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コンピテンシーモデルを再構築する前にすべきこと

ここ最近、お客様から「自社のコンピテンシーモデルを改訂したいが、どのようにしたらよいのかわからない」というご相談をよくいただきます。

例えば先日、世界的な製薬会社のCHROと、既存の従業員のニーズをより満たすために、彼らのリーダーシップの要件をどのように変えていくかについて、電話で議論しました。スキルのあるリーダーはいるものの、あらゆる事が変わるタイミングだと感じていたようです。


彼女は「今は最悪の状況です。皆、自分の身の安全や家族の事が心配で、自宅からリモート勤務をしています。また、自分の仕事や会社の将来についても懸念しています。そして、その間ずっと、互いのつながりがなく、孤立しているのです。リーダーはメンバーに対して今までよりも時間を空けて連絡を取りやすくし、より親身に対応することで、この難局を乗り越えています。ただし、これはあくまで短期的な対処で、長期的にはもっと多くのことが変わろうとしています」と言及しています。

「当社のリーダーシップはこの先、これまでと変わらないこともあれば、大きく異なる部分もあるといえます。リーダーシップ・モデルの再考が不可欠であることは十分理解していますが、状況が今のように不明瞭だと、何が答えなのか確信をもてないのです」。

このCHROの話は、私たちのお客様から最近、頻繁に聞く内容とほぼ同じです。要するに、彼らは物事が変わりつつあり、自分たちのビジネスを変えなければならないことも理解している。自社のコンピテンシーモデルも改訂したい。ただし、どこから手をつければよいのか皆目見当がつかないでいるのです。

1.これは絶滅レベルの現象である

現時点で不確実なことが多いのは、驚くことではありません。つまるところ、経済は絶滅レベルの出来事に直面しているのです。

これはどういうことを意味するのでしょうか? 学生時代の科学の授業を思い出すと、絶滅現象とは、例えば、小惑星が恐竜を絶滅させたように、急速に多くの種を消し去る破滅的な出来事です(他の説もあるかもしれませんが)。ビジネス界における絶滅現象とは、市場における極端な変化のことで、それによりビジネス環境が恒久的に変わってしまうようなものを示します。例を挙げると、世界大戦、2009年の市場崩壊、90年代後半におけるITバブルなどもこれに相当します。

世界的パンデミックの規模と深刻さにより、経済の大部分は急速に、また取り返しがきかぬほど変容しました。石油やガスのようにかつて強かった産業は大打撃を受け、もともと業績不振にあった多くの大手企業の破綻が加速しました。

しかしながら、絶滅に対照的な側面として、「機会」があります。恐竜の場合、巨大爬虫類の消滅により哺乳類(ひいては人間)が、地球を支配する機会が広がりました。そして新時代への突入にあたり、好機としてとらえられるビジネスにも同じことが起こると想定されます。

なぜ絶滅現象の話が、コンピテンシーモデルの話し合いに必要なのかというと、それは今起きているビジネス変化の大きさを理解することが、非常に重要だからです。この先は、人材戦略およびコンピテンシーモデルと、新たなビジネス機会とを密接に関連させていく事が不可欠となります。また自社のリーダーにとって、サクセス・プロフィールがどのようなものなのかを正確に知る必要もあります。さもなければ、絶滅の危機に直面することになるでしょう。

2.まず初めにビジネス・ドライバーを特定する

人材戦略と事業戦略を整合させる必要性は、誰もが想定の範囲内でしょう。しかし驚くべきことに、この事がコンピテンシーモデルからは抜け落ちていることがよくあります。

DDIでは、上級管理職の方々と共にビジネス・ドライバーを特定することから始めました。ビジネス・ドライバーとは、管理職や経営幹部がビジネスの優先事項を実施し、ビジネスを前に進めるために乗り越えなければならない3~4つのリーダーシップに関する課題のことです。その上で私たちの膨大なデータベースを利用し、リーダー階層ごとのコンピテンシーとビジネス・ドライバーを紐づける作業を行いました。

例えば、市場での優位性を目指している企業のビジネス・ドライバーは、プロダクト・イノベーションや高利益の事業成長の推進、グローバルの新規市場への参入などになるでしょう。一方で、財政難に直面している企業では、優先順位が異なります。彼らの重点項目は、戦略的なパートナー関係の構築や運営コストの管理と削減、あるいはプロセス・イノベーションの推進などが考えられます。

これらのビジネス・ドライバーには、リーダーが組織の未来戦略に向けて、成功を促進するために実施しなければならない最優先事項が定義づけられています。そして、それぞれのドライバーに、一連のリーダーシップ・コンピテンシーが紐づけられます。自社のリーダーがそれらのスキルに欠けている場合、早急な育成が最優先課題となります。また、場合によっては、将来の方向性に必要なコンピテンシーとより合致している人材を、新たに採用する必要もあるかもしれません。

例えば、「新たな市場への参入」というビジネス・ドライバーには、鍵となるリーダーシップ・スキルが3つあります。ビジネス手腕、起業家感覚、そして実行力です。もし、自社のリーダーがこれらのスキルをもっていない場合、急速に開発しなければ、事業戦略の中核で成功する可能性は低いでしょう。

現在のような新たな経済環境において、事業戦略をゼロから見直す中で、最初にすべきことは、ビジネス・ドライバーを特定することです(現在、事業戦略を再構築しようとしている段階の場合は、弊社ブログ記事「パンデミック後のビジネス・トランスフォーメーション:リーダーシップ5つのフェーズをご参照ください。ビジネス・ドライバーを設定できれば、リーダーが新たなパラダイムで成功するために必要となる、最重要コンピテンシーを定義することができます。これにより、後のことはすべてうまくいくようになります。

3.新コンピテンシーモデルの5大要素

企業のビジネス・ドライバーは各社で異なるものの、業界全般において共通で、今現在注力すべき、大まかな傾向が見られます。

ジョシュ・バーシン博士とDDIのステファニー・ニールが今年5月のオンラインセミナーで言及しましたが、一つ確かなのは、私たちが非常に不確実なものと共に生きるすべを学ばなくてはならないという点です。劇的な出来事とそれに続く危機対応は、もはや「人生に一度きり」ではなく、この先もこれまで以上に頻繁に、そして緊急性を伴って発生することでしょう。リーダーは即座にこれらに反応し、常に方向転換する準備を整えておく必要があります。

そのため、新たなコンピテンシーモデルを構築する際に、各企業が考慮すべきリーダーシップの鍵となる要素は以下の通りです。

相手の気持ちを理解し、共感を示す: 従業員の感情は、劇的な変化によりかき乱されています。リーダーは彼らをつなぎ止め、従事させるために、彼らの気持ちに対応する必要があります。

  1. 信頼と目的の文化を創り出す: 従業員はより良い世界の構築に貢献している企業で働きたいという傾向が高まっています。リーダーはチームとの信頼を深め、目的について定期的にコミュニケーションを取る方法を心得ていることが必要です。

  2. 変化を導き、インベーションを推進する: 市場の絶え間ない変化により、企業は急速な変化や革新を余儀なくされます。変化に消極的なリーダーを雇っている余裕はありません。考え方が柔軟で、変化の機会をとらえられるリーダーが必要です。

  3. 従業員の回復力(レジリエンス)を強化する: 従業員たちは、変化の速さや大きさに対処するにつれ、よりレジリエンスを高める必要があります。リーダーは、チームがレジリエンスをより強化し、この先の変化に対して自信をもてるように支援します。

  4. コーチング文化を醸成する: ビジネスが変わりゆく中で、従業員は常に新たなスキルを身につけていく必要があることは疑いの余地もありません。メンバーの能力を引き上げたり、コーチングを実施したりする強力なリーダーシップ文化は、従業員が迅速に知識を得るのに役立ちます。

4.次のステップ

コンピテンシーモデルは、スタート地点に過ぎません。モデルの成功は、リーダーがいかにそれらのコンピテンシーを実践するかにかかっています。

リーダーシップ・コンピテンシーモデルが構築されたら、アセスメント、選抜、育成戦略について考え始める必要があります。そのリーダーが、

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■原文はこちらをご参照ください。

会社名:株式会社マネジメントサービスセンター
創業:1966(昭和41)年9月
資本金:1億円 (令和 2年12月31日)
事業内容:人材開発コンサルティング・人材アセスメント


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