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✓うしろむき夕食店/冬森灯

▽あらすじ
二階建てのレトロな洋館に、
ステンドグラスが嵌め込まれた観音開きの扉。
ドアの両側には二つずつの高い格子窓。
そこから見える満月のような照明と、
美味しそうな香りが漂ってきたら間違いなし。
そこが「うしろむき夕食店」だ。
“うしろむき“なんて名前だけど、
出てくる料理とお酒は絶品揃い。
きりりと白髪をまとめた女将の志満さんと、
不幸体質の希乃香さんが元気に迎えてくれる。
お店の名物は「料理おみくじ」。
今宵の食事も人生も
いろいろ迷ってしまうお客さんに、
意外な出会いを与えてくれると評判だが――。

▽印象に残った文章

目の前の仕事に、
ほんの少しでも入り込むと、
仕事自体が輝き出す。
そういう仕事には、
他の誰かを惹き付ける
魅力が宿るものだ。
それに感動した誰かの手で、
別のいい仕事が生まれ、
よろこびが連鎖していく。

なんにもないからこそ、
なんでも入るのではないかしら。

「作ってくれてありがとう。
働いてくれてありがとう。
つい見落としがちですけど、
金額の大小に関わらず、
お金のやりとりって
ありがとうを渡すことだと思うんです。」

「うまくいかなければ、
別の方法を探せばいいだけですよ。
おおらかに、試してみればいいんです。
楽しみを増やすつもりで、気長にね。」

光は与えられるものじゃない。
目を凝らして、自分で見つけるものだ。

「真っ暗闇に見える夜空でも、
見つめるうちに目が慣れて、
星の光が見えてくるでしょう。
それでも見えなかったら、
後ろを振り向いてみるんです。
これまでやってこられたこと、
できたことをね。
忘れてるだけで、たくさんあるはず。」

「生きるのは変化の連続、
楽な事ばかりではないでしょう。
だからこそ、その一日がどんな一日であっても、
生き抜いた自分に、言葉をかけてあげたいじゃないの。
今日もゆたかに生きましたって。
そうやってゆたかに生き抜いた日々が積み重なれば、
いつしかうしろを振り向いたときに、
自分にしか歩けなかったゆたかな人生が、見えるものですよ。」

「人生に失敗なんてあるものですか。
そのときどきでうまくいかないことがあっても、
それは失敗じゃなく、めぐりあわせです。
仮にうまくいかないのなら、
その場所は、うまく行くための経由地なの。
時間が経てば、それも必要な経験だったと思えます。」

▽感想
うしろむき夕食店という店名は、
マイナスな言葉ではなかった。
今まで自分が歩いてきた道を、
“ふりかえる“ことによって、
自分だけが歩んできた道があり、
それこそが今後を生きる道しるべとなる。

振り返ることは悪い事ではない。
むしろ大切なのだ。
志満さんが投げかけてくれる言葉が
どれも背筋が伸びる思いのする言葉ばかり。

お腹がすくようなご飯も最高でした。
マイナスの思いをゼロにしてくれる、
そして次の1へ繋ぐ言葉をくれる
でも、プラスにするのは自分次第。
それを思い出せる素敵な本でした。


✓うしろむき夕食店/冬森灯/ポプラ社

↳サンプルもありますので、ぜひ

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