【図解】事業再構築補助金 「新築」の必要性の判断事例
事業再構築補助金の第6回公募から、建物の「新築」について制限がかかるようになりました。専門家の間では、「新築は認められるのか、問題」として話題になっています。
「新築」の建物を対象経費にする場合は、「建物を新築することが補助事業の実施に『真に必要不可欠』であることを説明する」2ページの説明書類を追加で作成・提出することになっています。
『真に必要不可欠』とは認められない場合は、補助金の申請が採択されても、補助対象外になる、つまり補助金が出ない、という恐ろしい結末が待っています。しかも、それがわかるのは1年以上先のこと。。。
6月17日に【建物新築の必要性における判断事例について】公式HPで文書が公開され、これがまた難解な内容で、解釈が難しい。今回、この難解な文章を図解して分析してみました。
関係しない人には、どうでもいい内容ですが、図解・分析プロセスの参考になるかも、と思っています。
公開された【建物新築の必要性における判断事例について】
公式HPから引用です。元はPDFファイルですが、1枚なので、ここでは画像で。
https://jigyou-saikouchiku.go.jp/pdf/tatemono_shinchiku_kahi.pdf
「新築」の必要性を認めるケースについて、図解してみた
「新築」の必要性を認めるケース①
原文(↑)のままだと、わかったような、わからないような。
論理飛躍しているし、こんなので、いいの? というのが私の率直な感想
上記の文章を、私が図解したのがこちら(↓)
そもそも、前提条件が唐突
前提条件は事業計画書の中で論理的に説明できているのか?
代替手段が他にないのか、MECEに説明していない
根拠 → 結論 が強引(因果関係が不明確、そうとも言えない要素あり)
というような反論が出そうなので、スキだらけの説明です。
このくらいの論理飛躍は許されるということなのか、謎なままです。
図解で何をやっているかと言うと、
まず、文章を箇条書きに分解。それぞれの意図を読み解きます。
登場する人、モノを洗い出し、その関係を図解します。
文章中の重要な部分の因果関係「○○だから□□」の部分も図解に加えます。
結論に至る要因(因果関係)が明確なのか、全体を俯瞰して確認します。
こうしてみると、図解の方は前提知識がないと、わからないですね。たぶん。
元の文章と図解の対応付けが必要か。シンプルな表現にするのが難しそうです。
素朴な感想でも、お寄せいただけると、勉強になります!
「新築」の必要性を認めるケース②
ケース②は山間部のレストランです。原文は以下(↓)
これも同様に、図解してみます。
ケース②では、前提条件に追加条件も出して、強引に結論を補強しています。
畑と周辺の物件情報、距離などは、どうやって説明するんでしょうか?
また、その説明の妥当性を判断する人は、誰なのか? 謎です。
Twitterでもつぶやいてみたら、反応が多めでした。
新築の必要性が“認められない”ケース
必要性が認められないケースも簡単に確認しておきましょう。こちらは図解なしです。
必要性が認められないケース①
温泉旅館を営む事業者がワーケーション需要に応える新事業を行うため、温泉客向けの既存の宿泊設備では対応できないため、(前提条件)
ワーケーション向けの離れの新築を検討。(新築の主張)
しかし、既存事業がコロナによる需要減少で客室の稼働率が下がっているため、既存事業を縮小し、空いている客室を改修することでワーケーション需要を受け入れる態勢を整えることができるため、(代替手段の存在)
ワーケーション向けの宿泊施設を新築する必要はない。(主張の否定)
なんともまあ、既存施設の改修という選択肢がありながら、新築を主張するという、ずさんな主張。検討するまでもない事例です。
必要性が認められないケース②
本社建物と工場を別にする金属製品製造事業者が、新たに金属製品販売業に進出するため、人員を増強して新たな営業部門を設置。(前提条件)
老朽化した本社建物が手狭になるため、既存の本社建物を取り壊して建て替えることを検討。(新築の主張)
しかし、新たな営業部門用のオフィススペースは、既存の貸しオフィスの賃貸やリモートワークで代替可能であり、(代替手段の存在)
本社建物の老朽化は補助事業と無関係であるため、本社建物の建て替えは必要ない。(主張の否定)
主張の論理展開はこんな感じです(↓)
新規事業のために → 人員を増強 → オフィスが手狭になる → 本社を立て替えたい!
対する否定の論理展開はこんな感じです(↓)
オフィス増設の代替手段はある + 本社の老朽化は無関係 → 必要なし
オフィスには厳しいみたいですね。これが工場だったら、イケるのか?
強引な展開ではありますが、賃貸するより建て替えの方が安かったら、どうなるんだろう?と謎は深まります。
既存事業にも使うオフィスの建て替え、移転、という要素が含まれると、「新築」は難しそうです。
「新築」が認めらるための、成功の方程式は?
話を戻して、事業再構築補助金の「新築」が認めらるケースには、成功の方程式があるのか? 考えてみます。
【前提条件】建物に求められる条件を事業計画から引用して並べる
【代替手段の否定】既存の建物(自社、他社)を比較検討
【主張の強化】経済効率性、必要不可欠などで結論づける
という三段論法が有効なようです。
そんな単純な話でもなさそうですが。
図解から読めたのは、ここまでです。
他に解釈があったら、教えてください!
ダメ押しの注意点(2つ) ※事業再構築補助金の関係者向け
今回の公開文書の最後に、ダメ押しの注記が。上記はあくまでも参考事例、個々を総合的に判断、と結局、判断基準はあいまいなままです。
さらに、コールセンターに確認すると、「新築」が認められるかどうかは、交付決定時ではなく、実績報告(実地調査を含む)の完了時点、とのこと。1年以上先にならないと、確定しない。
新築がどうしても必要な場合は、補助金が出ないことも想定しながら、ベストを尽くして進めましょう!
新築がどうしても必要な場合は、補助金なしも覚悟の上で、やるしかない。
採択されても、新築の可否はわからない。
1年以上先の実績報告が終わらないと、新築の必要性は確定しない。
となれば、先行着手して、進めるのが吉ですね。
今回は、仕事の話なので、ついムキになって、長くなってしまいました。
図解プロセスが参考になるかな、と思って書いてみましたが、
関係しない人にとっては、説明不足な気がしています。反省。
仕事の説明で、色々工夫している一例として、参考になれば嬉しいです。
こういうややこしい話を、シンプルに説明したくなる性格なのでした。
では、また~
この記事を書いたのは、
もうそうビズ企画 代表 川原茂樹
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