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英会話に役立つ「丁寧さ」と「時制」の秘密を開示!

英語の語法のお話が続いたので、今日もちょっとお堅いお話を。でも知っていると会話に役立つ内容ですから、読んで損はないかと。特に社会人の方は必見です。

で、以前お話した「丁寧さと時制の関係」との関連で、

今日は、

             進行形

を取り上げます。

進行形を「丁寧さ」の点から見てみると、過去進行形未来進行形が特に関係が深いと言えます。上記の記事で、時制を過去形にすると「距離」が生まれ、その分、現在形よりも丁寧になるというお話をしました。実は、過去進行形<was/were~ing>は過去形よりもさらに丁寧度が増すと言われます。

1. 過去進行形

        a. I wondered if you could help me.

       b. I was wondering if you could help me.

どちらも「手伝って欲しいな」という意味ですが、(a)はI wonder if ~よりも過去形のwonderedを使うことで、自分の気持ちや意図を、現実から離れた距離のあるものと示すことで「間接性」が生まれ、目の前にいる相手に対しての直接的な響きを軽減することができ、それが丁寧さにつながっているということをこの前お話しましたね(忘れた方は上記記事をご覧ください)。

では、過去形のwonderedを過去進行形のwas wonderingにするとなぜもう一段丁寧さが増すのでしょうか?

理由の一つに、進行形が持つ特性である動作や状態がまだ進行中で完結していない「未完了性」から、気持ちや思いがある過去の時点に限定されたものであり、決めつけ感が和らぐからだとされています。

そして進行形を用いると「~と思っているのですが(まだそう決めたわけではありません)」というニュアンスが伝えられます。つまり、過去進行形には、聞き手に話し手の気持ちや願望が叶えられなくても気にしなくていい、その時そう思っていただけで、今はそうではないので断っても大丈夫だという間接的なメッセージを送ることができるのです。これにより、相手に対しての押し付けがましさがなくなります。

次は、willを使って相手に未来のことを尋ねる時にも、進行形にすると丁寧になるというお話です。

2. 未来進行形

未来進行形<will be~ing>には2つ意味があって、「その頃には~しているだろう」と未来のある時点における行為や推量と、「当然~ということになりそうだ」という予測の意味です。学校では前者をさらっと習う程度ですね(ただ最近は後者も習うようですが....)。

後者には、人の意志が関与しない単純未来を表し、時がたてば自然にそうなる、つまり話し手の意志や意図に関係なく、自然に成り行き上そうなるという意味合いがあるのです。

例えば、次の例を見てください。

          I’ll see my parents tomorrow.  
                vs 
         I’ll be seeing my parents tomorrow.

どちらも「明日、両親に会います」ということですが、前者は話した時点で両親に合う意志を示したことになり個人の意志とかかわりがあるのに対し、後者は、話し手の意志ではなく、成り行きでそうなるという予定や計画を表しています。

そして、後者のこの「意志には関係ない」ということから、相手の予定を尋ねる際の丁寧さにつながっていると言えるのです。つまり、直接的に相手の意志に立ち入らず、むしろそのこととは無関係に、将来生じるかもしれない状況を客観的に尋ねることができるため丁寧な響きを持つと考えられています。

以前の記事で映画「ミセス・ダウト」の所でもこの用法を解説しました。


また文法学者で世界的に著名なQuirk et al.も、次のような例をあげてこの点について触れています。

       c. When will you pay back the money?

      d. When will you be paying back the money?

(c)はいつお金を返してくれるつもりですか」と相手の意志を問いただす感じで、相手の返事を要求しているようなぶしつけ感があります。内面にづけづけ踏み込んでいく感覚とでもいいましょうか。

一方、(d)にはいつお金を返す予定ですか」と個人の意図とは関係なく、また人が介する含みもなく、事の成り行き(as a matter of course)から未来に発生する出来事を尋ねている感じになるのです。単なる予定を聞いているため、相手に与える心理的負担が減り、返答をあまり期待せず、相手に対して配慮を示す丁寧な表現となるわけです。

ホテルでチェックインの際、スタッフがお客様に宿泊日数を聞く時、まず

         How long will you stay?

とは言いません。

       How long will you be staying?


と言うのが普通です。なぜだか、もうおわかりですね、同じ理屈が働きます。あくまでも予定を聞くだけで、個人の意志に立ち入らない。これが丁寧さのポイントです。

同じく、世界的に有名な文法学者のLeech & Svartvikも、以下の(e)(f)のような例をあげ、同じようなことを言っています。

 We can use the will + Progressive construction in a special way to refer to a future event which will take place‘as a matter of course.’ The construction is particularly useful for avoiding the suggestion of intention in the simple will-construction, and can therefore be more polite.

        e. When will you visit us again?

       f. When will you be visiting us again?

Sentence (e) is most likely to be a question about listener’s intentions, while sentence (f) simply asks him to predict the time of his next visit.

やはり(e)には、「いつまた訪問してくれるのか、そのつもりがあるのか」と聞き手の意志を問う意向が前面に出るのに対し、(f)は「次回の訪問はいつ頃になりそうですか」と単純に次回の訪問時期の予定を問うていて、押しつけがましさがない分丁寧さが感じられます。


このよう過去進行形と未来進行形は、対人コミュニケーションにおいて丁寧さと関係する重要な文法項目なわけです。学校の英語の時間でもこういう点を強調して教えてもらえれば、仕事で使える生きた知識になると思います。

ふ~う。ちょっと真面目な話をしてしまいました。最後までお付き合いいただきありがとうございました。






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