ちょっと冒険してヴィンテージマーケットへ
8月最後の月曜日はサマーバンクホリデー。祝日が少ない英国での貴重な3連休だった。特にどこかへ出かけるでもなく、家で自分の時間を過ごした。私にとっての大切な時間。
以前見かけたポスターが気になっていた。ヴィンテージマーケットのお知らせ。
この3連休の最終日だ。ヴィンテージやアンティークマーケットと聞くと心が躍る。家から歩いてすぐの公園で開催されるのだから、是非行きたい。
しかし、私は迷っていた。この日は夫は家でやらなければならない案件が入っており、行くなら私一人で行かなければいけない。一人で出かけることに抵抗があるわけではない。けれど、そこには躊躇してしまう理由があった。果たして、そこまで一人で無事に辿り着けるだろうか。私は大の方向音痴なのである。
この広大な公園は夫と一緒に何度も散歩をしているし、一人でも公園を通って買い物に行っている。ただし、私一人で歩く場所は限られていた。あそこの道を通れば到着するはず、頭の中でシミュレーションをする。よし、問題なさそうだ。昼食を食べる前に、ささっと行ってこよう。私は意気揚々と公園に向かった。
まず最初の分かれ道。ここを左側に行き、そこからあそこの道を通れば辿り着くことはわかっていた。しかし、私はあえて右側を選んだのだった。こちらからも行ったことがあるはずだ。なぜか気持ちが大きくなって、冒険したくなっていた。清々しい休日の時間、もっと森の中を歩いてみたい。自信満々で道を進む。
そろそろ左に曲がった方が良いだろうと思った時、なんとそこの道は塞がれていた。
あれ? 通れないのであれば仕方がない。
そのまま真っ直ぐ進んでみよう。
すると、表示を確認しながら不安そうにしている夫婦に出会った。
「駅へ出る道はどちらかしら?」
マダムが訪ねてきた。それはちょうど私が通ってきた道である。
「こっちの方向ですよ」
私は得意満面の笑顔で答えた。なんだ、みんなやっぱり道に迷っているのではないか。私だけじゃない。変に勇気が湧いた私は、そのまま進んだ。
しかし、段々不安になってきた。ここは一体どこだろう?
すると、看板を発見。そこには、Ancient woodland と書かれている
つまり太古の森ということか。もしや、それって道が整えられていない森が広がっているということなのだろうか? やってしまった、やっぱり迷った。
前方には三方向に分かれた道が広がっている。さて、どの道を選べば良いのだろうか。
不安に襲われながらも、なぜかちょっと強気な自分がいた。大丈夫、必ず着く。野生の勘を頼りに右側の道を進んだ。古代にタイムスリップをしたかのような気持ちに襲われる。まさかこんなところで熊に遭遇することもないだろうし、問題ない。
根拠のない大丈夫を心の中で呟きながら歩き続ける。
すると、ほら、もう安心。道がひらけた。遠くにマーケットが行われているハウスが見えた。よかった。森の中で迷った時は、まずは自信を失わないことが大事。(だと思った。)
さて、いよいよマーケットに到着。想像していた以上の数のストールが並び、賑わっている。
まずは端から順番に見ていこう。洋服、雑貨、陶器に家具。植物まである。目をギラギラさせながら端まで到達。さて、今度は気になったものをきちんと吟味しながらもう一度歩こう。
このビンテージ感漂う赤いワンピースにも惹かれる。
この昔のお城のような模型も面白い。
この大皿にパスタやサラダを載せたら美味しいかも。
英国のアンティークの雰囲気漂うティーカップ、欲しかったんだよな。
ニヤニヤしながらウロウロ歩き回る。
よし、決めた! これにしよう!
久しぶりに現金で支払いを済ませ、カバンにしまう。
建物の裏側に回ってみると、フードマーケットも並んでいた。美味しそうな匂いがしてくる。つられてお腹がすいてきた。家に帰ってランチにしよう。
帰り道はもう大丈夫。あそこを抜ければいつもの道。空腹時には冒険はせず、安全な道を歩いて早く帰ろう。
さて、私が連れてきたもの。それはこちら。
ストリングホルダーになっている陶器のネコさんの顔。後ろに紐を入れて、口元から紐を出し、さらにリボンのところに紐を通して壁にかける。ふと紐が必要になることって確かにある。そしてこんな可愛いところに紐を常備できるだなんて、なんと秀逸な雑貨だろう。
私の冒険の戦利品。ネコさんによくやった、と褒められている気持ちになった。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。