[読書感想文] 密やかな結晶 を紹介したい
はじめに
ここ最近地味に忘れることが多くなって、そろそろやばいかもと思っています。どうももーりです。
そのため、一時期switchの脳トレにハマっていた時期があるのですが、2022年の後半のほうは全くできておらずで、2023年は少し頑張っていきたいかなと思っています。
記憶力に関する話というと、私は陽気なギャングが地球を回すで、演説の達人の響野さんが銀行襲撃時に演説していたことが印象に残っています。
(陽気なギャングが地球を回すは伊坂幸太郎作品の中でも圧倒的なエンタメにふりきった小説です。まじで面白いのでお勧めです)
ちなみに記憶力でgoogle検索すると下記のサイトが出ました。
書いている先生の評判も調べましたが、問題なさそうな感じです。ちなみに、医者の経歴を調べるようになったのは、内海聡先生のおかげです。とりあえず、信者から怪しげなものを売って稼いでなさそうです。
(今最も熱い医者、内海聡氏です。この人の治療を受けると何が起きるのかどなたか検証お願いします。私は嫌です)
さて、記憶の話になりますが、今回はそんな記憶が消失する島を描いた小説
「密やかな結晶」について紹介させていただきます。
密やかな結晶
著者:小川洋子
私が知っている有名な作品としては「博士が愛した数式¥」でしょうか。未読ですが、確か映画化されていた覚えがありますj
出版:1994年
私の誕生年もその近くなので謎の親近感を覚えました。
2020年にブッカー国際賞の最終候補に選ばれる程度には世界的に評価を得ている作品です
読むきっかけとしては、spotifyで視聴しているポッドキャスト、「文学ラジオ空飛び猫たち」で紹介されていたためです。基本的に海外文学を紹介する(そして、それらはkindle化されていない)ことが大半ですが、珍しく、日本の小説を紹介していたので、読んでみることにしました。
作品の紹介の仕方含めて色々話すのがうまいなぁという印象です。個人的に村上春樹の海辺のカフカ回よかったです。
あと、全然関係ないですがお寺ジオという兄弟のお坊さんが語るラジオも聞いていますが、これも面白いです
あらすじ
上のあらすじで触れている消滅に関して補足させてください。
消滅するのは、モノであり、それは、レモンとか、お茶など概念的なものが失われて行きます。朝起きると、島の人間には、何かが忘れたという感覚のみが残るだけで、それらのことに思いをはせることができなくなります。そして、何が失われたかを会話の中で判断して、それらを不要なものとして、焼き払います。そうして、島から色々なものが消えていきます
登場人物
私(主人公): 小説家。
母親: 記憶を失わない特異体質で、私に消失したものを教えてあげていた。秘密警察に捕まって死亡
おじいさん: 船の船長。エンジンという概念が消失し、動かなくなった船に住んでいた。私と生活を共にする
R氏:私(小説家)の編集者。記憶を失わない特異体質で、私とおじいさんに匿ってもらう
秘密警察: 記憶を失わない特異体質を狩る組織。なぜそうするのか不明
私の描く小説と、島から、色々な概念が失われていく様子を交互に、リンクしたかのようにストーリーが進みます。先にオチだけ書いておくと、救いがある感じではないです。私がめちゃ活躍してすべての消失を食い止めるとかそんな話ではありません。静かに、モノガタリが進んで静かに終わる。そんな小説です。
以後ネタバレ全開で進めていきます。
感想というかお勧めポイント
小説のおすすめのやり方ってどうするべきなのかわからないのですが、自分の中で何が良かったのか、書いてみたいと思います
描かれる消滅の描写が生々しい
消滅という概念がまさにそこに起きているかのような描写
消失を受け入れる社会と主人公もそれに巻き込まれるため、序盤と終盤では別人のようなものへ変貌する様を読まされる
これがまじで生々しいです。お前変わっちまったなって気分になります。知り合いがツボとか宗教を進めらた気分です。
記憶を失わないR氏との対比で、記憶を失うことの様を見せつけられる
私事ですが、周囲の友人が次々と結婚とか婚約をしています。R氏もこんな自分以外が変わっていくものを見せつけられていたのでしょうか。
不思議な世界に迷い込んだ気分になる
個人的に一番感じたのが、カレンダーという概念が消失したことで、季節も止まったシーン
具体→抽象が失われていくのはすごくよかった
抽象的なものを失わせるために、具体から入るというのは色々なところで使われているが、それがすごく説得力がある
島という密閉空間で展開するストーリー
小説中に島の外に関しての描写は一切なく、それもまた不気味というか不思議な世界に感じさせます。
秘密警察から逃げるために、島の外に逃げる人々が一瞬登場しますがすでに島の外のことをへの消失が完了しているのか、逃げることに興味を持たない主人公たちが描かれているのが印象的でした。
作中内の小説とリンクしたストーリー
作中内の小説の主人公も、声を奪われ、それを受け入れてしまう展開になります。声の消失と作中の消失がリンクしたように展開されます。作中小説内で「ここにふさわしいものへ退化し、変形しているのです」という言葉がありますが、島の住人もまた、島の消失にふさわしいものへ退化している状態になっていきます。
主人公も島の住人であるため、島にふさわしいものへ変形し、そして退化してしまいます。それを見届けるR氏という対比がきれいに描かれているように思いました。
読んで語れば玄人感が出せる
死ぬほど俗な話になりますが、国際的な賞の最終候補に残ったものを読んだというか言っていればそれっぽい雰囲気に持っていけます。こいつ読書好きやなって相手に印象を与えることができます。
ストーリーの消失の描写含めてきれいなのでまじで読むことをお勧めします
昔読んだラノベを思い出した
この小説の世界観も同じく、喪失病という病によって世界で旅に出た少年、少女のお話しです。こちらは明確に人が消失するという点が異なっていますが、大筋として世界が崩壊に向かっている中での、少年少女が旅をしながら日記に記録を残す様子が描かれています。
不思議と共通するのが、消失の中でも小説、日記と個人が生きた証を残そうとすること、何かを残そうとする人の原初の本能ともいえるのか、そういったものが描かれています。
消失に対して何かを残すというのはこれも対比構造ですし、やはりモノガタリとして美しさがあると思っています。
こっちは電子化もされておらず、今から読もうと思うと、紙本を手に入れる必要があるため少し読むためのハードルが高いですが、お勧めです。
全然関係ないですが、作者がtwitterやっているのを発見して笑顔になりました
昔ニコニコ動画とかで投稿していた人がtwitterやってて元気にしているのを見てニコニコしてしまうのはなんでなんだろうか。
微妙ポイントあるい個人的に合わなかったところ
エンディングというかオチに関して
ネタバレに踏み込みますが、最終的には社会システムの崩壊と自己の消失が描かれます。その中でR氏のみが、すべての残して生存します。
身体の喪失、そして声の喪失となり、最終的にモノガタリが終わるのですが、身体の消失が始まってから本編が終わるまでテンポが良すぎて、もう終わるん?ってなってしまった
当然、体の消失をきっかけに自我というものが消えていくのはわかるし、その結果描写が淡白になるというのも納得しています。
それでも、この退廃的な世界観にもう少し浸りたいというのは読者という立場の私のエゴかもしれません。
すべては明かされない(特に秘密警察周り)
秘密警察の目的などは一切明かされません。あくまで一人称で描かれてるためにすべてが明かされるわけではありません。
こういった排他主義であったり、捨てるという思想が、現代風刺ともとらえられるかもしれませんが、それらをきれいに考えてつなげてしまうと、陰謀論に一歩踏み込むことになりかねないかなぁと
一般的に陰謀論は、きれいに理屈がつながっているように見えて謎が解けた気分にさせるので都合がよくできています
都合のよい舞台装置とも考えてしまう
より退廃的な社会を描くために必要ではあるのですが、本来、記憶を残した人間がいても社会は成り立つというか、むしろ便利な魔法としてとらえることができずはずなのですが、そうはしていないのが気になりました
消失したものを見ると心がざわつくという描写があるため、異物を取り除くという器官のような働きを描いている?
そう考えると納得か?
感想を書きながら納得をするなと思われるかもしれない。。。
まとめ
崩壊に向かうまでの流れがきれいに描かれている
短い、電子化されているなどから読みやすい小説だと思います。
自分にはちゃんと刺さったので、次は博士の愛した数式など小川洋子氏の作品を読みたいと思った
これ新年から書いて、投稿するの5日ってまじ?
ということで、今年はnoteとかいろいろアウトプットを出していきたいと思うのでよろしくお願いします。
ちなみに、トップの画像ですが、これは新装版の文庫本の画像を使っています。ちなみに、前のやつは表紙からして不気味さがあります。一言でいってやばい
次は、騎士団長殺しの感想でお会いできればと思います。
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