【北陸ウミウシ日記】2023年7月7日 水温25.9~26.7℃ ブラジルのお姉さん
今日は、いつもの「水晶浜海水浴場」よりやや北の、美浜原発に近い「竹波海水浴場」で泳いだ。
竹波はまだ海開きをしていないため、人がいないだろうと予想したのだ。
パリピがいないことは、快適な海の第一条件である。
天気予報では、最高気温36度の猛暑日とのことだったので、ウエットスーツを脱いで水着だけで出かけてみたのだが、思ったほど気温が上がらず、おまけに、ここは川の水が流れ込んでくるため海水温も低く、海の濁りも強い。
今日は、2時間粘ってみたけれど、アメフラシ二種類と、知らないウミウシを一種類見つけただけだった。
それにしても、知らないウミウシを見つけると、たとえ地味な子でもうれしい。
クロコソデウミウシには、たぶん、これまでも出遭っていたのだろうけれど、私のウミウシアイの性能が上がったために見つけられたのだと思う。
海から上がって、カメラの画像をチェックしていると、ビキニのお姉さんが近づいてきた。
私のほかに誰もいないと思っていたら、潜っている間に訪問者がいたらしい。
「何、撮ったですか?」
お姉さんはニコニコと、カメラを指さして話しかけてくる。
「ウミウシです」
と答えると、両手を頭の上に角のように構えて
「海に牛、いるですか?」
と聞いてくる。
どこの方かな?
人懐こくて、お茶目だ。
「えーと、カタツムリって、英語でなんていうんだっけ。あ!スネイル、わかりますか?」
「スネイル?」
「えと、I’d rather be a sparrow than a snail の、スネイル」
これだけ世界的に有名な曲なら知ってるかと思い、歌ってみる。
「おお、わかります。カタツムリね」
何だ、日本語でよかったのか。
「そう。そのカタツムリの、殻がないのが、ウミウシ。海に住んでます」
わかったような、わからないような顔をしているので、写真を見せてみた。
「これ、ウミウシですか? 私、休みの日はいつも、海に来てるけど、見たことないね」
お姉さんは、きょとんとしている。
視界には入っていても、見えてないんだろうな。
だって、ちょっと前まで、ドッジボールサイズのアメフラシたちが、どこの海にもいたもの。
「岩にくっついてることが多いです。海藻の中にもいます。」
「あなた、それ、食べる?」
「いいえ、食べない。写真にとって眺めます」
「それ、楽しい?」
「はい、とても楽しい」
理解されない趣味だったようなので、今度はこちらからお姉さんにインタビューしてみた。
それによると、お姉さんは、ブラジルから越前市のM製作所に、働きに来ているらしい。
日本はまだ3年目。
仕事は、平日休みが多い。
いろんなビーチを見てみたくて、休みごとにあちこちの海水浴場に出かけている。
福井県の海は綺麗だ。
好きなことは車の運転。
すいすい進むので、でかけるのが楽しい。
ブラジルにいた時は、海から1時間くらいのところに住んでいたのに、いつも渋滞していて、海まで2,3時間かかっていた。
福井県は、どこに行っても空いてる。
とてもいい。
海がきれいで、空いているところは、いいところだ。
……全く同意見だ。
とても、日本人ぽいお顔立ちをしているので、日系の方なのかと思って聞いてみると
「おじいさんのパパと、ママが日本人です」
とのことだった。
綺麗な海のそばに住みたいと、ずっと思ってきて、夢がかなって嬉しいけれど、ここは冬がちょっと残念。
太陽が見えない。
だから、春になると、海に行く。
寒くても、広いところで太陽を見ると、元気になる。
……と。
どこまでも、感じ方が似ている。
「あなたも海、よく来る?」
「はい」
「では、また会うね」
「そうですね」
「じゃ、また!」
お姉さんは、誰もいないビーチを海に向かって、踊るように歩いて行った。
誰もいない海が好きなのに、誰かいると、話したくなるところもおんなじだった。
**連続投稿519日目**
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