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ユズ子(扇町みつる)@読書ライター
2022年4月24日 11:38
第165回直木賞受賞作。あらすじ河鍋暁斎の娘、とよ(暁翠)の物語。父であり師であり、偉大な絵師だった河鍋暁斎の葬儀の夜から物語は始まる。とよには姉、兄、弟、妹がいるが、姉は河鍋の家と関わりを持とうとしない。兄は喪主は務めたものの、後始末もせずに家に帰ってしまう。他家に養子に出された弟はへらへらとだらしがなく、妹は病弱。河鍋の家の諸々を引き受けながら、妹と細々と暮らすとよ。しかし五歳か
2022年4月23日 12:58
まずは推しの末っ子を主人公にして小説を書いて下さってありがとうございます、と澤田瞳子先生に申し上げたい。本作の主人公となっている範長は、父親の藤原頼長が保元の乱で負けた後、兄たちと同様に流罪となり、奈良に戻ることなく亡くなったとされている。没年も不明。そんな範長で、いや範長だからこそ、このような作品の主人公となり得たのかもしれない。あらすじ興福寺のトップとなるべく入ったのに、父親の
2021年5月22日 13:09
五代将軍綱吉の物語。全八章。綱吉が次期将軍に選ばれるところから始まり、綱吉視点と正室信子視点が交互に入れ替わりながら、綱吉の生涯を描いている。大河ドラマや時代劇などではちょっとエキセントリックに描かれていたりして、そんなイメージが染み付いていたけれど、この綱吉さんは実直で思慮深い!正室の信子も、とても賢くて陰ながら綱吉を支えます。悪い人たちじゃないのに、ではなぜ「最悪の将軍」となって
2021年4月22日 16:24
「透明な夜の香り」今読んでいるのは「透明な夜の香り」。心にいろいろ抱えた主人公若宮一香はスーパーの掲示板で見つけた求人に応募する。雇い主は調香師の小川朔だった。本書は全部で12章あり、5章まで読み終わっている。主人公を雇っている小川朔は調香師の仕事をしているのだけれど、とにかく臭覚が超人的である。生活に支障をきたすレベルなので、主人公が採用されたとき、ボディソープや洗髪関係、化粧水など
2021年4月21日 13:49
勘三郎と私ここ一週間ほど、「勘三郎の死」という本を読んでいた。中村勘三郎丈は、私にとっては特別な役者さんである。中学生の時に大河ドラマ「武田信玄」で白塗りで貴族風の今川義元を演じていたのを見てファンになり、母親から歌舞伎役者だよと教えられ、歌舞伎座へ行った。初めて行った歌舞伎座は赤色メインの綺羅びやかな空間で、ざわざわとした何とも言えない高揚感やワクワク感は今も覚えている。いくつか演目は
2021年4月19日 19:07
三年前の夏、中学時代からの親友が癌で逝ってしまった。当時まだ高校生だった子供二人と、高齢のご両親を残しての他界はさぞ無念だっただろう。告別式で、高齢のご両親が骨を拾う背中の小ささに、これが親不孝というものかと思い知らされた。もちろん本人が望んだ事ではない。しかし、自分の力では死ぬ年を選ぶことは出来ないのだ。死は誰にでもやって来るが、いつ来るか、そしてどのように死ぬかは決して平等ではない
2018年9月20日 23:56
小説「戦艦武蔵」を読む前に、その取材日誌の本があると知り、こちらを先に読もうと手に取った。戦艦武蔵ノート岩波現代文庫吉村昭2010.8.20※※※※※この本は、吉村昭が「戦艦武蔵」を執筆する際にその建造に携わった人や乗組員、建造された造船所のあった長崎の市民などから聞き取り調査をした記録である。取材は昭和40年頃に行われた。終戦から20年という時期なので、現在とは違い戦争中既に