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日本のスマホゲームは生き残れるのか!?〜生き残るためにはしぶとく続けること〜【GAME FUTURE SUMMIT 2024 レポート】

2024年6月5日(水)にベルサール渋谷ファーストにて、オフラインイベント「GAME FUTURE SUMMIT 2024」を開催しました。このイベントを続けていくべく、2025年6月4日(水)に、「GAME FUTURE SUMMIT 2025」を開催します。ご登壇やスポンサーを募集していますので、ぜひご協力をお願いします。

多彩なゲストによるセッションに加えて、さまざまなイベントブースなどの1日を通して楽しめるコンテンツもあり、参加者の皆様には様々な出会いとコミュニケーションの機会を通して新しい発見や気づき、学びを得ることができたイベントとなりました。

このnoteでは「GAME FUTURE SUMMIT 2024」のセッションの中から「日本のスマホゲームは生き残れるのか!?」のレポート記事をお届けします。

セッションの動画アーカイブも公開中です。

▼このセッションの見どころ

3人のベテランのゲームプロデューサーが集い、これまでの日本のスマホゲームの歴史を振り返りながら、今後の日本からヒットゲームを生み出すための必要な視点を共有/議論するセッションになりました。「日本のスマホゲームが生き残るためには、しぶとく続けること」というキーワードも共有されています。

「日本のスマホゲームは生き残れるのか!?」

■モデレーター
ゲームプロデューサー 中村 たいらさん

■ゲスト
株式会社DONUTS 執行役員 安藤 武博さん
ゲームプロデューサー 高 大輔さん

登壇者の自己紹介 ー スマホゲーム業界を走ってきたトップランナーの経歴

質問:まずは簡単に自己紹介をお願いします。

中村さん:
本日モデレーターを務めますゲームプロデューサーの中村たいらです。

今回のテーマは「日本のスマホゲームは生き残れるのか!?」というセンセーショナルなものです。この問いに対する明確な答えは誰にもわからないと思いますが、ここにいらっしゃるスマホゲーム業界のトップを走ってきたお二人と一緒に、スマホゲームの過去から未来までを語っていきたいと思います。本日はよろしくお願いいたします。

安藤さん:
株式会社DONUTSの安藤武博です。スマホゲームを作り始めたのは2008年からです。過去の栄光を振り返ると、2010年4月に売り切りのRPG『ケイオスリングス』を作りました。今ではありえませんが、当時は日米のトップグロッシングになりました。その後、『拡散型 ミリオンアーサー』を作りました。

現在は株式会社DONUTSでゲームを作っていて、『暴走列伝 単車の虎』なども手掛けています。先ほどトップクリエイターと紹介されましたが、もっと売れている方もいらっしゃるので恐縮ですが、人より長くスマホゲームを現場で作り続けてきましたので、その経験をお話しできればと思います。よろしくお願いします。

高さん:
ゲームプロデューサーの高(たか) 大輔です。株式会社セガ、GREE、スクウェア・エニックスを経て、スマホゲームではセガで『ぷよぷよ!!クエスト』、GREEでは『アナザーエデン 時空を超える猫』を手掛けました。成功率は2分の2で、この2つのゲームは現在も運営が続いています。自画自賛ですがすごくないですか(笑)?

また、「高Pのゲームビルダーズ」というチャンネルでYouTubeも始めました。ぜひ皆さん登録してください!よろしくお願いします。

スマホゲーム業界10年の歴史を振り返って ー 新しいゲーム性の探求と1つのゲームを磨き続けること

質問:今年はスマホゲームの10年の大きな節目の年になりますが、これまでのスマホゲームの歴史を振り返ってどう思いますか?

中村さん:
今年はスマホゲームの10年の大きな節目の年だと思います。そこで、このお二人と一緒にスマホゲームの歴史を簡単に振り返ってみたいと思います。

2012年に『パズル&ドラゴンズ』がリリースされていますが、これより前のことは私はあまり知らないのですが安藤さんご存知でしょうか。

安藤さん:
2010年4月に売り切りのRPG『ケイオスリングス』を出した後、ガラッと売り切りの時代が変わり『キングダムコンクエスト』や『カイブツクロニクル』が出てきました。2012年4月に配信開始した『拡散型 ミリオンアーサー』は現在NFTのみを残してなくなってしまいましたが、2012年のほぼ同じ時期に出た『暴走列伝 単車の虎』と『パズル&ドラゴンズ』の2つは今もまだ売れ続けています。

2024年に9日連続首位だった『学園アイドルマスター』の連続記録を止めたのは、「転生したらスライムだった件」とコラボした『パズル&ドラゴンズ』ですからね。高さん、これはポイントだと思いませんか?

高さん:
そうですね。デジタル資産であっても資産を失いたくないというプレイヤーの心理があります。そのため、イベントやニュース性があると、「そういえば」とゲームにアクセスすることがよくあります。

安藤さん:
はい、プレイヤーの心理ですね。『暴走列伝 単車の虎』は暴走族をモチーフにしたゲームなので、プレイヤーは普段トラックを運転している人などが多く、広くは普及はしませんが、このゲームだけをずっと続けているという人が多いです。

『釣り★スタ』も同じだと思います。定年を迎えたプレイヤーが、釣船旅館でオフ会をしているという話も聞いたことがあります。『暴走列伝 単車の虎』も『パズル&ドラゴンズ』も同じように、そればかりやっている人が多いのではないでしょうか。なので、一度売れる「しきい値」を超えたら、飽きずに磨き続けることが大切です。『拡散型 ミリオンアーサー』は私がいなくなった後にサービスが終了してしまいましたが、やはり続けるべきだったと思います。本当にもったいないです。

これは非常に示唆的です。そうしたゲームは古くないんです。最新のゲームだから売れるというところだけでなく、ずっとひとつのゲームだけしか遊んでいない層がいるということも忘れてはいけないということです。

中村さん:
それが逆に今新しいゲームを作る厳しさを表している気がしますね。

高さん:
もはやゲームが歯みがきをすることくらい生活に密着しているんですよね。朝起きて、起動して、クエストを回す、ということが生活の一部になっていますね。

安藤さん:
高さんが「ぷよぷよ!!クエスト』を作ったとき、中村さんが『サカつくシュート!』を作ったときは、これは売れる!と思って作っていましたか?

高さん:
私はわかりませんでした。『ぷよぷよ!!クエスト』は『パズル&ドラゴンズ』が配信される前から企画が始まっていて、『パズル&ドラゴンズ』の配信開始から1年2ヶ月しか経っていないですけど、明らかに影響を受けています。

中村さん:
私が『サカつくシュート!』というサッカーゲームを初めてプロデュースしたときも、サッカーをベースに『パズル&ドラゴンズ』の影響を受けたゲームを作ろうみたいな感じでした。

安藤さん:
 早く作れたというのはたくさん試すことができるので大きかったですね。今と比べると製作費用もかかってないですよね。

高さん:
そうですね。今だったら中規模のプロジェクトでも2桁億円くらいかかります。

安藤さん:
ここは大事なところだと思うのですが、みんなヒット作を作るときに、制作段階ではそんなに当たるとは思っていないんです。「確実にヒット作を作るぞ!」と思って作るべきですが、正直なところ「当たってしまった!」というのがリアルなところじゃないでしょうか。 『パズル&ドラゴンズ』も『暴走列伝 単車の虎』もそうだと思います。

高さんは予告ホームランをしたイメージですか?

高さん:
『アナザーエデン 時空を超える猫』に関しては予告ホームランです。

安藤さん:
この時期は狙いすまして、というのは少なかったと思いますが、売れると続くからラッキーパンチであっても儲けものですよね。このチャンスを逃すべきじゃないと思います。

中村さん:
2014年に『ディズニーツムツム』が登場し、この頃からIPもののゲームが増えました。例えば、『ドラゴンクエストモンスターズ』や『ワンピーストレジャークルーズ』、『ドラゴンボールZ ドッカンバトル』などです。

安藤さん:
まだ続いてますよね。『ドラゴンボールZ ドッカンバトル』は現在もさらに伸びています。

中村さん:
そうですね、私がプロデュースした『モンスターギア』は配信終了していますが、他の2014年〜2015年配信開始のゲームで終わってるものはほぼないですね。

安藤 武博さん:
なんかIPタイトルが出てきたけれどもオリジナルタイトルもまだ頑張っている感じですよね。2015年〜2018年もポイントで、続いているんですよね。さっきのスライドから2年か3年しか経っていないんですよ。

中村さん:
そうですね。2015年7月に『Fate/Grand Order』、2016年7月に『Pokémon GO』、そして高さんが「当たる!」と確信して出した『アナザーエデン 時空を超える猫』が2017年4月に配信開始しています。

安藤さん:
なかなかこうやって定量的に振り返っても、常に時代に合わせて売れているゲームを複数作れる人は非常に少ないです。時代に合わせて誰と組むかが大切であるということの重要なエビデンスです。

スマホゲーム業界10年の歴史を振り返って - 東アジア系ゲーム会社の躍進

質問:2019年ころから東アジア系の会社が強くなってきましたが、日本のスマホゲーム市場は厳しい状況にあるのでしょうか?

安藤さん:
2019年ころからは東アジア系の会社が強くなってきましたね。

中村さん:
そうですね。『原神』などは衝撃を受けましたね。

安藤さん:
『崩壊スターレイル』や『キノコ伝説』。最近だと『鳴潮』や『勝利の女神:NIKKE』とかもあります。この時期は東アジア地域の会社が強いですよね。

中村さん:
最近はヒット作が生まれにくくなっていると言われていますが、実際には最近もヒット作は生まれています。

安藤さん:
最近もメガヒットが出ていてすごいですよね。一部のヒットタイトルが市場の多くのシェアを独占状態になっています。そのため、一定の域に達するヒットタイトルがより選ばれるようになっている感じがします。

中村さん:
そうですね。この時期ごろからオリジナルタイトルでヒットを出すことが厳しくなっています。やっぱりこの一番最後に安藤さんが最近出された『 機兵とドラゴン』があります。

安藤さん:
もっと売れると思っていたんですが、なかなか難しいですね。16-17年スマホゲームを作ってきて感じるのは、昔も今も未来のことはわからないというのが正直なところです。ただ、スマホゲーム市場が縮小したり、魅力がなくなったりしているわけではないと思っています。

日本のスマホゲーム市場は厳しいと言われることもありますが、実際には売れるゲームは売れています。スマホゲームだけでなく、『パルワールド』や、あとは『メメントモリ』なども好調です。インディーゲームでは『8番出口』など、面白い最新作も出ています。オリジナルタイトルもヒットしているんです。また、『ブルーロック』や『呪術廻戦』などのIPタイトルも順調にリリースされています。ですから、市場は決して厳しくはありません

中村さん:
高さんはその点についてどうお考えですか?

高さん:
スマホゲームだけに特化した場合、状況は厳しくなっているかもしれません。新しいものが受け入れられないわけではありませんが、売れているゲームは非常に多額の資金が投入されています。特に日本の資金力と比較すると、中国系のベンダーが作るゲームは開発規模が3倍、5倍、10倍と大きく、売上の目標ラインも日本とは桁違いになっています。

安藤さん:
あれだけの資金を投入したものを日本の会社が作れるかという問題もあります。あんなにお金をかけるのは嫌じゃないですか?

高さん:
嫌ですね。日本の会社でも作れるとは思いますが、中国系のベンダーは人海戦術で作っているため、スピードが追いつかないですよね。日本がどれだけ何十億、何百億という資金を投入しても、そのスケジュールを圧縮するのは難しいでしょう。

中村さん:
8時間交代で3シフト制を採用しているというのは本当でしょうか。

高さん:
やっていてもおかしくないですね。

忙しい現代ユーザーの関心を引くヒントー 「 わかりやすい×見ているだけで面白い」ゲーム

質問:現代のスマホゲームユーザーの関心を引くためにはどんなアプローチが必要だとお考えですか?

安藤さん:
最近のユーザーは新しいものを知ることを非常に面倒くさがっています。昔は新しい体験があれば、時間と労力をかけて自ら情報を取りに行くことがありましたが、今は「知らない。面倒くさい。難しそう。★1、以上!」という感じになってしまうことが多いです。

そのため、ユーザーに分かりやすく情報を伝える工夫が必要だと思います。
例えば、『キノコ伝説』のように左に行くか右に行くかで結果が変わるようなシンプルなゲームだということをたくさん広告を出すことで目にした人に認知させる。こういった手法は分かりやすいんじゃないでしょうか。

また、『アイドルマスター』や『呪術廻戦』のような人気IPを活用し、その最新作という形で話題性を持たせるというのも効果的です。

あとは、一目見ただけでやってみたい!と思わせるような映像のクオリティが高いものだったり、多額な制作費がかかっていそうなものであることが重要です。このような、見た瞬間に分かるようなものがないと興味を持ってもらえません。

多くのユーザーは、漫画、VTuber、YouTubeなどのスマホの多くのコンテンツに時間を使っています。暇な人がひとりもいなくなった今、昔よりもユーザーの関心を引くのが難しくなっていると感じます。

中村さん:
私はスマホゲームのユーザーの大半は、新しいゲーム性を求めていないのではないかと感じています。

安藤さん:
それは今だけの話ではなくて、昔からそうだと思います。高さんはコンソールゲームの制作に携わっているのでご存知かもしれませんが、PS3の時代に国内で一番売れたゲームは『ファイナルファンタジー』でも『ドラゴンクエスト』でもなく、『ガンダム無双』や『北斗無双』など合わせた『無双シリーズ』です。つまり、2000年頃に『真・三國無双』が作ったゲームシステムをひたすら外見を変えてゲームを磨き続けた結果、それが一番売れているという現象は、10年前から起こっていることです。

新しいガジェットといえば、私はiPodのときからゲームをしていました。最初はUIやUXもすべて、タップすると「今ここをタップしているよ」と示してくれるポイント機能がなかったので、そういうものを発明するのが楽しかったです。

しかし、中村さんの言う通りで、実は昔からゲームシステムに新しいものはそれほど求められていないのかもしれません。私自身はそれはつまらないと感じるので、天邪鬼的に反発していきたいと思っているのかもしれません。

中村さん:
新しいデバイスが登場するときはゲームシステムが一旦リセットされる部分もありますし、新しいデバイスの特徴を活かして、できることが増える気がします。しかし、ゲームの歴史が長くなるにつれて、出尽くした感も少し感じることがあります。

安藤さん:
やっぱり可処分時間の問題だと思います。昔、ファミコンの時代はどんなつまらないゲームでもありがたかったです。難しくても夢中で長時間遊びましたよね。でも今は、たくさんのゲームがあるので、暇つぶしに何かやるなら難しいゲームや分かりにくい名前のゲーム、知らないゲームは避けられがちです。1日遊んでみてようやく面白さがわかってくるようなゲームなら、「別にやらなくていいかな」と思われてしまうことが多いと感じます。

高さん:
基本的に今のユーザーのモチベーションは、時間を消費したときに得られるアチーブメントを獲得することにあります。放置ゲームが増えて売れているのは、仕事をしている間に放置しておいても時間が経てば報酬を得られるからです。これは時間効率を極限まで追求した形だと思います。もしかしたら、未来にはゲームをプレイしなくてもよくて、インストールするだけでよい、というところまで進む可能性もあります。

安藤さん:
見ているだけで面白いというものですよね。私がスクウェア・エニックスに行ったときに、『ファイナルファンタジー』のATBやリミットブレイク、ロウプレ、ガンビットなどを手掛け、RPGの戦闘システムに革命を起こしたすごい先輩クリエイターである伊藤 裕之さんに2011年か2012年頃に会いました。

その際に、ソーシャルゲームの『怪盗ロワイヤル』が何の駆け引きもなく、演算が終わっているのに後から再生される仕様なのが不思議で、また、Win-Loseで一瞬で終わってしまうことに驚いた、と話したことがあります。彼はこんなゲームで遊ぶのは初めてだから1週間時間が欲しいと言い、1週間後に「これが一番快適だ。込み入ったことをやらせるとみんな面倒くさがる」と言っていました。伊藤さんは「見ているだけで面白いシステムにならないか」と毎回考えて作っているそうです。どうしても面白くならない場合は、妥協して介入する余地を入れることもあるそうです。例えば、F1のセミオートマのように、少し加速や減速をしたいときにATBを入れるなどです。

常に新作を考えるときは「見ているだけで面白いバトルシステムにならないか」を狙っているという話が印象に残っています。高さんがおっしゃったように、今から「見ているだけで面白い」ものを編み出せたら、その人が勝つかもしれません。

高さん:
私は将棋を指すのが好きですが、結局行き着く先は野球やスポーツ観戦なのかなと思います。野球やサッカーで応援しているチームが勝つとすごく嬉しいし、負けるとすごく悔しい。見ているだけでも感情の起伏が生まれます。

自分が組んだデッキやセットアップしたものに対して、結果というフィードバックで感情の起伏が生まれるのは、すごく自然なことだと思います。

安藤さん:
私の好きな競馬も同じです。見ているだけであんなに面白い運営の仕組みは完璧だと思います。毎週日曜日のたった2分間に向けて、開催していないときもそのことを考えます。実際に競馬が行われているときも見ているだけですよね。もし馬券を買えたら任意のタイミングで鞭を使うことができたりしたらまた違うかもしれませんが、そんなことができなくても面白いわけです。「見ているだけで面白いもの」は作れるのです。

『ウマ娘』もよくできています。競馬を題材にしている点で、途中で何もしなくても楽しめる仕組みが日本にはあります。

中村さん:
そうですね。「見ているだけで面白い」というところにヒントがあるのかもしれませんね。

安藤さん:
自分が何か複雑にしてしまっている時に、昔のレジェンドたちが「見ているだけで面白いと感じるゲームが至高のゲーム」だと考えてゲームを作ってきたという話を思い出しますね。

海外産スマホゲームの台頭 - アニメに熱狂している制作者の熱量とクオリティ

質問:最近ヒットしている中国をはじめ海外産のスマホゲームについてどう思いますか?

中村さん:
最近のスマホゲームは海外産が多いですね。特に中国のゲームが目立っています。近年、ヒットタイトルは海外産の方が多いように感じますが、この点についてお二人はどう思いますか?

安藤さん:
『原神』や『ブルーアーカイブ』が登場したとき、『拡散型 ミリオンアーサー』のオープンワールド版を思い出しました。『拡散型 ミリオンアーサー』でやったことが、中国の人々に熱狂的に受け入れられていると感じました。
ラノベやアニメを有名な声優さんで動かして楽しませるものは、『拡散型ミリオンアーサー』で一度やってしまったので2012年〜2014年頃には私にとっては終わっていました。しかし、海外の人たちはずっとそれに熱狂しています。

私は2011年頃の第二次K-POPブームにハマっていました。K-POPも当時も今も基本的に同じことを続けています。例えば、BLACKPINKは元々2NE1という名前でしたし、KARAとNiziU、NCTとEXOも同様です。K-POPはBTSで世界的に成功し、同じスキームを続けて大きな成果を上げています。

この流れを見ていると、『原神』や『鳴潮』に繋がっているのも理解できますよね。日本人も飽きずに真似るべきだと思います。その方が新しいものでも手に取りやすいです。

中村さん:
中国でも、そのような方向性で昔から作品を作り続けているのでしょうか?

安藤さん:
中国はそうではないのですが、私たちが作ったものや、先輩たちが作ったアニメが大好きです。

『アズールレーン』が最初にコラボレーションしたのは日本のロボットアニメ『装甲騎兵ボトムズ』でした。以前、『アズールレーン』のチームとお仕事をした際、中国の30代くらいの方になぜ中国の人が『装甲騎兵ボトムズ』を知っているのかと尋ねたところ、本当は『ザンボット3』でコラボレーションしたかったが、人間爆弾のシーンがトラウマになるため、『装甲騎兵ボトムズ』にしたとのことでした。でも『装甲騎兵ボトムズ』もかなりトラウマになる作品ですよね、といった深い話ができました。

また、韓国のクリエイターと『超獣機神ダンクーガ』の話で盛り上がったことがあります。このロボットアニメを見たことない人も多いのではないかと思いますが、彼らは非常に詳しくて熱量もすごいです。日本人よりもアニメに熱狂している中国や韓国のファンが、こうした作品を進化させ、高いクオリティで楽しめる作品を作ろうとしているのは素晴らしいことです。

山手線のラッピング電車や豪華なCVも、有名だからとか、売れそうだからという理由だけでなく、制作者がその声優さんが出演するアニメやゲームを熱狂的に楽しんでいて、自分が関わったら絶対にこういうアウトプットにしたい!という強い想いがあるから高いクオリティが生まれているのです。

マーケティング目線ではなく、オタクが熱狂して作っているからこそ、人の心を打つのだと思います。

現在、海外産のスマホゲームでヒットしているものは、私たちが中学生の頃にアニメを見ていた時のような熱量を感じる作品です。彼らの作品の熱量に負けてはいけないし、「もう自分の番ではない」と思ってはいけないと感じます。

高さん:
プロデューサー視点、つまり開発視点から見ると、日本の作り方がだいぶ知られてしまったように感じます。例えば10年前くらいの中国系の作品だと、翻訳が不自然だったり、日本人が絶対に書かないようなキャラクターや日本人が好まないようなキャラクターがが多かったりしました。しかし、miHoYoさんなどが登場し、日本が大好きだと感じられる作品をピンポイントで作れるようになってきました。これはここ5年くらいで大きく変わった点です。

さらに、海外産のスマホゲームの制作には、資金、人材、技術が揃っているため、日本が追いつけないほどのスピードで高品質な作品を作るようになっています。

安藤さん:
好きだからこそ目利きが良くなり、さらに技術が追いつけば無敵になりますよね。

中村さん:
昔は日本が圧倒的にコンシューマーゲームの技術力で優れていたと思いますが、いつ頃から逆転した印象がありますか?

安藤さん:
やはりインターネットとスマートフォンの普及が大きいと思います。彼らはインターネットとスマートフォンを手に入れたことで、作品や情報の入手が容易になり、技術が向上し、経済成長もあって一気に逆転しました。しかし、逆転できたのはやはりセンスの良さでしょうね。

日本のスマホゲームの未来 ー 「ゼロから作ることができる」それが日本の強み

質問:日本のスマホゲームは生き残れると思いますか?生き残るためにはどう闘っていくべきかお聞かせください。

中村さん:
最後に未来の話をうかがいます。日本のスマホゲームはこれから生き残れるのかという点についてですが、どのようにお考えでしょうか。

高さん:
結論から言うと、日本のスマホゲームがこれから生き残るのは難しいでしょう。しかし、日本がまだがんばれる要素はあります。

中国の大手企業の役員と話をしたときに、お金も人材も技術もあるがゼロから企画を立ち上げる人がいないと言っていました。中国の教育は、日本でいう国語、数学、理科、社会、英語などの学問に重点を置いており、芸術の授業があまりありません。そのため、頭は良いのですが、若い頃から芸術性が培われておらずクリエイティブな力をゼロから発揮するのが難しい。要するに、リスペクトとなる作品をコピーして少し変えることはできても、完全にゼロの状態から新しいものを作り上げるのは難しいのです。

ゼロから作れるディレクターを育てて大きな作品を作り上げることです。ゼロから作ることができるのは日本だけなので、その強みを活かすべきだと思います。その際、資金力のある企業と組んだり、中国の開発部隊と協力するのも良いかもしれません。そこが日本がもし戦える、生き残るための一つのチャンスだと思います。

安藤さん
「生き残れるのか」じゃなくて「生き残るしかない」です。

過去を遡って考えると、勝ち負けはプロセスに過ぎないと思います。勝っている人がいつまでも勝ち続けるわけではありません。例えば、ガンホーは 『パズル&ドラゴンズ』以降ヒット作が出ていませんし、ミクシィも同様です。ディライトワークスも『Fate/Grand Order』が最初で最後のヒット作でした。2回目も勝つ人は少ないのです。

勝っている人が負けることもあれば、今負けている人が勝つこともあります。囲碁と同じで、勝ち負けはプロセスに過ぎません。大事なのは「生き残ること」です。

風向きは変わります。20年、30年のスパンで見ると、新しいガジェットが出るかもしれません。私が今ここにいるのも、スマホが出てきたからです。コンシューマーゲームでヒット作がなかった私が、iPodゲームを作っていたらスマートフォンがプラットフォームになったのです。大きく場が変わる可能性もあります。

しかし、そんなことは20年、30年に一度しかないので、大事なのは一度ヒットしたものを磨き続けて、タイトルを長く続けることです。バンク・オブ・イノベーションが『メメントモリ』を大ヒットさせるなんて誰も思わなかったでしょう。ガンホーの『パズル&ドラゴンズ』も同様です。私がスクウェア・エニックスで『拡散性 ミリオンアーサー』を当てるとは誰も思わなかったでしょう。HoYoverseの話も同じです。

生き残れば勝てるかもしれません。とにかくしぶとく生き延びること。ただそれだけです。そのためにどうしたらいいかを考え、わかりやすさや伝えやすさ、オリジナルタイトル、IPタイトル、提携する国やリリースする国を選択していくことが重要だと思います。

中村さん:
そろそろお時間となりました。本日はおふたりともありがとうございました。

このセッションは動画アーカイブも公開しています。

GAME FUTURE SUMMIT 2024
~ゲーム業界の未来をみんなで盛り上げる~
2024年6月5日(水)ベルサール渋谷ファースト

その他のセッションのアーカイブは公式サイトで公開中です。

▼セッションアーカイブ一覧
①「コロナ後の激変ーモバイル/PC/VR 3業界に起こっているゲームの未来」
https://youtu.be/nnkScnvKToQ

②「日本のスマホゲームは生き残れるのか!?」
https://youtu.be/34dkr6pS18Y

③「ゲーム収益を最大化する、課金と広告のハイブリッドマネタイズ戦略」
https://youtu.be/fU6Z5_zasfE

④「もしかしてユーザーを増やせていない?ユーザーを増やすために知っておきたい広告配信の仕方と評価の方法」
https://youtu.be/IUgzxKKpM-I

⑤「カジュアルゲームの逆襲」
https://youtu.be/tYrp6-DPjG8

⑥「なぜVTuberはゲームを流行らせることができるのか?」 〜VTuberマーケティングの先駆者が語る成功と失敗の条件〜」
https://youtu.be/SAgjrs_FOgQ

⑦「ゲームの新ジャンル『BCG』におけるマーケティング戦略〜Web3の視点から見るゲームの未来〜」
https://youtu.be/46dTBZFWk9k

⑧「YouTuber/ストリーマーの目線から考えるコミュニティマーケティング」
https://youtu.be/24nSPxBJ_Eg

⑨「敏腕コミュニティマネージャーが語る、タイトルが長く愛されるためのコミュニティとの向き合い方」
https://youtu.be/gtTh5cHvdsU

⑩「ゲームのマーケターのネクストキャリアはどうなる? 〜ゲーム業界から異業種にチャレンジしてわかったゲームのマーケティング経験の価値〜」https://youtu.be/FCr-9kYIcfs


▼次回「GAME FUTURE SUMMIT 2025」の開催に向けて
2025年6月4日(水)に「GAME FUTURE SUMMIT 2025」の開催に向けて準備を進めています。ぜひこのイベントを一緒に盛り上げてくれたり、何か一緒にやりたいと思ってくれる方がいれば大歓迎ですので、ぜひお問い合わせをお待ちしております。

▼ご協賛/スポンサーのお問い合わせ
https://forms.gle/jJ61T3r1Vg9qSUrS8

▼セッションやプレゼンテーションのご登壇者/企画募集
https://forms.gle/nku5Rd1SHjtsnRvu5

▼イベントご協力者/応援団の募集
https://forms.gle/6SrpQpUzsbktzXoCA

MOTTOでは、「GAME FUTURE SUMMIT」の開催の他にも、ゲームやアプリマーケティング課題解決の「コンサルティング」、TwitterやYouTubeを活用したファンコミュニティ促進サービス「Rooot/Fanflu」、早くて安くて簡単なユーザ調査サービス「SAKURISA」、効果分析までコミットする「YouTubeマーケティング」の提供を行っています。ぜひお気軽にお問合せください。

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