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青ざめていたころ(小説)
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まだ震災からそれほど時間の経っていないころ。派遣先での仕事がひと段落ついて、ようやく正社員になれそうな話が持ち上がったり、結局つぶれたりした。そんな上司とのやりとりはもう五回目で、私は呆れて、出向先での仕事をしばしば雑にこなすようになっていた。毎朝、スーツを見るのもいやになっていたくらいだ。IT関係の仕事というものは、上の持ってきた企画とそれを実行するための説明書の束、それから確実に実
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まだ震災からそれほど時間の経っていないころ。派遣先での仕事がひと段落ついて、ようやく正社員になれそうな話が持ち上がったり、結局つぶれたりした。そんな上司とのやりとりはもう五回目で、私は呆れて、出向先での仕事をしばしば雑にこなすようになっていた。毎朝、スーツを見るのもいやになっていたくらいだ。IT関係の仕事というものは、上の持ってきた企画とそれを実行するための説明書の束、それから確実に実