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【読了】山本文緒エッセイ集「そして私は1人になった」「残されたつぶやき」
山本文緒を少しずつ読み進めている。
まとめて読む時間が取れないので、短編かエッセイだな、と思い雑誌に連載していたエッセイをまとめたものと、SNSへの投稿をまとめたものを読んだ。
後者は山本さんの亡くなった後に、ネットから掘り起こしてまとめられたものなので、ご本人による推敲も校正も経ていないのではないかと思う。
かつて私は、山田詠美の大ファンだった時期があり、著作の全てを追いかけていた。
けれども、美しい言葉で綴られる小説の数々に比べて、エッセイはあまりにも山田詠美剥き出しで、(もちろんファンには作家のプライベートが知れて嬉しいものだったが)再読に値せずと早々に手放した。
山本文緒のエッセイも同様で、友達と会って飲んだ話、買い物、引越し、猫などのトピックの合間合間に、自分語りが入る、言ってしまえば、盛り上がりのない話ばかりだった。
決して「エッセイの名手」ではない。
文章もあまり上手とは言えない。
それはある意味、フリーランスで引きこもって仕事をする人たちの宿命でもある。
毎日、そんなに事件なんて起きないし、ネタは日常に落ちていない。
けれども、私は彼女の「自分語り」の部分に、烏滸がましくも自分を重ねた。
人の中にいることが苦手で、1人の時間がないと息苦しくて、そのくせ孤独には耐えられない。
こんな自分ではダメだ、と自分を痛めつけるように仕事をし、酒を飲み、挙句、体と心を壊して「書けない自分には価値がない」と思い詰め入院するに至る。
特に「そして私はひとりになった」は、鬱が発症する前の、孤独と焦りを溜め込んでいた時期なので、全体的になんとなくひりついている。
詳しく描かれないが、離婚が(あるいは一度目の結婚生活が)彼女の「自分を信じる心」をズタズタにしたのではないかと想像する。
「残されたつぶやき」の方は、再婚しうつを経験した後の、憑き物が落ちた時代のエッセイがメインなので、諦念のような悟りの境地にあり、読んでいて楽ではあった。
幸せは、本人にしかわからない。
が、何かに追われるように生きて、しんどい思いを抱えながら、最期は「死にたくない」と思って亡くなる人生に思いを馳せてしまう。
著名な文学賞を二つも受賞し、収入もあり、作品も映像化されて幸せだった?
少なくともプラマイゼロだと思っていた?
もう誰にもわからない。
読後の感想は、「死んだらおしまいだ」「死んだら、SNSまで遡って人目に晒されるんだ」という怖さが先だった。
読みたいけれども読みたくない、本当に不思議な本だった。
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