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銭形平次捕物控326「八五郎子守唄」(1954)+映像化作品 紹介と感想


あらすじ

平次のもとへお静が「大変なんです」と駆け込んでくる。
どうやら八五郎に何かあったらしく、向柳原の八のおばさんが平次の家を訪れたのだ。
おばさんによると、昨夜、八五郎との子どもだと言い置いて少女を置いて行った女が来た、八五郎は見当も付かないといいながら子どもを可愛がっているとのこと。子どもは、お雛という名前だった。
平次の推理と八五郎の調べによると、母親はお半という矢取女で、現在は半田屋で働いているという。
お半に遠くから拝むように頼まれた八五郎は、お雛を育てる事を決意した。
それから暫くして半田屋の主・久太郎が殺される事件が発生。
久太郎は二本の矢で両眼を射貫かれて殺されており、弓の達人であり動機もあるお半が疑われていた。
平次は、白山の茂吉を手伝って事件に介入していく。


紹介と感想

平次は、矢の角度と出血の少なさから凶器は弓ではないと検討をつける。
八五郎の善人っぷりが光る話です。

見どころは、物語の前半、八五郎のおばさんの愚痴の相手をする平次と、お雛にデレデレの八五郎になります。

前半の和やかさに比べて、事件は陰惨極まりなく、お雛を預けた理由も時代の残酷さがあっての事でした。

事件自体は、平次が現場についてすぐに真相がわかるものであり、八五郎の人間っぷりと、事件の土台にある人情を味わう話だと思います。

物語の最後も、少ししんみりとした幕の閉め方になっています。

「八五郎さんはどうしたことでしょう。近頃はあの子で夢中なんですって。玩具や、お菓子を買ってやったり、自分で見立てて小切を買ってきて、叔母さんに——雛ちゃんが寒そうだから、おちゃんちゃんを縫ってくれと言うんだそうです。始めのうちは呆れていた叔母さんも、近頃はその一生懸命さにほだされて、朝から晩まで大賑いですって、変なものですね」

野村胡堂『銭形平次捕物控傑作選3 八五郎子守唄』所収「八五郎子守唄」, 文藝春秋, p211
八五郎と叔母さんの様子を覗きに行ったお静の感想

映像化作品

映像化は二つあります。

大川橋蔵・主演 第六話「八五郎子守唄」(1966)
風間杜夫・主演 第八話「人情、雛祭り」(1987)

どちらの映像化も、八五郎の善人っぷりが伝わる良いドラマ化でした。

大川橋蔵・主演 第六話「八五郎子守唄」(1966)

主犯と殺害方法の変更など違いは多いですが、大筋は原作に沿っています。
お半周りのドラマを濃くし、最期を気持ちよく終わらせるために息子周りの設定も変更されていました。
ドラマ前半はお弓の出番が多く、八五郎と二人で調査に行く下りは微笑ましかったです。

ゲスト
 お半/馬渕晴子
 お民/東竜子
 お滝/富永佳代子
久太郎/原 健策

風間杜夫・主演 第八話「人情、雛祭り」(1987)

所々原作の要素を使いつつ、事件の流れや犯人は変更されています。
お半が弓の名手である事をより強調したり、犯人グループの中に弓使いがいたり、原作より弓の存在が強く、矢が飛びまくる話です。
萬屋錦之介が演じる笹野弥三郎が捕物現場へ訪れて、犯人と対峙する珍しいシーンもあります。
お静とおとめが、お雛を巡って嫁姑かのようなギスギス感を出し始めるのが面白かったです。

ゲスト
   お半/小鹿みき
  おとめ/浅利香津代 (八のおばさん/SP1、第5話、第22話にも出演)
大淵信之助/和崎俊哉
   お銀/竹井みどり
  久太郎/真田健一郎

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