ヒポクラテスの憂鬱/中山七里

https://www.shodensha.co.jp/hippocrates/

読了日2019/10/31

もっとまじめに勉強していたとしても、
私は医者なんて目指せるだけの頭はなかったと思う。
でも医者になれていたら、法医学の道に進みたかった。
いつからそんなことを思うようになったのか覚えていないくらいむかしからだけど、
とにかく法医学関係の話が好きだった。

名作良ドラマとして名高い「アンナチュラル」は食い入って見ていた。
(監察医朝顔は見てない。タイトルに監察医とあるのに所属が法医学教室と聞いて???としか思わなかったので)

で、ふと思った。
私、監察医務院ってどんなのか知らないや。
で、ぐーぐる先生に聞いてみた。
すると意外な出会いがあった。

おおまかな内容だが、
監察医及び監察医務院に対する不当な訴えを述べているサイトだった。
なんでも親が検視解剖の対象にあったのだが、
その扱いに対する不満のようだった。
解剖は遺族の承諾を得なければならないはずなのに、そんなものなかった。
親も自分も国家権力が嫌いだから従いたくなかった。
と、まあ、そんな内容だった。

ほほん。
ほお。
はあ。
と。

趣味とはいえ法医学関連の書籍を10冊以上有して読み漁っている身としては、
遺族を解剖された悲しみは理解するにしても、
ちょっとなあ……
と思っていたら、書き込まれているコメントにも私と似たような意見があって、
まあそうだよねと思ったり。

ただ
「そのとおり!」
と思わされる一文もあって。
上記のサイトの主は都民なのであって、
都には監察医務院があるから不審な死は解剖にまわされる。
だが監察医務院のない県などはそういったことがあっても解剖されないケースが多い。

解剖されたくなかったら他県で死ねということか!

と憤る一文を見て、
おお、変死体の解剖制度をよくわかってるなと感心した。

まあ、
尊属殺人が決してなくならない世の中なのだから、殺人も疑わしい変死体ならば遺族の承諾を得ずに解剖することもやむなしだろうとは思うのよ(これが俗に言う司法解剖)。
それに国家権力が好きとか嫌いとかも、殺人の可能性が少なくとも絶対ないと言い切れなかったらさ、やっぱりやむなしじゃないかと思うの。
どんなに国家権力が嫌いとはいっても、災害が起きたら自衛隊が助けに行くみたいにさ。

(私も身内がそんな死に方してみないことには、そのサイトの人間の気持ちは根っからは理解できないから強くは言えないけど)

そんなこんなで人並みよりは法医学関連の知識を、
無駄につけている私はとにかく、
出来の良い法医学を扱った小説がめちゃくちゃ好きだ。

だからつまり、
ヒポクラテスの誓い
ヒポクラテスの憂鬱
この2冊がどツボにハマるくらい好きだ。

続編希望なので、ファンレターをつづる予定である。
(切手代まで値上がりしやがって……)

ヒポクラテスの憂鬱
舞台は「ヒポクラテスの誓い」と同じく、
埼玉県にある浦和医大の法医学教室。
正式に教室の一員となった栂野真琴、キャシー准教授、そして法医学教室の帝王こと光崎教授。
三人に事件を持ち込む埼玉県警察の刑事、古手川が持ってきた話題。

コレクター。
そいつによりネットに書き込まれているのは、
今後県下で発生する自然死や事故死が本当に正しいかどうか見極めろ。
というもの。
犯罪予告をにおわせるものではないが、
どうにも穏やかではない。

それを前後に発生した、
アイドル転落死事故。

真琴は古手川に引き回され、
光崎にこき使われ、
キャシーに遊ばれ(主に古手川のことで)、
その他の事件とも関わりを持つことになる。

このシリーズは光崎教授の解剖執刀シーンがリアリティにあふれていて、
それによって解明される謎の爽快感がたまらない。

と同時に、
真琴と古手川の関係がもう私のような人間には大好物なのである。

悶える。
もうあなたたち頼むから付き合って。
この関係性が好きだ。
似た者同士で噛みつき合っていたような二人が、
お互いが仕事に対して真摯な姿勢を見ているうちに惹かれ合う。

これ。

これ。

恋愛小説は恋愛をメインに書かれるけれど、
私は仕事メインで恋愛サブの話が好きなんだ。

たとえるなら、
乙ゲーより牧場物語みたいなやつ(わかりづらい)。

二人のビミョーな関係は「〜誓い」でも取り上げられていたけど、
今回で一気に進展してくれて、
それはもううれしくてたまらない。

ラストの一文が、
その先。
教えて。
誰か。
私に彼らのその後をくれ。

でも誰かじゃダメ。
中山七里先生じゃなきゃダメ。
だから私はファンレターを書く。

コレクターの正体は、
読んでいると途中でわかる。
「あっ、こいつアヤ〜(怪しい)」
くらいのノリで←

ただし、
コレクターなんて七面倒臭いことをしやがった理由が、
ひどく下衆を極めている。
むしろ自分の犯行を隠すために、
そんな手間のかかることをするか?
と思うのだが、
するのかな。
盲点をつく、というためには。

そして本書でもどの法医学関連書籍でも、
再三取り上げられている話題なのだが、
予算がない。
今の日本はどこにお金があるんだろうね?
ってくらい、お金がない。
それが法医学関係は特になくて、
監察医務院という制度だって本当は全都道府県に置く必要があるの。
それが出来ないから、
地域間での不平等につながっていく。

難しい〜。

冷静に考えたら、
私、頭良かったとしても医大入るだけのお金とかもなかったわ〜。

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