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アジアから見た日系企業の課題~巨大市場で取り残されるな!日本企業の新たな挑戦

1.中国の景気は悪くない

🙋‍♀️伊東
中国に進出した日系企業は、今、かなり厳しい状況に置かれているのですか。 

🙋‍♀️畑
まだ市場がよいので、それほどではありません。「中国が危ない」というマスコミの報道がありますが、それは、中国ネガティブ報道ほど日本で受けがよいためであり、脚色されている気がします。この点は、中国に詳しい方々と話しても意見が一致します。 

今まで輸出型だった企業が中国の内需向け製品の開発を始めたとか、中国から東南アジア向け製品を開発するようになったとか、「日本の加工基地」としての位置づけはだいぶ変わってきました。それに伴う再編は行われていますが、大きな撤退はありません。日本からは、本当の姿が見えていないと感じます。 

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たしかに、一部に厳しい産業があったり、経済が危うかったりする面はありますが、私が見たところでは、中国の景気は悪くありません。この10年、「中国のバブルがはじける」と言われ続けていますが、すでに10年が経ちました。中国のバブルがなかなかはじけないのは、国がコントロールしやすいからということも大きいと思います。


🙋‍♀️伊東
人口も13億6000万人もいますから、市場は大きいですね。 

🙋‍♀️畑
2017年は、GDP成長率の目標を前年より低い6.5%に引き下げましたが、それでも総額で言うと大きな市場です。ちなみにベトナムは、経済圏としては名古屋と同じくらいの規模だということです。「これからはベトナムだ」「ミャンマーだ」と言われていますが、冷静に見ると少し違うのかもしれません。 

🙋‍♀️伊東
市場がよい中であっても、新しいものを生み出していかないということに危機感を感じます。日本抜きでビジネスが行われ、日本の企業だけが取り残されてしまいます。 

🙋‍♀️畑
そのとおりです。先日、半導体装置メーカーの方々とお話をさせていただいたのですが、皆さん、サムスンの動きについていこうとしています。「そうか、日本の企業は、韓国企業の動きにこれだけ一喜一憂するようになってしまったのか」と愕然としました。市場のシェアを見ると、たしかに今は追いかける立場なのです。

2.日系企業か現地化に失敗する理由

🙋‍♀️伊東
日系企業は、変わろうとしてこなかったのでしょうか。 

🙋‍♀️畑
変わろうとしたけれど変われずにいるのが、経営の“現地化”です。以前から、「日系企業はマネジメントの現地化が非常に遅れている」と言われていました。 

しかし、欧米人からすると「ファー・イースト」ですが、日本からは近いので日本人が来てしまうのです。また、欧米企業には、華僑という人材がたくさんいます。留学してきた人にグリーンカードを取得させてアメリカ本社で採用しますので、アメリカ人と言いながら、中国生まれ中国育ちだったり、その2世だったりすることも多いのです。
 
一方、日系企業の場合、純粋な日本人が駐在していたのを「現地に任せなければ」と任せ始めたものの、多くの企業が失敗しています。
 
なぜうまくいかないかというと、外国人に任せられる仕組みがないからです。
 
2010年に日本総研と共同で、中国の国営企業、日系企業、欧米企業のマーケティングや人事マネジメントについて調査をしました。その結果分かったのは、欧米企業は、本社のガバナンスがものすごく効いているということです。
 
中国人が現地法人の社長をしていても、欧米の本社でマニュアルが決まっており、「こういうプロセス・こういう判断で決める」と定められています。現地の社長は「執行者」ではありますが、「ディシジョンメーカー」(最終的な意思決定者)ではないので、任せても同じようにできるのです。 

日系企業にはその仕組みがなく、日本人駐在員が「ウォーキングマニュアル」になっていますので、中国人にすげ替えるとコントロールできず、中国流でやられてしまいます。 

ある日本の大手企業は、現地化しようといったん日本人を引き揚げましたが、結局、うまくいかずに元に戻しました。日本流のマネジメントをしているので、人だけ入れ替えて現地のオペレーションを変えようとしても、できないのです。

3.リーダーシップのスタイル

🙋‍♀️伊東
日本企業のグローバル化について議論すると、必ずこの問題が出てきます。日本の会社は、グローバルにガバナンスを効かせることがうまくできません。それはこれまで、国内中心で何事も進めてきましたから、共通のフレームワークをつくるということに慣れていませんし、そういった発想がありません。人事制度、評価制度もそうですが、グローバルに、ユニバーサルに使える「枠組み」をつくることができません。リーダーシップのトレーニングですら、グローバルで一貫性をもって回すことができずに苦労しています。 

🙋‍♀️畑
日系企業の中国進出が始まって30年近くになり、中国各地に多様な事業部が多数の現地法人を展開する企業が増加し、数年前から本社のガバナンス強化、リソースの共有化等を目的に中国統括会社をつくる動きが盛んですが、事業部の壁が高く、ガバナンスを効かせることができず、統括会社が宙に浮いています。 

🙋‍♀️伊東
日本企業は、M&Aによって海外の会社を買収しても、買収先の企業をマネージできないため、結局、M&Aをビジネス成果につなげることができず、多くの場合失敗してしまいます。グローバル共通の人事制度やパフォーマンスマネジメントを導入しても、それを徹底させることもできないのです。 

日本企業はなぜ、欧米企業のようにグローバルにガバナンスを効かせることができないのでしょうか。私は、日本人のリーダーシップに問題があると考えています。同質の価値観、考え方の人たちが、ハイコンテクストな文化の中で企業を動かしてきたため、多様な人材を率いてリーダーシップを発揮する力が身についていないのです。 

🙋‍♀️畑
日本人同士の共通言語だけで生きてこられたので、多様な人とコミュニケーションをとるとか、自分の意見を表現するといったリーダーシップの基本が、グローバルな水準と比べてものすごく低いですね。 

中国に来る日本人駐在員は、皆さん、異文化研修を受けてきますが、それくらいではとても変われません。もっと根本的に育てていかないと、日本人が海外でリーダーシップを発揮することは難しいでしょう。

4.日系企業の中国人の特色 

🙋‍♀️畑
ある日系企業が、イギリスの会社を買収し、グローバルのヘッドクウォーターを買収先のイギリスに置きました。日本の会社の中国法人とイギリスの会社の中国法人を見比べたイギリスのヘッドクウォーターは、「同じ中国で、同じ中国の法律の下、同じ中国人が働いているのに、どうしてこんなに違うのか」と驚いたそうです。「なぜ、日系企業の中国法人には、3回も労働契約を更新したり、10年も勤める中国人がいるのか」と言うのです。 

日系企業の現地法人では日本の企業文化が現地人にも染み込んでいます。現地でのオペレーションが20年にもなった企業の中国人は、ある意味日本人と同じです。では、その人たちに日本人と同じように先があるかというと“ガラスの天井”がありますので、先はありません。コンフォータブルなところでぶら下がっています。ロイヤリティは高いですが、改革の抵抗勢力になります。

🙋‍♀️伊東
私も仕事で中国にいくことがありますが、おっしゃるとおり、日系企業で働いている中国人は日本人のようです。ガラスの天井に我慢できない人は、どんどんジョブホッピングをしてより高いポジションをゲットしていきますので、よい人材はどんどん抜けていき、勤続年数の長い人は“ぶら下がり”です。
 
タイでもそうでした。タイは、日本とはまた違った意昧で絶対的な年功序列、絶対的な学歴主義がありますので、変えるのは大変です。
 
🙋‍♀️畑
タイも日系企業が進出して長いので、日本人にとてもよく似たタイ人がいます。今、日本の会社を変えるには、日本本社や日本人のリーダーシップを変えることも重要ですが、悪い意味で日本人化した現地人をどうするかという課題もあります。今から対応しておかないと、ベトナムやミャンマーでも、同じような現地人が育ってしまいます。

🙋‍♀️伊東
見方を変えると、日系企業にとっては、そうやってぶら下がるローカルスタッフのほうがマネジメントをするうえでは楽な面もあったのでしょう。
 
🙋‍♀️畑
そう思います。ただ失敗している例もあります。本当に日本人になっているかというとそうではなく、中国人のよくないところが出てきたりします。ガバナンスが効いていれば抑止できたはずのトラブルは多発しています。安易に中国人経営層に任せきってしまい、横領、不正の温床となっていたという件は枚挙にいとまがありません。

5.日系企業の現地法人は日本の縮図 

🙋‍♀️畑
今、中国には、日本語のできる日系企業向け人材マーケットができています。ここに登録された人たちが日系企業を回っています。彼・彼女らは、日本語は話せますが、プロフェッショナリティは低い。しかし、英語しかできない人を採用すると、日系企業の文化になじめず、周囲から浮いてしまい、早々に退職してしまうケースが多いのが実態です。日系企業が人を育ててこなかったしっぺ返しが来ています。

3年で退職しても欧米企業で人が育つのは、そこにポリシーやマニュアル、育てる仕組みがあり、信賞必罰が明確で育たない人は淘汰される仕組みだからだと思います。

🙋‍♀️伊東
日系企業の教育は、仕組み化されていません。階層別研修といった日本企業の日本人向けの研修はありますが、基本的に、OJTが中心となりリーダー人材育成にも多くの課題を抱えています。OJTによる技術の伝承は行われてきましたが、それも、ビジネスの変化に合わせて人材育成をスピード化できず、日本企業におけるOJTの仕組みも、すでに限界にきています。 

🙋‍♀️畑
日系企業の現地法人は、日本の縮図ではないでしょうか。 

🙋‍♀️伊東
本当にそうです。日本の本社自体が、「昭和」から抜け出せず、新卒一括採用、年功序列、終身雇用を変えることができていません。この問題は根深いです。 

🙋‍♀️畑
それらがいろいろな文化をつくってしまっています。 

ある面白い調査があって、「仕事を面白いと感じているか」ということと在職年数の関係を調べたところ、日本以外では、勤続年数が長いほど、仕事を面白いと感じている人の割合が高くなりますが、日本では、勤続年数が長くなるほど、仕事が面白くないと思っている人の割合が上がっています。 

日本以外では、仕事が面白くない人はその会社を去っていき、仕事が面白い人だけが会社に残っているのに対し、日本では、仕事が面白かろうが、面白くなかろうが、会社は辞めないということが前提になっているからです。しかも、その人たちが年功的に昇格してリーダーなどになっているからたちが悪い。これでは、日系企業が伸びるわけがありません。

🙋‍♀️伊東
ミレニアル世代も、変化の激しい先が見えにくい時代にもかかわらず、大手志向・安定志向が強く、つぶれない会社を選ぼうとします。 

🙋‍♀️畑
ますます内向きになっていますね。その点でいくと、中国も危ないかもしれません。中国の1980~90年代生まれは、親が裕福な一人っ子ですので、日本に来てもアルバイトをせずに生活でき、爆買いをしています。中国も、次の世代はどうなるか分かりません。

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6.おすすめ人材アセスメントソリューション

7.グローバルポジションを獲りにいく

グローバル企業において、日本人は優秀な部下にはなれるが、グローバルポジションはとれないという事態が起きつつある。外国人、とりわけアジアの優秀なリーダーたちが、日系企業の重要ポジションを占め始めている。このままでは、日本人はグローバルはおろか、国内でも重要なポジションをとれないことが危惧される。
日本企業では、なぜリーダーシップ開発が停滞しているのか。グローバルポジションをとれるリーダー人材は、いかにして輩出されるのか――。
日本人のリーダーがグローバルで戦うために世界基準で獲得すべきリーダーシップスキル、及びリーダーシップ開発成功の要諦、人事が起こすべき変革、経営のコミットについて、具体的事例とリーダーシップに関するグローバル・データを織り交ぜながら解き明かす。

8.株式会社マネジメントサービスセンター

創業:1966(昭和41)年9月
資本金:1億円
事業内容:人材開発コンサルティング・人材アセスメント

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