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✓レーエンデ国物語/多崎礼

▽あらすじ
異なる世界、西ディコンセ大陸の聖イジョルニ帝国。
母を失った領主の娘・ユリアは、
結婚と淑やかさのみを求める親族から
逃げ出すように冒険の旅に出る。
呪われた地・レーエンデで出会ったのは、
琥珀の瞳を持つ寡黙な射手・トリスタン。
空を舞う泡虫、琥珀色に天に伸びる古代樹、
湖に建つ孤島城。
ユリアは、レーエンデに魅了され、
森の民と暮らし始める。
はじめての友達をつくり、はじめて仕事をし、
はじめての恋を経て、親族の駒でしかなかった少女は、
やがえ帰るべき場所を得た。
時を同じくして、建国の始祖の予言書が
争乱を引き起こす。
レーエンデを守るために、
ユリアは帝国の存在を揺るがす戦いの
渦中に足を踏み入れる。

▽印象に残った文章

生きるということは、
自分で自分の進むべき道を選ぶこと。
自分以外の人間にその答えを求めてはいけない。

「人間は誰でも役目を背負って生まれてくる。
どんな人間も生涯かけて成すべき仕事がある。
自分には何もない、何もなかったって言う者は、
まだそれを見つけていないか、
見つけたのに目を逸らしているかどちらかなのさ。」

「あんたは他人に求められる自分が
理想の自分だと思ってるみたいだけど、
理想の自分ってのは自分がなりたい自分のことをいうのさ。
それを履き違えちゃいけない。」

▽感想

ネタバレがあります。

大人の異世界ファンタジー。
ユリアやトリスタン達が冒険していく話!
なのかと思えば、この一冊で序章だという・・・。

序章なのに、この濃密さ。
国同士の政治は複雑で、うまくいかない。
ヘクトルとヴィクトルの関係や、
ユリアをめぐる周りの政治の動き、
読み始めは読み切れるか、
内容をきちんと理解できるか不安だったけど、
まったく心配なく読みやすかった。
世界観も頭の中にするするはいってきた。

外地の影響を受けない、自治の国レーエンデ。
自分たちの暮らしに誇りを持ち、
外の物資や知恵を入れていないのに
たくましく生きるさまがいいなと思った。

光る虫で明かりを作ったり、
古代樹の中で暮らしたり、
あいさつの左手をあげる仕草は
ハズレ物の印を見分けるためであったり、
夏至祭の赤と白の花の意味、特有の銀呪病、
全員がどこかで血が繋がっているので、
別の集落に出かけて血を薄くして子孫を残したり。
ファンタジーならではの独特の設定が
たくさんあって、胸が躍った。

トリスタンとヘクトルの友人とも思える
くだけた関係性が信頼し合っている感じがして良かったな。
ユリアがマルティンで暮らしているのが
素直に羨ましかった。
私もあんなのどかな暮らししてみたいな~。

ユリアとトリスタンの恋が
結局思いを告げるだけで終わってしまったのが・・・。
お互いを愛しているのに一緒にいれない、
離れたくないのに離れるしかない、
なんて苦しくて悲しい恋なんだと思った。

久しぶりに別の世界に行って冒険をしてきたような気分。
とても満足させられる一冊でした。

✓レーエンデ国物語/多崎礼/講談社

↳単行本

サンプルもありますので、ぜひ

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