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息子が包んだ餃子をそのまんま焼いた。


このところの休日は、家にいることが多い。
行きたいところもたくさんあるが、自宅での家族との団欒の時間も同じくらい必要だ。

妻が美容室に行っている間、息子と娘を連れてホームセンターへ行った。リビングに写真を飾るためのDIYをしよう、ありきたりな額ではなく、どんなものを作るか考えるために店頭で悩むために足を運んだ。

作りたいものややりたい作業のイメージだけがあるとき、ホームセンターへ足を運ぶと思いつくことがある。

とはいえ、真っ先に向かった先はおもちゃコーナーだ。口を開けばおもちゃが欲しい。と出てくる息子はワレサキにおもちゃコーナーへ行く。どんな店にいっても一度おもちゃが目に入ると真っ直ぐそこへ向かう。

今回は1台のトミカを買った。ゴミ収集車だ。働く車が好きな息子は持っていないものを見つけると目を輝かせる。一台一台の値段は高くなく、まんまとその戦法にやられている親御さんは多いだろう。また、やられているように装っているパターンもあるだろう。

妻の美容室が終わるまで、まだ時間があったので一度自宅に帰ることにした。自宅に着く頃に寝そうになっている息子を一目見て、一旦は車庫に入れたクルマを踵を返すように発進させた。団地の周りを大きく回って改めて車庫にクルマをとめる。

ドアを開けたら起きるかな。起きないかな。この間は本を読む時間になるな。と考えて本を読んでいると、同居する父がクルマの前を歩くのが見えた。

寝ている息子と起きた娘を父母に預け、連絡を受けた妻を迎えに行く。美容室のほど近くにあるスコーン屋にいけたらしく、嬉しそうにしている。昼時を越していたので同じく近くにあるパン屋に立ち寄って、めいめいのパンを拵える。

私が選んだジェノベーゼソースが塗られたフランスパンのPOPには、おすすめの食べ方が書いてあった。みるに、ベーコンとレタスとトマトを挟むと美味しいサンドができますよと書いてあるではないか。是非ともその状態にして販売して欲しい。と私は思った。

自宅に着くと、コーヒーのハンドドリップを始めた妻にコーヒーを淹れてもらいパンを食べる。淹れている途中に息子がやりたいといって、2人で一緒になって淹れてくれた。湯の温度や抽出量、タイミングによらず、2人が淹れてくれたというだけで、私は嬉しいなと思ってそれを飲んだ。事実、美味しかった。

買ってくれていたスコーンは、しっとりとしていて好みの食感だった。誰かと会うときの手土産にちょうどいいな。という発見をした。

午後の2時ごろになって、庭で焼き芋をしようといって、鉄製のかまどを用意した。母が結婚式の引き出物として頼んだらしいそれは、わが家の冬を毎年数回だけ演出するアイテムだ。

そうこうしていると、家の前に停まるクルマが一台、近所に住む幼馴染がたまたま通ったみたいだ。手にはドンキで買った芋を持っているではないか。
せっかくなのでと一緒に芋を焼くことになった。親戚からもらった芋に追加して、母が近所のスーパーで芋を買ってきた。

新聞でくるみ、水にヒタヒタに浸してアルミホイルで包む。かまどの天板にそれを置いて、薪を焚べる。普段インドアな彼もまた、火を目の前に薪を焚べている。

子供達が火のそばをヒラヒラと通過したり、妻たちに火の番をしてもらっている間に息子たちと団地内を散歩したりしていると、焼き芋ができていた。

遊び回っていた私と幼馴染の息子2人は、黄色の芋を口いっぱいに頬張り、庭を駆けている。

束の間の時間、焼き芋に舌鼓を打ち、保育園の話や子育ての話、地主の話をして、彼らと解散した。
幼馴染の子の面倒を見ていた母が、その子に向かって幼馴染の名前を呼んでいるのが可笑しかった。呼び違えた母もまた笑みを浮かべている。

息子が幼馴染の子に泣かされていた。泣いている息子と指差して微笑む彼の子をみて、俺たちの子だな。と皆で笑い、それを悔しがっている私もまた父の子だな。と思った。

焚き火が終わった頃、家の中では、妻と息子が餃子を作っていた。銀のボウルに入れた餡をすくい、皮に置く。その縁を濡れた人差し指でなぞり、皮を包む。

妻が綺麗に餃子を包む隣で、息子が真剣な表情で餃子を包んでいる。同じように人差し指でなぞり、円状の皮を半円状にたたんでいた。

息子が包んだ餃子をそのままの形で焼く妻をみて、いい母だなと思った。
とるに足りない日常も細部をみてみれば、美しい出来事があるものだな。と思って、この日の記を締める。

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松田佳之
山のため、子のため、写真のために使わせていただきます。いつかお会いできれば嬉しいです。

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