見出し画像

終着駅を歩く〜都営地下鉄大江戸線・光が丘駅(東京都練馬区)編〜

はじめに


ガッツリ残業して疲れ果てた日、飲み会で深酒してベロンベロンの時…早くシャワーを浴びようと家路を急ぎますが、帰りの電車はちょうど良い温度と揺れでついつい寝込んでしまいがち。はっと目が覚めても時すでに遅し、終着駅まで来てしまったなんて経験はありませんか?

だいたい帰りに寝過ごすと、終着駅は夜中なので真っ暗。タクシーを呼ぶか一晩耐えるか悶々としますが、一方で日中、目的地として終着駅に行ったことはありますか?
本企画は妄想フォレストトラベル取材班が終着駅をあえて目的地として訪問、凍える夜に働かない頭で帰宅方法を探す町から、休日に敢えて行きたい町へと皆さまの印象を操作してしまおうというものです。
そんな企画の第一弾である今回は、普段都内の電車を利用している貴方なら北上する電車の最終着としてよく見かけているであろう、「光が丘」をご紹介したいと思います。


光が丘駅とは

今回ご紹介する都営地下鉄大江戸線は、その名の通り文京区や中央区、港区といった東京都心を回りながら、副都心新宿を通って中野区を突っ切り、終点の光が丘駅のある練馬区までを駆け抜ける路線です。

途中、乗り換え駅を通過しながら目指すは終点。土曜日の午前中というのもあってかだんだん乗客が減っていき、光が丘駅に着く頃にはガラガラ。練馬区の統計によると、住所上「練馬区光が丘」に住んでいる人は約26,000人と、それだけで1自治体成り立つほど。にもかかわらずこれだけ電車が空いているのはなぜでしょうね。もしかして光が丘、ベッドタウンすぎて日中は人がいない!?

めちゃくちゃ混んでましたスミマセン!!
大江戸線は地下鉄なので、光が丘駅も駅舎がドンとあるわけではありません。改札を抜けると方々へ繋がる出口があり、ふらっとそのうちの一つを登ったら人・人・人!ここは渋谷スクランブル交差点か?

どうやら駅直結の商業施設でイベントが開催されるようで、ファミリーが列を成していました。いやいや、それにしても皆さんどこから来たの?電車ガラガラだったじゃん…
と、のっけから終着駅の寂しいイメージ(=筆者の偏見)が冥王星の先までブッ飛んでしまいました。気を取り直して、光が丘という町を巡っていきましょう。

知られざる光が丘の実態①:まるでタワマン群?な団地

光が丘と聞いて、東京近郊の方なら団地群を思い浮かべるのではないでしょうか。実際、町を南北に走る通り沿いにはたくさんの団地が立ち並びます。
さて、この「団地が立ち並ぶ」という情報から皆さんが思い浮かべるのはどんな光景ですか?筆者の知識の範囲内だと、
・3〜4階建て、同じ形の建物が数棟並ぶ
・エレベーター無し
・鉄製のゴツゴツしたドアと部屋の中が覗ける郵便受け
・町の中心から少し離れたところにあるので、やけに広い駐車場がある
こんな感じです。筆者が幼いころ住んでいたアパートも(団地ではありませんが)おおむねこの様式でした。
団地ってどこも同じでしょ、と思いながら商業施設を後にし、町の様子を見に行きました。

!?

なんということでしょう、大小さまざまな建物が駅チカにひしめき合っています。これ全部団地です。右にちょっと写ったURの看板がその証です。もはやマンションでは?

まるでタワマンのような団地が光が丘の町を見下ろしています。エントランスまでちょっとだけお邪魔しましたが、ちゃんと各部屋の郵便受けがあり、エレベーターまでありました。それも商業施設にあるような結構立派なものが。こんなに立派な建物が団地なことも、駅チカに林立していることも信じられません。しかも団地群のすぐ横に飲食店があります。写真だけでも2件、他にもたくさん…。
ここで気づいてしまったのです。筆者の団地像は古い。そして田舎の話だということ。
23区内の、それも超駅チカの団地で4階建てではキャパシティが足りない、高層なのにエレベーターがなければ不便すぎる、たくさんの人が住むエリアなら自ずと商業施設や飲食店も栄える…。
さらに光が丘は団地が先にあったのではなく、計画的に作られた町。人が集まり、住みやすい町を目指して始まっているのです。
そう、大江戸線がガラガラなのに町が賑わっている理由がこれ。電車に乗らない距離に住んでいるジモティーの皆さんが、様々な施設が揃う光が丘駅前に集まってきているんです。1人で、グループで、徒歩で、自転車で…と、あらゆる人々が近所から訪れるのが光が丘。確かに、駅前がこれだけ充実していれば、わざわざ激コミの池袋や新宿まで出ませんよね。建物たちを見ても同じ形のものがズラリではなく、住民のニーズに合わせた様々な棟があるため、人の出入りもありそうです。町自体は昭和からありますが、中身は平成そして令和のライフスタイルに対応しながら進化を続けています。

知られざる光が丘の実態②充実の商業施設

駅を出たらガランとしたロータリーに閉店した個人商店と駐輪場…なんて光景は大都会東京の終着駅にはありません。
私たちが光が丘駅を出てすぐに迷い込み、人が多すぎて度肝を抜かれたのは「光が丘IMA」。大手スーパーマーケットの西友をはじめとしたテナントが軒を連ね、駅前にも関わらず郊外のイオンモール・ゆめタウンばりの豪華さ。

改札へのそれなりに長い階段を登ると、そこはIMAの地下、イマチカ(勝手に命名)であった。謎ですね。
改札を出ると自然とIMAに誘導され、気がつくとイマチカで夕飯のもう一品や食後のデザートを手にしている…恐るべし商業施設です。近くにあったら毎日行きます。

おいおい、OIOIみたいにエポスカードまであるじゃあないか。終着駅の商業施設なのに有名デパートと肩を並べていますね。さらに面白いのが左にある「光が丘ima’am」なる冊子。一見、広報ねりま的なよくあるやつに見えますが、その中身はなんと光が丘の情報だけを集めた超ローカルなもの。練馬区の大字に過ぎない光が丘単独で、しかも隔月で冊子一冊出せるなんて…と感嘆しつつ手はページをペラペラ。地域のイベントにグルメなど、ジモティー向けオススメ情報のオンパレードでした。駅チカの家(エレベーター付き・周囲に飲食店多数な快適団地)にOIOIをライバル視(※筆者の感想です)した超便利な商業施設、光が丘だけで用事の9割が済みそうです。住みたい。

ちょっとウロウロしただけで便利タウンだとわかる光が丘、当然ウロウロしたジモティー憩いの場となる喫茶店もあります。
ちょっと休みながらティータイム…で光が丘の人々が向かうのは、台湾発祥でタピオカが有名なあのお店?大都会光が丘なので定番のあのお店も当然ありますが、実はすぐ近くにタピオカが入ったドリンクがかなりお手頃価格で飲めるお店があります。

その名も「台湾SWEET DINING 桃園茶寮」。同じIMAの中にあるフードコートにあります。
写真にもう写ってしまっていますが、なんと定番のタピオカミルクティーが税抜330円から。あのお店のミルクティーはタピオカなしで税抜440円からなので、かなりお手頃。取材班もドリンクと、せっかくなので税抜180円の油淋鶏をいただいてみました。

ウーロンティはスッキリおいしく、油淋鶏もお酒のつまみに良さそうなちょうど良い塩梅の味付け。こちらのお店、チャーハンなどセットメニューもあるので、ドリンクとメニューを同時に、お手頃価格で楽しめます。
フードコートなので台湾茶寮以外にもテナントがたくさんありますが、総じてリーズナブル。訪問時はまだ午前11時過ぎ、昼食にはちょっと早いくらいなのにフロアの席は8割方埋まっているという盛況ぶり。駅チカなだけでなく食も充実しているなんて、ますます素敵じゃあないかIMA…!

ワンコインでお釣りのくる激安ティースポットでまったりした取材班。IMAを後にして団地群を抜け、整備された町を歩きます。

次に向かうのは…

知られざる光が丘の実態③巨大公園

都会に住んでいる人でも、ときには自然に触れたくなるもの。子どもの成長にも自然との触れ合いが重要だと言われています。
都会に住んでいる人は休日に、わざわざ地方へ自然と触れ合うために出かけるようですが、光が丘に住んでいればそんな必要はなし。なぜなら…

光が丘には東京ドーム約13個分という巨大な公園があるから。写真だけでもかなり広いですが、これはただの入口。全景は大きすぎて写真を何枚撮っても足りませんが、広場にグラウンド、遊歩道など充実の内容。例によって自転車や歩行者で大賑わいです。

取材日はたまたま地域のイベントがあり、キッズとほろよいピープルであちこち大賑わいでした。でも敷地がとにかく広いので、皆さん思い思いの場所で楽しんでいました。

なぜ23区内にここまでデカい公園があるのか?公園を管理する、東京都公園緑地協会のウェブサイトに解説がありました。

公園周辺は戦前は農村だったのを旧日本軍が飛行場に、戦後は米軍の管理下にありましたが昭和48年に日本へ返還され、その際に公園として整備したとのこと。元々が平野部で飛行場になったから敷地が広いんですね、納得です。
米軍管理下時代には「グラントハイツ」として、軍人の住居や商店などが立ち並ぶ町になったとのこと。現在、その名残はほぼなく、だだっ広い公園としてジモティーの憩いの場となっていますz
敷地内にも歴史を紹介する看板があります。よく見るとこの公園、光が丘と名乗りながら板橋区にもまたがっているようです。デカすぎる。

そして周辺もどんどん開発、いつしか団地群+商業施設+公園という欲張りセットが誕生。光が丘のみならず、周辺地域からもジモティーを引き寄せる町になったわけです。

現在は人が集まり賑やかな光が丘公園、実は敷地内に米軍でも飛行場でもない、近代日本の面影を残すエリアがひっそりとあります。

その入口がこちら。テニスコートのある右側とはずいぶん雰囲気が異なります。
ここは「屋敷森跡地」。元々ここは300年続く農家の土地で、飛行場にも住宅にもなることなく、現在も保全活動が行なわれているとのこと。現在、住居はありませんが、当時の面影を随所に残しています。

中に入るとこんな感じ。同じ公園敷地内でも、他とは雰囲気が全く違い、鬱蒼として人もいません。代わりに蚊がめちゃくちゃいます。

林の中に佇む、ジ⚪︎リ作品に出てくるような井戸。

本当は左側に腕みたいになっている部分がありキコキコして水を汲み上げますが、取り外してあるようでした。筆者はこのタイプの井戸、墓参りで水を汲む以外に使ったことがありません。
写真からわかる通り、ここだけ周囲の発展から切り取られたような空間が広がります。入場はもちろん無料、人もいないこんな空間が団地群の中に残っていることが非常に興味深いです。もしかするとジモティーは何も感じないのかもしれませんが、ヨソから来た取材班は大興奮。蚊にたかられ退散しましたが、ぜひ公園も屋敷森もじっくり見てまわりたいです。

まとめ:光が丘には全てが揃う

ジモティーにとっては便利な町、沿線住民にとっては終着駅な光が丘。余所者の視点から町を見ると、魅力ばかりで思わず住みたくなるようなポイントがたくさんありました。都心へのアクセスが良好、充実の商業施設、広大な公園…ここに来れば全てが揃う、コンパクトシティとして完成されているようにも感じます。休日に1日かけて、いやできれば1泊してでも、光が丘という町を楽しんでいただきたいです。例えば夜、帰宅する光が丘の人々にまじって大江戸線に乗り、リーズナブルフードコートで胃袋を満たして眠りにつき、翌朝は光が丘公園を散歩…実に素敵です。
ベッドタウンなのにホテルなんてあるの?と調べたところ、ちょっと離れますが笹目通り沿いに良さげなホテルがありました。ぜひ皆さんも光が丘を目的地として訪れてみてください。

(文:プニル 写真:ほきあ、プニル)

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集