以前に主任研修を受けた際、講師に資質とは辞書では生まれつきの性質とあるのに、あちこち資質の向上とあるのはおかしいといわれていました。
そこでそれらについて整理してみました。
なお、これは、ウィキペディア、naverまとめの次に作成した第3版です。
資質と訳さなかった事例
国語辞典の資質
資質は辞書をひけば
「生れつきの性質や才能」
と書いてある言葉です。
江戸時代の資質の使用例
伊藤仁斎 の 『童子間』(1707年) に「夫修養之引年、資質之変化、皆可勉面到」 という一節があります。
佐藤直方の『講学鞭策録』に資質の使用例「資質得る所已に此の如きに由りて、其の意智熟する所、日に其の趣きを見る…
資質の偏、意智の私を容るる所無からんとす」があります。
クォリティの訳語としての資質
マックス・ヴェーバーの『職業としての政治』にある政治家のQualitäten(クオリティ)
クォリティを資質と訳した例。
政治家にとって主に決定的 資質(Qualitäten)
情熱 (Leidenschaft)
責任感 (Verantwortungsgefühl)
目(Augenmaß) : 距離をおくこと
Leadership Qualities(リーダーシップクオリティ)の訳語としての資質
「リーダーの資質」とQualityが資質と訳される。
資質の向上
日本の法規の目的における資質の向上
日本の法的用語。各法律の目的等に記述される。
法規例
調理師法第1条、製菓衛生師法第1条、スポーツ振興投票の実施等に関する法律第21条第1項4号、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律第16条
Developmentの訳語として資質開発
Developmentの訳語として資質開発とされています。。
ファカルティ・ディベロップメントの訳語としての資質開発
Faculty Development(FD ファカルティ・ディベロップメント)の訳語に「「教授団の資質開発」または「大学教員の資質開発」とされることがある。
教師の能力としての資質能力
日本の教師の能力について昔から資質、資質能力として議論されてきています。
事例
コンピテンシーの訳語としての資質力量
教員の授業能力を資質力量とする表現がありますが、教員の授業のコンピテンシー(Competence)を資質力量と訳する論文もあります。なおCompetenceについてはISO19011を翻訳した際には「力量」と和訳されました。
以下のpdfでは各省庁等とドイツ、ノルウェーは「コンピテンシー」を資質と訳した事例になっています。また中国の事例では名称が「素質」「素質教育」ですが「資質」「資質教育」とするとしています。
◇研究成果報告書『諸外国における学校教育と児童生徒の資質・能力』 (2007年5月23日)(PDF:1.4MB)
https://www.nier.go.jp/kiso/sisitu/foreign.pdf
註:コンピテンシーとは?
Citizenshipの訳語としての資質
Citizenship Education(シチズンシップ教育)
Citizenship Education が市民性教育と訳されていることがあるが、そのCitizenship(シチズンシップ 市民性)の訳語に市民的資質、公民的資質とされることがあります。
公民的資質
公民教育(英訳はcivic educationとされることがある)により達成する目的として大日本帝國の法律等に公民的資質と記述されていました。
昭和43年(1968年)に学習指導要領の小学校社会科が改訂され公民的資質が記述されました。