少年とりゅうの友情を描いた名作『エルマーのぼうけん』シリーズ 紹介と感想
小さい頃はドリトル先生ばかり読んでいたので、海外の名作系で読み逃している作品がけっこうあります。世界的に名作と言われている絵本シリーズでありながら、エルマーシリーズも初読みとなりました。
全3部作の原作と、Netflixで公開されている2022年制作の映画版を観たので簡単に感想を書いておきます。
各作品あらすじ
01.エルマーのぼうけん My Father's Dragon(1948)
のらねこを助けたエルマーは、どうぶつ島に捕まっている子どものりゅうの話を聞き、助けに行くことにした。どうぶつ島では様々などうぶつと出会うが、エルマーは手持ちの道具と機転で乗り切っていく。
02.エルマーとりゅう Elmer and the Dragon(1950)
どうぶつ島からの帰り道、嵐に遭遇したエルマーとりゅうが着陸した島は逃げ出したカナリア達が暮らしている島だった。そこで、昔一緒に暮らしていたフルートと再会したエルマーは、島のカナリア達が〈しりたがりのびょうき〉で困っていることを聞き、力になることにした。
03.エルマーと16ぴきのりゅう The Dragons of Blueland(1951)
人間に見つかりそうになりながらも故郷の『そらいろこうげん』へとたどり着いたりゅうは、家族達が人間に捕まりそうになっていることを知る。りゅうは急いでエルマーへ助けを求めに行く。
紹介と感想
ルース・スタイルス・ガネットが描いた物語に、スタイルスの義母で挿絵画家のルース・クリスマン・ガネットの挿絵で人気の3部作。
3作とも味わいが違う物語になっており、面白く読むことができました。
1作目『エルマーのぼうけん』では、何に使うのだろうと思われた道具を無駄なく使って危機を乗り切るエルマーの姿にワクワクした気持ちを得ることが出来ました。
続く2作目『エルマーとりゅう』では、前回の次々と困難と出会って機転で乗り切る展開から変わり、一つの困りごとに耳を傾け協力する比較的静かな展開になっていました。
しかし、前回は最後にしか出番のなかったりゅうが全編に登場しエルマーと繰り広げる掛け合いや、カナリア達の騒がしさで最後まで面白く読めました。
そして、最終作となる3作目『エルマーと16ぴきのりゅう』では、りゅう視点の冒険から始まり、物語も半ばになってからエルマーが登場するという展開。
エルマーは、1作目と同じく意外な道具を利用して解決へと導くが、今回は道具を揃えた時点で解決への道筋が見えていたのが違うところ。道具を揃えた時点で、エルマーがどんな風にりゅうの家族を助けようとしているのかを考える楽しみがありました。
子供の頃に読むのとは違い、エルマーやりゅうと一体化して楽しむことは難しかったですが、それでも楽しい読書になったので、子供の頃に読み逃していたと思われる物語を読むのも良いな~と再確認できました。
Netflix『エルマーのぼうけん』My Father's Dragon(2022)
1作目『エルマーのぼうけん』を題材としていますが、設定以外は監督や制作会社の特色が強いものとなっていました。
社会問題的な要素やエルマーの母親やどうぶつ島の動物たちのキャラクターを立体的なキャラクター付けにより、物語の複雑性が強まっており、一つのアニメーションとして見たら悪くないのですが、原作が面白かったという気持ちで見始めると「なんか違うな……」となってしまいました。
複雑にすることが悪いことではないのですが、原作が持つシンプルかつ意外な面白さが影を潜めてしまっているので、原作要素を拾っていても別物感が拭えない一作なのです。
それでも、一つのアニメーションとして映像などは素晴らしいので、原作から生まれた派生作品位の気持ちで観ると楽しめると思います。
作品概要
原作:ルース・スタイルス・ガネット『エルマーの冒険』
監督:ノラ・トゥオメィ
脚本:メグ・レフォーヴ
製作:Netflixアニメーション/カートゥーン・サルーン
時間:103分
キャスト
エルマー・エレベーター/ジェイコブ・トレンブレイ(松本沙羅)
ボリス/ゲイテン・マタラッツォ(林卓)
デラ・エレベーター/ゴルシフテ・ファラハニ(樋口あかり)
クワン/クリス・オダウド
ソーダ/ジュディ・グリア
カリー/ヤラ・シャヒディ
ネコ/ウーピー・ゴールドバーグ
サイワ /イアン・マクシェーン
タミール/ジャッキー・アール・ヘイリー
マクラーレン夫人/リタ・モレノ
その他の映像化
『エルマーの冒険』(1997)
監督:波多正美 脚本:寺田憲史 制作:松竹 時間:98分
エルマー/YU-KI
ボリス/林原めぐみ
猫/八奈見乗児
近眼ネズミ/野沢雅子
カモメ/龍田直樹
エルマーの母/菊池麻衣子(友情出演)
エルマーの父/髙嶋政宏(特別出演)