2024ベストドラマ 『ライオンの隠れ家』〜帰る場所〜『海に眠るダイヤモンド』〜損得勘定のない一途な愛〜
2024年ドラマはTBS10月クールが無双していた年だったと思う。
ということで、年の瀬のまとめとして、『ライオンの隠れ家』『海に眠るダイヤモンド』の2作品をここに記したい。
1ライオンの隠れ家
同クールのTBS日曜劇場に『海に眠るダイヤモンド』があったため、当初はあまり期待していなかった本作。実際に1話を見て、あまりしっくり来ず、見るのを辞めてしまったのだが、あまりにSNSでの評判が高いので、Netflixで見始めたら…、「え!?めっちゃ面白い何これ?」と放送していた8話まで一気に視聴してしまった。洸人、みっくん、ライオンと登場するキャラクターが皆愛おしく、また、わかりやすく狙った名台詞というものはないけれど、ふとした台詞やシーンに意味を持たせるのが上手い…。シーンが重なれば重なるほど、じわじわと心が温まり、ほろりと涙が出てしまう。そんな令和の新しいホームドラマだったと思う。
1-1 家族が「依存する場所」から「帰る場所」へ
『ライオンの隠れ家』は止まっていた家族の時間が動き出す、「変化」に焦点を当てた作品だった。
幼い頃から自閉スペクトラム症の弟みっくんを持つ洸人は、弟の面倒を見るべく、おそらく小さな”我慢”を積み重ねてきた人生だったのだろう。
自分の人生を生きようと大学に行くも、両親が死亡し、大学を中退して、実家のみっくんの所に帰ることになった洸人。
そんな洸人の積み重なった苦しみが爆発してしまったのは、一度きり。バスの中にみっくんを一人置き去りにしたこと。このシーンは洸人の中にある「兄としてみっくんの面倒を見なければという責任感」と「もう普通の大学生として自由になりたい」という感情の葛藤が垣間見えた。
それでも、洸人はみっくんが大好きだし、大切な弟なのだ。それ故に、ずっとみっくんと2人、みっくんのために、あの一軒家で何も変わらない日々を過ごしていた。そして、いつしか、みっくんのために自分を犠牲にしていると思っていた行動が、「自分の生きる意味を見出すため」に変わってゆく。
ライオンの父である橘祥吾と対峙して、そのことに気づき始めた洸人。
「良いお兄ちゃん」でいなければならないと奮闘していたつもりだったのに、それが実は自己満足で自分が生きるためだったのではないか…。その疑念を抱き始めた洸人は防波堤で初めてみっくんの前で泣き崩れる。
この「ごめん」に込められた意味は、ライオンを連れて帰ってこれなかったことだけでなく、自分がしてきたことが間違いだったのではないかという意味を込めた「ごめん」だったのだろう。
しかし、ライオンを助ける過程で、洸人自身、自分の感情に向き合い、答えを出し始める。
洸人も気づかないほうが楽だった。知らないふりをして蓋をした方が楽だった。それでも、本当に家族のことを思うのなら、目を背けるわけないはいかない。
そして実際に、愛生がライオンと家に帰ってきたのと同時に、愛生がみっくんの面倒を見ることが増え、洸人は急に暇な時間ができてしまう。でも、みっくんと毎日同じルーティンで生きていた洸人はやることがない。ぽっかり穴が空いたような感覚になる洸人。
そんな洸人は、初めてみっくんと切り離して、自分のための決断をする。それは、一度は中退してしまった大学に通って勉強し直すことだった。
洸人は家族という安心できる”帰る場所”があることを実感したからこそ、”旅立つ”という決断をできたのだ。それはみっくんも同じ。この先、一人になって、それぞれの人生を生きていく。それでも、その決断ができるのは、「家族」という帰る場所があるから。同じプライドの仲間だから。
2海に眠るダイヤモンド
待ちに待った野木脚本!!塚原監督!!新井P!!作品。どうやら、端島が舞台の日曜劇場と聞くも、全くイメージできず…。しかし、信頼の野木脚本なので面白いだろうと信じて視聴!最初は、あまりハマっていなかったのだが、3話あたりから物語に波が生まれてきて、最終的には「ねっこ」が流れる度に大号泣。はい!めっちゃ最高でした!!アンナチュラルやMIU404とは、また違う角度で社会派エンタメを生み出してきたなと…。
2-1損得勘定のない愛
この作品は、「人を純粋にまっすぐ愛することの尊さ」をテーマにしていたと思う。ただ目の前の人と一緒に添い遂げたいと、そう思えるような端島の人々の恋愛を描くことで、ホストの色恋営業、マッチングアプリ、レンタル彼氏彼女…、と擬似的に恋愛をすることや損得やコスパで恋愛をすることが多くなった現代に届けたい思いがあったのだろう。
短絡的で刹那的にどこか空虚な日々を過ごすことが増えた現代。
私は、石炭(ダイヤモンド)が出ることを願って一生懸命に夢中に、1日1日を過ごしていた端島の人々の姿は輝いて見えて、どこか羨ましくもあった。あんな風に一生懸命に一途に生きてみたいと… 。
ダイヤモンドのような日々、ダイヤモンドのようにかけがえのない人との繋がりがあったからこそ、いづみさん(朝子)は、悲しみも乗り越えて、今を力強く生きていけたのだ。たとえ、もう、あのダイヤモンドのような日々が戻らないとしても。
きっと玲央は、鉄平のノートを読んで「これからの人生を生きていく活力になるような、そんなダイヤモンドに出会いたい。この現代社会で。」と思ったのだろうし、同時に、今を生きる若者にそのような思いを抱いてほしいというメッセージがこの作品には込められていたのだろう。
また、本作は端島を舞台にしているゆえ、原爆や戦争の残した罪や苦しみを考えさせられる場面が多くあった。特に、百合子周りの台詞やシーンはとても真正面から切り込んだものだった。
大人たちが勝手に始めた戦争は、力なき子供たちを巻き込み、多くの禍根を残した。戦争が終わってもなお、それに苦しめられた人が多くいる。
それでも…、
一緒に、一生の十字架を背負ってくれるような、まっすぐな愛情に百合子は救われた。十字架は消えないかもしれない、でも、それを少しでも軽くすることはできる。
騙し騙し合い、「愛」を売り買いし、ホストの売掛のように、人を絶望に陥れるようなものとは反対に、損得勘定のない純粋な愛情は、誰かを救うことのできる大きな力さえも持っている。だから、現代社会においても、無くなってはならないのだ。いや、無くなってほしくない。この作品からそんな思いを強く感じた。
2024年中に公開しようと思ったのに間に合いませんでした…。
2024年も沢山のテレビドラマたちに彩られました!年々見る本数は減ってますが、これからも素敵なドラマに出会ったら、ブログを書いていきます!2025年もよろしくお願いします!!