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✓秘密にしていたこと

▽あらすじ
少女の死をきっかけに、家族が
それぞれ抱えていた秘密が語られ、
一家の深い闇が暴かれる。
死の真相を追うという
ミステリーの枠組みこそあれ、
そこで語られるのは
差別によって心を蝕まれた
家族の崩壊と再生の物語


▽感想
アジア系の大学教授の夫・ジェームズは
小さい頃からアジア系や日系が受ける
差別を経験して育ってきた。
誰とも関りをもたず
結婚するまで寂しい人生を送っていた。
そのせいもあり、娘に
友達を作れ周囲に溶け込めと
しきりに言ってきかすようになる。

医師を志すのを諦めた子育て育児に精を出す
妻のマリリン。
夫と同じ大学で出会い
成績も優秀で医師を目指すために
頑張っていたがその矢先に妊娠が分かる。
そこからは医師を目指すのを諦め
家庭に専念するようになる。
そして、その諦めは次第に
娘に向き、娘に必要以上の
勉学や知識を与えようとする。

長女のリディアは
父と母からの「愛」を
たくさん受け、それを
しっかり受け止め
次第に愛が重荷になっていく様が
描かれている。
自分はいったい何のために
勉強をするのか
リディアの学校にも残る
日系やアジア系への差別
両親に勉強なんかしたくない
私は学校に友達なんかいない
そんなこと言えるわけがない

長男のネイスと次女のハンナは
長女の陰に隠れてしまうような
生活を余儀なくされてしまっている。
どうして父と母は
3人いる子供全員に愛を注いで
あげることができなかったのだろう
そう思ってしまう。

長女のリディアの死から
物語は始まり、
家族はリディアという
存在がいなくなり
均衡が破れたかのように
どんどん崩壊していく。

しかしその崩壊の中で
父、母、長男、次女、そして長女の
本当の気持ちが物語が進むにつれて
明らかになる。

言わなくてもいい
後で言えばいい
それは次第に重なり
最後には秘密になってしまう。

それが招いたものが
長女の死だったのか

私はこの家族に限らず
言わなくてもいい
分かってくれるだろう
後で言えばいい
それが招く最悪のパターンを
読んでしまった気がする。

なんでも口にして
思いを伝えることが大切だと
気が付いた。

この家族の今後に
幸せがありますようにと
願ってたまらない。

秘密にしていたこと/セレステ・イング/アストラハウス

↳試し読みもありますので、ぜひ

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