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短編小説

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あなたがあなたでいることが何より尊い【短編小説】

あなたがあなたでいることが何より尊い【短編小説】

「しんどい」
と私がそう彼に告げた時、
「別に誰に何と言われたって生きているってのはそれだけで尊いことだよ」
と言ってくれた。

先輩に愚痴を言われて苦しくなった。言われたことができない自分を、私自身がで追い詰めていくことに、少し嫌気がさしていたのもあるかもしれない。

「生きていることが尊い」というのは彼の決まり文句だった。

生まれてから、あまり人から認めてこられなかった私は、その言葉が私に向

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夏の夜の夢【短編小説】

夏の夜の夢【短編小説】

F「夏だね〜」
M「夏だね〜」
F「夏といえばさ、肝試しとかの時期だよね」
M「肝試しね、あったねそんなの。僕は小学校の修学旅行でやったきりやってないけどね」
F「そうなんだ。私はね、結構好きなんだよね、肝試し。毎年心霊スポットを検索しては、そこに訪れて、これがあの…って思いながら怖がる人たちの顔を思いを馳せて感慨にふけるのが好きなの」
M「僕は、君のその発言がとてもホラーだと思ったよ、今年は是非

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【短編小説】暮らしを覗いていたい。

ホットサンドを頬張る朝に、彼はやってきた。
「こんにちは」
誰なのだろうか。彼が誰なのか私にはわからなかった。
一見するとホラーをのようだ。しかしそこには安心と慢心があった。
この人はきっと大丈夫であると。
結果から言えば、その人は大丈夫な人だった。
大丈夫な人なんて言い回しはきょうび聞かないが、
おとなしく、ひどく誠実で、できた人であった。
それから彼と暮らすようになった。

彼が来ても生活はそ

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