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美味しい漫画

よしながふみさん原作の『大奥』が実写ドラマになった。

華美な大奥を倹約に方向転換させ、幕府の財政難に立ち向かう果敢な将軍・吉宗公役は、スーパーモデルの冨永愛さん。
顔つき、話し方、物腰、見事なハマり役だったが、最初の登場シーンでは、
「草彅剛くんの女装ではないか?」
と一瞬思った。
今更気づいたけれど、お二方はとても顔が似ている。
頭蓋骨の形がそっくりなんだと思う。

話がそれた。
ドラマを見て、久しぶりに読み返したくなり、原作漫画を引っ張り出してきて開く。
「あれ?でも、そういえば、私、この人の漫画って『大奥』しか知らないな」
と思い直し、他にどんなの描いてたっけ?と探したら『きのうなに食べた?』が、一巻無料で読めるサイトがあった。
これ幸いと、開いてページを繰る。

読み終えたら、お腹が空いていた。
いわゆる、飯テロに遭ってしまったのである。

これには、勝てない。
欲求に、ダイレクトに訴えかけてくるんだもの。

ストーリーより何より、出てくる料理の数々があまりに美味しそうで、食べてみたくて、すぐさま「きのうなに食べた レシピ集」を探して、密林のカゴに放り込んでしまった。

時折、こういう「食のシーン」がとんでもなくうまい作家さんがいる。

私にとっては、小池田マヤさんが、まさにそれで、彼女の描く料理の数々は本当に美味しそうだ。
「家政婦さんシリーズ」に出てくる、ちょっと小洒落た料理も好きだが、私は彼女の、この漫画で釣りにハマった。

自分で釣った魚を、こんなふうに自分でさばいて、美味しくいただいてみたい!と思ったのだ。

おかげさまで、小出刃包丁も買い込み、たいていの魚はさばける自信がついたし、そんなに好きではなかった魚料理にも目覚めてしまった。
何より、釣りの楽しさを知ってしまうと、もう以前の生活には戻れない。

「美味しそう」から、人ひとりを海に向かわせることができるなんて、すごいことだと思う。

美味しい料理の漫画は、その完成形だけでなく、料理の工程、盛りつけ、食べている様子まで見ていて楽しい。
それが、読者の行動を変えてしまう。

「書く」「伝える」ことの本来の目的は、情報の伝達と、その結果、行動の変容を促すことにある。
漫画でこういう経験をすると、私も誰かの行動を変えられるような文章を、死ぬまでに一度でいいから書いてみたい、と思う。
とても、難しいことだけれども。

でも、「美味しそう」から、変わる暮らしって、いいと思わない?
私も「美味しそう」に代わる「いいなあ、やってみたいなぁ」をちゃんと届けられるようになりたーい!のである。

**連続投稿353日目**

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