【最新版】業界人は知っておきたい日本のスマホアプリゲーム市場規模と推移(2011〜2023)
先日、「なぜスマホゲームのマーケティングは最高に面白いのか?(またはマーケターとして成長できる5つの理由)」というタイトルで、スマホゲーム業界でマーケティングをする魅力についてnoteに書きました。
この中で、「マーケットの規模が大きい(そしてグローバル)」を魅力の"起点"として挙げましたが、「国内のスマホゲーム市場規模と推移」についてまとまった記事があまりなかったので、今回情報をまとめてnoteに書いておきます。
タイトルを大げさにしましたが、プロデューサーやマーケターはもちろん、エンジニア、デザイナーなどの開発に関わる方や、ゲーム会社をサポートをしている方も知っておいて損はない内容かと思います。
日本のスマホ&アプリゲーム市場規模と推移
※以下は2019年時点の市場考察になります。2023年現在の市場状況を見ると、当時の状況を踏まえた短期的な課題と将来予測はある程度は合っていた、そして現在も大きく変わっていないと言えると思います。その観点で以下の考察をぜひご覧ください。
現在の日本国内のスマホゲームは一兆円市場であると言われます(開発関連や広告関連、ツールなどの関連市場を加えたらさらに大きいです)。今回スマホゲーム市場が立ち上がった2011年から2019年現在までの市場規模の推移とスマホゲーム人口の推移、そして主なヒットタイトルを図にまとめてみました(上の図)。
プロデューサー、マーケターとして大事なことは過去〜現在の変遷と傾向を理解し、さらには現在から未来を推察し、担当タイトルの運営やマーケティングに活かすことです。上記の図が少しでも役に立てば幸いです。
過去〜現在のスマホゲーム市場を読み解くポイント
最近は業界では、「新作のヒット率の低下」、「タイトルの収益性の低下」が良く取り沙汰されますが、それはなぜなのか?今後はどうなっていくのか?をきちんと把握することが重要です。もちろん要因は複雑ですが、市場をマクロで見た時の傾向と個人的に感じるポイントを以下しておきます(ご指摘、インプットはぜひコメント等でお願いします)。
・未だに市場は成長を続けている(成長は鈍化しているが)
国内市場規模は1兆円超で伸び率は鈍化傾向ですが、未だに成長している市場です。伸び率の鈍化は2016年から始まっているので、最近始まったわけではありません。最近はスマホゲーム企業の収益性の低下が目立ちますが、市場の成長が鈍化しているから、ではなさそうです。
・市場の寡占状況は緩和傾向。とはいえ根強い超ロングヒットタイトル
市場規模の内訳は、2016年はTOP10タイトルが市場シェアの50%を占めていると言われていましたが、2019年現在は寡占状況は緩和している印象です。おそらく今は30-40タイトルで市場シェアの50%くらいではないかと思います(正しい情報はApp Annieが発表してくれるのを待ちましょう)。とはいえ、TOP10の顔ぶれは超ロングヒットタイトルがほとんどです。課金ユーザの固定タイトルへの定住は、「新作のヒット率の低下」の一因と言えるでしょう。超ロングヒットタイトルは、ユーザのサンクコストにおいてもプロモーション費用が捻出できる経済性においても、先行優位性がもちろん多分にあります。ただ、実際はそれ以上に、運用とマーケティングがどんどん洗練され進化し、ユーザを楽しませ続けている、と思います。ゆえに支持され、根強いのです。
・新作のヒットも生まれている。傾向はIP活用と海外からの国内参入
ここ2-3年でも年間TOP30に食い込む大ヒットと言えるタイトルは「荒野行動」を筆頭に複数登場しています。ヒットタイトルの傾向は、顕著に「IP活用」と「海外パブリッシャーの国内参入」の2点です。それ以外での大ヒットタイトルはほとんどありません。特に海外からの国内参入は加速しており、国内市場規模の海外パブリッシャーによるシェアも急拡大しています。2019年は、シェアが市場の30-40%まで達していることは確実でしょう。
・タイトルの多種多様化は進むが、スマホゲーム人口は拡大していない
「ゲーム人口」に着目すると、携帯電話で遊ぶモバイルゲームが広まった結果、ゲーム人口は大きく拡大しましたが、近年はスマホゲーム人口の成長は市場規模の成長以上に鈍化しており、ほぼ増えていません。これはスマホを15歳~49歳の9割以上が所有するまでに広がっていること、さらに家庭用ゲーム"も"併用して遊ぶユーザが増えていることも要因です。海外からの参入タイトルも増え、ゲームタイトルの多種多様化は進んでいるが、「スマホゲーム人口」は拡大していない、すなわち限られたパイを奪い合っている。これが競争を一層激しくしています(一方、最近は明らかにシニア層をターゲットにしたタイトルが成長している動きも見えます)。
・一人あたりのプレイゲーム数は減少している
本格的に市場ができて来年で10年を迎えるわけですが、一人あたりがスマホゲームを同時にプレイするタイトル数は増えておらず、むしろ減少傾向です。これは、(1)ユーザの超ロングヒットタイトルへの固定化、(2)一つのゲームのコンテンツボリュームの増加、(3)動画、音楽、マンガアプリ等の他の良質なスマホエンタメの選択肢の増加、など複数の要因が挙げられます。結果として、スマホゲームの新規ユーザの獲得の難易度、新規ユーザの獲得単価の向上につながり、マーケティング費が以前よりもかさむようになり、利益率の低下につながっています(開発費、運営費の高騰に加えたマーケティング費の高騰のトリプルパンチなわけです)。
新規ユーザの獲得の難易度が上がることで、相対的に既に遊んでくれている既存ユーザに遊び続けてもらうことの重要性は高まります。これが「ファンマーケ」や「コミュニティ」がマーケティングで重要とされている大きな理由の一つです。
・ユーザに選ばれるゲームは変化している。理由は「フェア」と「飽き」
これまでは国内と海外ではゲームのビジュアル、システム、マネタイズの違いにより、人気を得るゲームが異なっていました。しかし近年はその垣根が崩壊しており、特に若年層は国内と海外パブリッシャーのゲームの区別せず、「純粋に面白いと思うゲーム」を選択しています。スマホゲームの「面白い」とは、シンプルに表現すると「他人より上手くプレイできているゲーム」ということになるのですが、ユーザに話を聞いていくと、経済力で大人に勝てない若年層は「経済力がゲームの上手さに左右されにくいゲーム(フェアなゲーム)」を選択するようになっています。「フェアなゲーム」は、友達と一緒に楽しみやすいという性質もあり、クチコミも広がりやすく、ダウンロードを伸ばしています。
また大人にも「ゲーム選択の変化」は起きており、MMORPGを代表例として新しいゲームを選択するようになっています。ユーザに話を聞いていくと、一つの理由は「これまで長年遊んできたゲームに飽きてきている」ことです。その状況に対して、スマホのスペック向上に合わせた「これまでスマホ市場になかった斬新で高品質なゲーム」に魅力を感じるようになっています。
「フェアなゲーム」と「斬新なゲーム」を高品質に開発する難易度はとてもとても高く(そして開発費も巨額に必要)、またこのようなゲームはこれまでも海外では先に人気を集めていたこともあり、現状は海外企業にアドバンテージがある状況です。
「ユーザの面白い」への寄り添いが大前提
個人的な見解も含まれますが、上記のようなポイントが過去〜現在の国内スマホゲーム市場推移を見ると読み解けると思います。このポイントを踏まえると、今後のスマホゲームのマーケティングはより一層「ユーザの面白い」に寄り添うという「本質/本物」が求められると思います。そして「ユーザの面白い」は日々変化するものです。いかに変化を察知し、理解していくか、これがとても大切です。
市場動向を見ながら施策を進めていくのは、マーケティングの基本ですので、この資料や考察が少しでもみなさんの役に立てばと思います(役立ったと思った方はnoteにスキやシェアをお願いしますw)。ファミ通ゲーム白書や総務省のデータも一年に一回はWEBで発表してくれていますので、この資料も定期的に更新していければと思います。
今後もスマホゲームのマーケティングに関するnoteを書いていこうと思いますので、応援としてnoteのフォローやTwitterのフォローもお願いします!また、独立マーケターとして活動していますので、なにか力になれることがありましたら、いつでもお気軽にご連絡ください。
前回の記事「なぜスマホゲームのマーケティングは最高に面白いのか?(またはマーケターとして成長できる5つの理由)」もぜひご覧ください。
「スマホゲーム業界マーケティングカオスマップ」も定期更新しています。こちらもぜひご活用ください(フィードバックもお待ちしています)
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