【北陸ウミウシ日記】恩人を日本海にハメた日
地元・愛知県から、高校の同級生が日帰りで敦賀に遊びに来た。
その友人は、私に、海で使えるコンパクトデジカメ「OLYNMPUS Tg-5」のお下がりをくれた大恩人。
2年間、みっちり使い込んで傷だらけにしてしまったが、このカメラが来てくれたおかげで、私のウミウシライフはとても充実したものになった。
その恩人が「海で泳ぎたい、ウミウシを見てみたい」と言うのだから、ここは張り切っておもてなしせねばなるまい。
週末に来る予定だった夫の友人は、都合が悪くなり来敦延期になったので、今日、ぶっ倒れるほど遊んでも、なんの支障もない。
持てる限りのホスピタリティを注ぎ込み、お相手することにした。
まずは装備。
私が貸せるものは、全部貸すつもりで準備する。
海には、クラゲやゾエアが出ているというから、フード、グローブは必須だろう。
刺されて腫れたりしたら、せっかくの海が台無しだ。
体の覆えるところは、すべて覆いつくすつもりで挑まねばならぬ。
泳げないと言っていたから、ライフジャケットも必要かな。
あと、沖は水が冷たくなりつつあるから、ウエットスーツ(袖なし、上だけ)も貸してあげよう。
これだけでも、かなり暖かいはずだ。
そして、肝心のマスクとシュノーケル。
これは、海で拾った新品同様のもの(安全性は夫で確認済み)があるからOK。
フィンをどうしようかと迷ったが、初心者にはかえって扱いづらいと思うので、無しで。
これだけあれば、充分、海を楽しめるだろう。
じっくり考えて、前夜から準備していたのに、敦賀半島の手前の信号で、ライフジャケットを忘れたことに気づく。
「まあ、海水は淡水より浮きやすいし?ウエットスーツで浮力も出るし?」
取りに戻るのが面倒で、そのまま集合場所へ向かう。
ホスピタリティ、どこ行った?
目的地の水晶浜は、北側半分の駐車場が閉鎖されており、本格的に夏が終わったことを知る。
でも、バイクには閉鎖なんて関係ないので、すいすいと最北端の岩場に到達。
最初は、浅瀬でシュノーケルに慣れてもらう練習をして、それから、本格的にウミウシを探しに出た。
ところが、である。
ウミウシはまあまあいたのに、体長わずか3cmの彼らの姿は、友人には見えていなかったらしい。
なぜなら、近視で乱視で老眼でおまけに緑内障を患っているとかで、至近距離でないと小さいものが見えないというのだ。
「ここにいるよ、と指さされても、どれのことだか、わからなかった」
と友人は言った。
近視で乱視で老眼、という条件は私と同じなので、なんとかなるだろうと甘くみていたが、そっかあ、潜れないと近づけないもんなぁ。
そこは計算外だった。
しかし、計算外の事態がもう一つ。
この日の水晶浜は、とんでもないベストコンディションだったのだ。
波はなくベタ凪、海の透明度も高い。
5メートル下には、海藻の森が揺れ、その間を魚の群れが、次から次へとわらわら湧いて流れてくる。
私はこんな時、海底世界を天界から見下ろしている神様のような気分になる。
「空を飛んでるみたいだ」
と友人が言った。
うん、それ!
その感想は、私が日本海にどハマりした時といっしょだ。
みんな最初は、この海中飛行の感覚にやられる。
そのうち、写真を趣味にしている人たちは、見たことのないこの光景を撮ることに夢中になり、最後にウミウシに行き着くのだ。(たぶん)
友人は、日本海のシュノーケリングに大変満足したようで、
「面白かった!またやりたい」
と言って帰って行った。
よかった。
喜んでもらえて嬉しい。
私も、来年も再来年も、できればここで泳ぎたい。
水晶浜が最高過ぎて、そんな感傷的な気分になってしまった。
明日は引っ越しの見積もりだー。
**連続投稿591日目**
この記事が参加している募集
最後まで読んでくださって、本当にありがとうございます。 サポートは、お年玉みたいなものだと思ってますので、甘やかさず、年一くらいにしておいてください。精進します。