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このタイトルで良いのか? #軍人婿さんと大根嫁さん

昨年末、ものすごく好きになった漫画がある。
コマkomaさんの「軍人婿さんと大根嫁さん」がそれだ。(芳文社のFUZコミックスから、現在4巻まで発売中)

都会育ちの職業軍人である誉(ほまれ)さんが、田舎の農家の跡取り娘である花ちゃんのところに婿入りしてくるところから話は始まる。

花ちゃんは、まだ17歳。
いつかは家を継がなくてはいけないのだろうし、いつかは自分も結婚というものをするのだろうと漠然と思っていた。
そこへ、ある日突然、旧暦と新暦を取り違えた誉さんが、遠方からわざわざ汽車に乗って、結婚するためにやってきてしまった。
お父さん同士で話はついていたのに、花ちゃんは知らされておらず、大きな軍人さんが来たなあ、と思っていたらそれが自分の婿さんだったわけである。
周囲は困惑するが、追い返すわけにもいかず、「せっかく来てくれたんだし」と、突如結婚式の準備が始まってしまう。

「今日初めて会った知らない人と、これから初夜を迎えるの?!全然そんな心の準備はできてないのにー!」
とパニックになる花ちゃんであったが、誉さんは
「今日はあなたも疲れたでしょうから、寝ましょう」
と何もせずに眠ってしまう。
……といったあたりが、1話目のあらすじ。

そこから、花ちゃんと誉さんの心の距離がどんどん近づいていって、お互いを愛しく思うようになっていくのがこの物語の核だ。

作者のコマさんは、とにかく背景情報(時代背景、社会背景、各々のキャラクターの過去、田舎と街の暮らしぶりの違いなど)をさりげなくかつ綿密に描き込んでくれるので、まるで自分がその時代にタイムスリップしたかのように、キャラクターの心の動きが違和感なく受け入れられる。

その上、キャラ付けがとても巧みなのだ。
読んだ人は、花ちゃんのことも、誉さんのことも好きにならずにはいられないはずだ。
花ちゃんは、純粋でまっすぐ明るく、時にいじらしい。
誉さんは、我慢が癖になってしまうようなしんどい環境で育ちながらも、一途で優しく、時に可愛らしい。しかもイケメン。

こんな、「売れないわけがない」漫画なのに、私の周りでは、それほど認知されていない。

ちなみに私は、Xに流れてきた広告で、この漫画を試し読みしてハマったクチだが、書店でこのタイトルを見ただけでは、きっと手に取らなかっただろう。
内容を正しく言い表してはいるのだけれど、何かが惜しいのだ。
タイトルを大きく表示してみる。

「軍人婿さんと大根嫁さん」

第一印象は「ダサっ!」ではないか?
少なくとも、私はそう感じた。
「婿さん」「嫁さん」という言葉のチョイスから、ちょっと昔の話なんだろう、ということはわかるのだが、「大根」が何を言いたいのかよくわからない。
「田舎臭い」「垢抜けない」イメージを伝えたいのか。
「大根足」からの連想で「太く逞しい様子」を伝えたいのか。

その点「軍人」は、日本に職業軍人がいた時代は限られるので、時代背景を一言で伝えるのに役立っている気はする。
しかし、「軍人」の堅くて冷たいイメージは「誉さん」と合っていない。
実際の誉さんの職業が軍人であっても、彼を表す一言として「軍人」が最適解だとは思えないのだ。

結果、「軍人婿さん」≠「誉さん」であり、「大根嫁さん」≠「花ちゃん」になっているように思う。

そして、極め付けは、なんとなくギャグ漫画チックなタイトルに聞こえることだ。
違うのにー。
全然違うのにー。
ハートウォーミングで、切ないラブストーリーなのに。

これならまだ「花ちゃんと誉さん」の方が良い。
一目で意味がわからなくても、余計な情報が乗っていない分、読む前から拒否してしまう層が減る。
略す時にも「ハナホマ」と可愛く呼べる。
今のままでは、「軍大(ぐんだい)」か?
いかつい!
あまりにもゴツすぎる!
これでラブストーリーを連想できるはずがない。

名前にいちゃもんをつけるだけのnoteになってしまったが、愛ゆえだ。
みんな、お願い買って。
絶対に好きになるから。

薄い割に高いのは同人誌の定め。
コマさんがどメジャーになったら「私、こんな初期からファンだったのよ」と自慢できることだろう。

Kindleなら、4巻のうち2巻がKindle Unlimitedで読めるのでお得!
ぜひAmazonへ。

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はんだあゆみ
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