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ホームレスは自由な生き方?!息苦しい社会を考えてみる。
街を歩いているとホームレスの人たちを見かけることがあります。
私たちは、どんな人がホームレスになるのかとちょっと考えても、きっと何らかの理由で職業も住むところもなくしたのかなと思い、寒い日はどうして暮らしているのだろうと少し考えるぐらいで、深くは考えないで通り過ぎてしまうでしょう。
あるいは街の景観にそぐわないものとして、見ないようにするかもしれません。
そんなホームレスの暮らしについて、ホームレス自身が書いた本があるので紹介します。
「ホームレスでいること」 いちむらみさこ著 創元社
著者のいちむらみさこさんは2003年から東京の真ん中にある公園のブルーテント村で生活しています。
いちむらさんは失業して部屋を追い出されて家を亡くし、しかたなく公園で野宿するようになったのではありません。
それならなぜホームレスに?
ある日友人がここにテントをたてるという話を聞いて、いったいどんな場所かなと思って公園を訪ねてみたのです。
そして、ホームレスの人たちが自分のテントや小屋で静かでゆったりとした丁寧な暮らしを営んでいるのを見て、自分も公園にテントを張って暮らすことにしたのです。
いちむらさんは、それまでは普通に働いて家賃を払って生活していました。
しかし、家賃は高く、そのためには食費を節約して、毎日、必死に働かなくてはなりませんでした。
生きていくためには、決められた時間働いて、賃金を得なくてはなりません。
しかも、その賃労働の社会では、競争をあおられ、いつも「上」を目指していくこと、たえず成長していくことが求められています。
競争社会を勝ち抜いて、高い報酬をえて、いい家に住み、高い車に乗って、高価なものを買うことが「成功」なのです。
性差別の解消も女性の社会進出もそういった競争を勝ち抜くことでしか得られないと語られているのです。
「働くことで社会に貢献しなさい。」と言われながら、実際は他人を蹴落とすことで優劣をつけるようなシステムに組み込まれてしまっていました。
そんな社会のシステムに嫌気が差していたいちむらさん。
でもそこから逃れるすべはなく、生きていくためには我慢してそのシステムの中で働かなくてはならないと思っていたのです。
でも働けば働くほど、自尊心は傷つけられ、他人に対しても自分に対しても不信感が募って自暴自棄になり絶望していく毎日。
そんな時に、ホームレスのテント村に出会ったのでした。
テント村では、ホームレスの人たちが、街で大量に廃棄される食べ物や不用品を集めてきてそれらを分け合いさまざまなアイデアで暮らしを豊かにしていました。
お金を媒介しない物々交換の世界です。
いちむらさんも、テント村で、物々交換カフェ「エノアール」や「絵を描く会」、「女性のためのティーパーティ」やホームレス女性の集まり「ノラ」などを企画してテント村内外の人たちとのネットワークを広げています。
そこには、何でも商品化して、商品を媒介にした人間関係しかない資本主義社会とは違う世界が広がっているのです。
テント村では物だけではなく、さまざまな力を分け合うこともあります。
ホームレスの中には建築現場で働いていた人、ITリテラシーが高くインターネットを使いこなす人などいろいろな能力を持った人がいます。
一方で、それぞれができないこともたくさんあります。
しかし、できないことを介して誰かとつながることもあり、いろいろとできない人ほど孤立しにくいのです。
といっても、ホームレス生活はいいことばかりではありません。
女性の場合は性暴力の危険があります。
誰彼となくホームレスを襲撃してくる人がいます。
また、行政の関係者は公園のホームレスをできるだけ減らしたくて、絶えず生活保護やシェルターの利用を勧めてきます。
最悪なのは公園の整備と称して、今ある公園を閉鎖して、ホームレスの入り込めないような公園に改築してしまいます。
公園に限らずホームレスの野宿している場所は常に「美化」の対象とされホームレスは追い出されます。
そんな困難な状況で、それでもなぜホームレスを続けるのでしょうか?
自分の身体も精神も誰からも管理されず自由でいたいと思うのでしょう。
いちむらさんはこう述べます。
外の世界にはさまざまな規則や価値観の縛りがあります。「標準」「普通」であれという圧力もあります。
そのようなしがらみから抜け出て自由に生きることで可能性が広がり大事なものを手放さなくてもいいように思えるのです。
そして、「ホーム」をでて、ほかの「ホームレス」たちとつながったとき、お互いに自由を実現していけるかもしれないのです。
そして、いちむらさんは問いかけます。
「生きることのなかで価値を決めるのは自分でありたい、生きさせられるなんて、もうこりごりだと思いませんか?」
昔から、土地や家を持たず、路上や河原など空いている場所に暮らす人はたくさんいました。そこから歌舞伎などの文化も生まれたのです。
いつの時代でも社会の外側にいる「アウトロー」の人はいるのです。
彼らは居場所をみつけてこれからも生きていくでしょうし、そんな彼らから見える社会から私たちは学ぶべきかもしれません。
この本、本当におすすめです!❣️
執筆者、ゆこりん