銭形平次捕物控85「瓢箪供養」(1939)+北大路欣也・主演 3-15/村上弘明・主演 1-5 紹介と感想
野村胡堂『銭形平次捕物控(七)平次女難』嶋中書店, 2004, p.7-45
あらすじ
元金物問屋をしていた佐兵衛は、飄々斎と名乗って雑排三昧で暮らしていた。大酒飲みで有名だったが、身体が酒に付いていけなくなったと断酒をし、集めた瓢箪三十六個を思い切って向島土手に埋めて『瓢箪塚』と彫った石を建てた。
その瓢箪供養をした日の夜、飄々斎が庭の池に上半身を突っ込んで、麻縄で首を絞められて死んでいるのが発見された。
利助の縄張りだったが、お品から「飄々斎が死んだのは、人に殺されたに違いない」と書かれた手紙の相談を受けた平次は、事件に乗り出すことにする。
家には甥の駒三郎、下女のお滝、下男の元助と暮らしており、他に友人の露の屋正吉と付き合いがあった。勘当した息子もいるが、隣の家に暮らしているにも関わらず交流はないらしい。
これという容疑者もいないかに思えた事件は、思わぬ形で動き出していく。
紹介と感想(ネタバレあり)
飄々斎の苦しい中での策が胸を打つ一編です。
ミステリー的には、飄々斎が亡くなった真相を平次が早めに暴きすぎているのが勿体ない感じがしますが、物語としては綺麗にまとまっており、話の主題となる消えた財産の行方についても、伏線があるため唐突感が少なくなっています。
過去に悪事を働いたとはいえ、死ななければならないほど追い詰められていた飄々斎の苦しさや、理由が分からず勘当された佐太郎のことを思うと悲しいですが、勘当されたあとも父親を恨むことなく手紙を出した佐太郎の心の綺麗さが救いになります。
一つ一つの要素と言うよりは、一本の捕物短編として満足度が感じられ、結構好きな一編です。
映像化作品
北大路欣也・主演 第3シーズン 第15話「ひょうたん供養」(1993)
ほぼ原作通りですが、万七の誤認逮捕や謎の手紙の届くタイミングの変更など細かい違いがあります。
ミステリー面を強めたドラマ作りをしている北大路版だけあって、ほぼ原作通りの内容でも、原作以上にミステリードラマ感を感じます。
また、大川版の八五郎でお馴染みの林家珍平の姿に安心感も感じられる、オススメの作品です。
ゲスト出演者
佐太郎/うじきつよし
おみの/伊藤美由紀
露の家松庵/中井啓輔
駒三郎/園田裕久
北大路欣也版レギュラーキャスト(当話出演者のみ)
銭形平次/北大路欣也
八五郎/三波豊和
お静/真野あずさ
三輪万七/伊藤四郎
清吉/山西道弘
保科源次郎/三浦浩一
菊村数馬/丹羽貞二
番家主/林家珍平
村上弘明・主演 第1シーズン 第5話「予告殺人!生前葬に隠された罠」(2004)
話の骨格や人物周りに原作の要素を使っていますが、大筋は原作177話「生き弔い」(1947)もミックスさせたドラマオリジナルとなります。
あらすじ
子どもが侍に因縁をつけられている所を止めに入った上総屋太平。貧乏人や病人の世話をする善人と評判の男だった。
ある日、八五郎から上総屋が生き弔いを行うと聞いた平次は、太平の元へ向かう。
平次達が上総屋へ着くと、万七達も遅れて到着する。どうやら、太平の元へ「お前を殺す」と書かれた手紙が届き、その相談を受けていたようだ。
万七達が上総屋の寮で護衛をしていると、「お師匠様に斬られた」と言い、太平が怪我をしていた。その晩から、露の家正吉は姿を消し、新たな脅迫状が届く。
知らせを聞いた平次も捜査を開始。生き弔いを止めるように勧めるが、太平は忠告を聞かず生き弔いを決行する。
平次や万七ほか捕方達が警護をする中、何事もなく生き弔いが終わったように見えたが、太平が早桶から出て来ない。
平次達が中を確認すると、太平は早桶の中で刀を突き立てられて死んでいた。
果たして太平の死の真相は? 平次の捜査が始まる。
感想
太平の強い意志が光る一編でした。原作以上に手の込んだ細工をする太平。その死に方は原作以上に恐ろしいものでした。
原作とは謎の力点が違いますが、伏線もしっかり描写し、ドラマとして納得のものとなっています。
アイパッチを付けた峰 蘭太郎も良い、面白いドラマでした。
ゲスト
上総屋太平/新 克利
佐太郎/原田 篤
工藤駒三郎/石倉英彦
露の家正吉/峰 蘭太郎
村上弘明版レギュラーキャスト
銭形平次/村上弘明
八五郎/石井正則
お静/東ちづる
三輪万七/渡辺哲
清吉/石塚義之
笹野新三郎/西岡徳馬
吉岡庄平/緒形幹太