新大河ドラマ「どうする家康」初回感想 〜殿は『三河弁ネイティブ』ではないのがよくわかった〜
地元愛知県を舞台にした大河ドラマが始まった。
愛知といえば「はいはい、名古屋ね」とひとくくりにされることが多いのだが、実は、名古屋を中心とする尾張文化圏と、岡崎を中心とする三河文化圏にはっきり分かれているし、使う言葉も違う。
三河の衆が出てくるたびに、お国言葉が聞けるかとつい耳をすませてしまうのだが、あの有名な三河弁の終助詞「じゃん(だ、である : 断定)、だら(でしょう、だろう : 伝聞、推量)りん、まい(しよう : 勧誘)」はなかなか出てこない。
記憶を掘り起こしてみると、「〜りん(〜せよ : 命令の終助詞)」は、女子はよく使っていたけれど、男子は使ってなかったように思う。
特に武士は、武家の言葉で話すのが一般的だったからなのか、身分の低い者の話す言葉も、方言が目立っていなかった。
西三河の民としては、その点で、少し物足りなさが残った初回であった。
それより何より、幼少期より大大名・今川義元公のお膝元駿府で育った元康(家康)くんは、文化的にも見劣りし、食べ物も貧弱で、こちらの記憶には全く無いのに、親しげに話しかけてくる岡崎の武将たちが苦手な様子が面白い。
そりゃそうだろうな、と思う。
子どもが初めて会う親戚のおじさん、おばさんを警戒するようなものだ。
向こうは生まれた時から知っていても、こっちは全然知らないのだ。
いきなり「馴染め」という方が無理だろう。
よくぞあの、主従の信頼関係の無さから、家臣団をまとめ上げていけたものだ。
今後、そのやりとりをどれだけ丁寧に描けるかが、面白さの肝になりそうである。
今回はとにかく、元康くんが「自分を本気で慕い、お家再興の夢を託す家臣たちより、育ての親みたいなものである、お金持ちで文化的でイケてる今川義元の方に、強く心を惹かれていた」ということがわかった回だった。
設定としては、こちらの方が無理がなく面白い。
人質に取られた屋敷で、日々、いじめに遭って「いつか見返してやろうと思ってました」では、ありきたりでつまらない。
それに、和平のために手元に置いた人質に、わざわざ自分を恨むよう仕向けていては、戦国の乱世に火種を増やすようなものである。
元康くんは、特に不自由もなく「こんなもんだろう」と思いながらすくすく育っていた、という方が説得力がある。
元康君にとっての、身近な憧れの大人が今川義元であった、というところなのだろう。
さて、決死の覚悟で米を運び入れた大高城から、ひとりガクブルで逃げ出す元康くんは、過去に魔王信長様と何やら因縁がありそうだったが、そのエピソードは今回はお預けであった。
次回以降のお楽しみだ。
初回としては、キャラクターの説明と背景の説明が、きっちりできていれば満点だと思う。
その点では「気弱でなかなか三河衆に心を開かない若殿」を松潤が上手く演じていたと思う。
戦国大河ドラマといえば、とにかく魅力的な脇役が話題となる。
ここ数年のものから、個人的な好みで思いつくまま挙げていくと
「真田丸」の石田三成(山本耕史)
「麒麟が来る」の斎藤道三(本木雅弘)
らがそれにあたる。
今回はどう見ても、信長様(岡田准一)と本多忠勝(山田裕貴)が人気を二分しそうだが、私は大森南朋さんが好きなので、「青天を衝け」の堤真一さんのように、おじさんのカッコ良さ、可愛さに魅了されたい。
あと、お笑い枠から参加しているハナコの岡部大君、ものすごく馴染んでいて、違和感が全然無かった。
本人の愛嬌溢れるキャラクターもあるのだろうけれど、やっぱりコント出身の人は、演技が上手いのだろうな。
それにしても、大河ドラマは、役者の布陣が毎回とんでもなくゴージャスだ。
楽しみがいくつもあって、途中でやめられない。
ここからどうやって天下人になっていくのか、全部知ってる話なのに、来週以降も目が離せない。
気持ちもお腹も弱い家康君の、これからが楽しみだ。
**連続投稿342日目**