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読書の記録(69)『しじんのゆうびんやさん』 斉藤倫 牡丹靖佳 画 偕成社
手にしたきっかけ
ファンタジーの本を探していて『どろぼうのどろぼん』を読んだ。
なんとも言えない爽やかな読後感で、一瞬でこの本のとりこになった。
装丁も美しくて絵だけを見ていても飽きない。そんな『どろぼうのどろぼん』の斉藤倫さんと牡丹靖佳さんの手による『しじんのゆうびんやさん』。これも読みたい!と思った。
心に残ったところ
ガイトーとトリノスという郵便屋さんの名前にまずはワクワクしてた。生まれてから一度も手紙をもらったことがないとうだいもりのじいさんにガイトーが手紙を書き、トリノスが届けることになる。
アーノルド・ノーベル『手紙』を思い出した。がまくんとかえるくんはもともと友達でお互いのことを知っていて、手紙を書く。
一方、ガイトーは見ず知らずの人に手紙を書く。ガイトーが書いた手紙をじいさんは「し」だと言った。会ったこともないだれかに、自分の感じたことを綴るとき、それは時に詩になる。詩の生まれる瞬間に立ち会った気がした。
手紙って、どうしてあんなに嬉しいんだろう。自分のために時間を使ってくれたからなのか、自分に思いを寄せてくれたからなのか。届くと幸せな気分になれる。メールや電話では味わえない不思議な魅力がある。
全部で11通の手紙がある。一つ一つの詩が味わい深い。詩集を読むとなると、ちょっと構えてしまうけれど、この本は物語に惹かれて、するすると読めてしまう。
手元に置いて何度でも読みたい本だ。プレゼントするにも、うってつけの本だと思う。
まとめ
斉藤倫さんの他の本も読んでみたい。児童書の括りになるんだろうけど、大人も子どもも関係なく感想を伝いあえる、優しい本だと思う。子どもにも薦めるけど、大人も読んでほしいなあ。いろいろな体験をしている方が共感したり感じることが多いとも思うから。
他校の司書さんに薦められた『レディオワン』もよかった。
斉藤倫さん、次作も読みたい作家さんだ。