーが日本で注目を集めている背景には、そうした変化の必要性が今まさに高まっているからなのだと思います。
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