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アフリカの布を買う

もう間も無く、オリンピックが始まる。

私は、競技はほとんど見ないのだけれど、趣向を凝らした開会式だけはけっこう楽しみにしていて、前回の東京オリンピックも各国の選手団の入場行進をチラ見しながら、縫い物をしていた。

カラフルで派手で元気が出るのは、アフリカのユニフォームに多い。
原色をベースに大きな柄が目立ってかっこいい。

「これ!これと同じようなのが欲しい!」

と思った私は、ネットで探し「ダシキ」というアフリカの民族衣装を扱うショップを見つけて、自分用に一枚買った。

これが「ダシキ」画像は楽天ショップより

暑い国の服だから勝手に薄手だろうと予想していたのだが、生地はしっかり厚みがある。
模様は「織り」ではなく「プリント」でくっきり発色が綺麗。
それから、なんとなくアフリカ布のファンになった。
東南アジアの薄くて着やすい「だらーん」とした服も好きだが、厚手のアフリカンプリントは、なんとなく晴れの日にも着られそうではないか。

そんなふうにアンテナを貼っていると「松山にアフリカ布を扱うショップが初来店する」ことをSNSで見つけた。

これは行くしかない。
普段、僻地ばかりを探検し、松山のまちなかの地理に全く詳しくない私だが、アフリカ布のためなら人ごみだって耐えられる。

いよてつ高島屋の7階催事場に、そのショップは小さくお店を広げていた。
どれもこれも可愛い。
目移りする。

迷いに迷って、ワイドパンツを作るための、ろうけつ染めの布を3ヤードと、シャツを作るためのこれぞアフリカンプリントな生地を2ヤード買った。

ショップの店長、中須俊治さんは、もともとは大学卒業後、京都の信用金庫に勤めていた方である。
仕事で後継者のいない染め職人さんと出会い、その技に惚れ込むと、融資ではない方法でその経営を支えることはできないかと、退職して起業の道を選んだ。

中須さんは、とにかくすごい行動力の人だ。

大学時代に一年休学して、全く言葉もわからないまま「とにかく日本人がいないところにいきたい」と向かったのが西アフリカのトーゴ共和国。サハラ砂漠の南に位置するアフリカ最貧国の一つである。
他のアフリカの国々がボランティアを募集している中、なぜか「ラジオDJ」を募集していたところもユニークで気になったという。

現在、Wikipediaでトーゴ共和国を調べると

▶︎日本との関係
日本はトーゴへのODAを実施し、現在もそれは続いている。
資金援助の他にも、放送器材を提供して国営放送を支えている。
(中略)

▶︎マスコミ
トーゴの代表的な報道機関にはトーゴ通信社(英語版)(ATOP)が挙げられる。
トーゴ通信社はAFPと国際ニュースを提携している。

と、あることから、もしかすると、放送用のハードはあってもソフトの作り方をよく知らないトーゴの人たちが、自国のオリジナルニュース制作の担い手を育ててくれる人を探していたのかもしれない。

とにもかくにも、中須さんは、持ち前の人懐っこさを活かして、公用語がフランス語という絶望的にコミュニケーションが取れない国で、取材を敢行し4本の番組を制作した上、たくさんの友人知人をトーゴに作り日本に帰国した。

その時の経験から、トーゴの文化と地元京都の文化を掛け合わせて、三方よしとなるような商売ができないかと考えて立ち上げたのが、ブランド「アフリカドッグス」だ。

今、そのブランド名を検索すると、社長である中須さんの「事故」という不吉なワードが検索候補に並ぶ。

そう、中須さんは、仕事で訪れたトーゴで車の正面衝突事故に巻き込まれ、死の淵から蘇ったことで一躍有名になってしまったのだった。

上の記事は23年9月のものだ。
まだ一年も経っていないのに、中須さんはニコニコショップに立っている。
普通なら死ぬか、良くて半身不随と言われた事故に遭いながら。

まさかそんな稀有な経験をされてきた店長に会えるとは思わず、可愛い布だけを求めて行った高島屋で、私は30分も話し込んでしまった。

愛媛初上陸の、アフリカドッグス。
7月15日月曜日まで開催中です。

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はんだあゆみ
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