恋するオスが進化する/宮竹貴久

https://www.kadokawa.co.jp/product/201216031479/

読了日2019/10/15

超巨大台風で東日本一帯に危険情報が出たため、数年ぶりに関東住まいの友人たちに安否確認のメールを送ったところ、2歳の息子がいるという事実を知らされショックを受けたので私は台風どころではなかった。

ジェンダー関係の本を読んでいると、私は少なくとも現状はまだ結婚できない。
自立していないし、メンタルにもうっすら不安がある。(息子のいる友人こそメンタルがかなり不安なヤツだったが)

だが私はかなり結婚願望が強かった。
20歳そこそこで交際していた恋人と本気で結婚したかったし、20代前半で子どもを産むのがライフプランとしての理想だった。
理想は理想だからこそ美しいのだけど。

しかし冷静に考える。
私の子どもとはすなわち、私の遺伝子を継いでいる。
この虚弱体質の脳足りんワガママネガティブ女の血を引いた子である。

かわいそう過ぎやしないか?

人は考える葦だそうだが、実際のところ私はこの言葉の意味が分からない。
だが考えることはいちおう、できる。多分。

だがら考える。
私はこの世に遺伝子を残すに値する人間なのだろうか。
私なんかの血を引いたところで、ますます生存競争が厳しくなる世界を、果たして私などの子が生き延びられるのだろうか。

ま、相手にもよるかもしれんけど。
斎藤工あたりとの子ならイケるかもしれんけど。

とにかく、私の子が果たしてこの世を生き延びられるだろうか。

そう考えると、非常に不安なのだ。
私の一存で結婚して妊娠して出産して、子育てをして、その子は幸せになれるだろうか。

私自身この世に生まれてよかったと思った回数が多くない。
一時は本気度高めに死にたかったし、泣きながら焼きうどん作って泣きながら食べて泣きながら小説を書いていたことがある。(その小説のせいで人生が狂ったともいえる)
それどころか(両親いわく)生まれてくるはずではなかったような話も耳にして、ますますなんで生まれてきたんだ私はと思う。
もしかするとほかの子がここの両親の子になるには荷が重いから、人間経験何度目の私が行っときますか! くらいの気持ちだったのかもしれない。
だとしてももう少し経験値を上手に割り振っておくべきだったな私のバカ。

自分がそんな思考をしておきながら、わが子にはこの世の幸せをすべて味わって楽しく生きていってほしいと思うのだから、人とはなんて欲張りなんだろう。

だからもしかすると、私が私の子にしてやれる最大の子孝行は、私の子としてこの世に産み落とさないことなのかもしれない。
だから無性に独り身がさみしくて結婚したくて周りの結婚出産ラッシュに遭っても、私は私の子のためには、この意識を貫いた方がいいのかもしれないと思う。

でも結婚したい。
子どもも欲しい。
恋人にそばにいてほしい。
あーあ。

「どうすんのこの先」なんて聞いてくるくらいなら最初っから上等の子どもにしておけよ。

親が親なら子も子だ。

その点、ヒト以外の生物はいい。
なんせ意識がない。

どうやら本書によれば、鳥類は(多分それ以外にもいるだろうが)嫉妬しないらしい。

嫉妬をしない。

うらやましい……。
嫉妬心の塊である私は、生まれ変わるな鳥になりたいし、なんなら今からでもいいから鳥になりたい。
よく空を飛ぶ夢を見るから、多分飛び方とかすっごい上手だと思う。
欲をいえば鷲とか鷹とかフクロウとかカッコいいやつがいい。
猛禽類が好みだ。

それはいいとして、とにかくヒト以外の生物とはとにかくなんとしてでも子孫を残そうと躍起になっている。
ヒト以外の生物は「自分」という概念がないのだろうね。
だから迷わないんだろう。
私みたいにウジウジと、こんなやつの遺伝子を残していいのだろうか、なんてまどろっこしいことは考えていない。

とにかくセックス、セックス、セックス。

まあ交尾なんだけど。

奴らは生きること、食べること、そして子孫を残すことに念頭をおいている。
これくらい単純ならヒトも生きやすいのにな〜。
複雑だから進化できたのかもしれないけど、弊害が過ぎるよ〜。

そして連中もかわいそうである。
いかに自分の子孫を残すか必死なのに、人間がやつらの生態を知りたがるばかりに、ペニスを引き抜かれたり焼かれたり、まあ、ヒトならばとの想像はしたくない。
控えめに言って地獄だな。
実験のためだし、なんなら害虫駆除の一端も担っているので理解はしやすいが。

まあ私は虫嫌い(カマキリ絶滅推進者)なので同情とか一ミリどころかマイクロもしないんだけど。

死ぬほど嫌いなのにやけに夢に出てきやがるカマキリでは有名な話だが、やつらのメスがオスを食う。
田舎民なので私も見たことがある(嫌いなのに)。
ほんとえげつねえ食い方をする。
やつらは頭から食べる。
カマキリにはたい焼きをどこから食べるか論争などありえないだろうな(真ん中から割る派)。
頭から食われるのは本当にえげつねえ光景だけど、もし仮に虫に意識とか痛覚とかあるのだとしても、メスは頭というメインコンピューターから食ってくれて真っ先にラクにしてくれるというのは、ある種の優しさなのかもしれない。

と思ったが、本書によると頭を食われておきながらしっかり交尾だけはするオスもいるらしい。
メスがオスを頭から食べるのは多分、残った下半身から精子を絞りとるためなんじゃなかろうか。

どっちにしろ気持ち悪いからやっぱり絶滅してほしい。

ところで前に読んだ本には男性の性染色体であるY染色体がなくなる危機が記されていた。
虫の世界でもオスが消える危機が訪れているらしい。
しかもどうやら、細菌感染のせいで起きている。

何より驚きなのは、その細菌がオスをメス化させることだ。

オスをメス化。

安心してほしい。
私も最初、何を言っているのか(書いてあるのか)わからなかった。

オスをメス化。

最近(Not細菌)、BL界隈ではオメガバーストというものが流行している。
男なのに子どもが産める、という世界観らしい。
理屈は知らないのだが、とにかく子どもが産める男がいるというのだ。

もしかすると、オメガバーストの元ネタ……?

この細菌は発見者にちなみ、名前をボルバキアという(強そう)。
これに感染したメスは、ふつうに考えてオスメスを半々ずつ産む。
だがそのオスとなるはずだった個体を、このボルバキアはメス化させる。
具体的にいうと、遺伝子はオスなのに体はメスになってしまう。
となるとこのオスなのにメスの個体はオスと交尾するしかなくなる。
ボルバキアはメスから遺伝するので、効率よく細菌感染して増えていく。

本当に新手のBLの世界観か何かか。

さいわい(?)ヒトには感染しないらしいが、もし感染したら……と考えると、私のSF脳が加熱する。
これで一本書けそうだ。

小説のアイディア探しにこうした本を読み、資料として生かすべくメモを取るのだけれど、生物学っておもしろい。
理数系が悶えるほど苦手な私は、なぜか生物だけは成績がよかった。
長じると悶えるほど生理痛が苦しい私は、男女の生殖関係に興味を抱いた。
その辺が組み合わさってとにかくヒトや他の生物問わず、性行為生殖交尾、進化といったものに興味がわいた。

中でも特におもしろみが強いのがこの宮竹先生の本で、まだあまり一般的には出回っていない(私が知らなかっただけで有名かもしれないが)
「性的対立」
というキーワードだった。

宮竹先生の本はこれで2冊目で、前書と内容の多くはかぶるのだが、やはりおもしろかった。

生物学に興味がある人と、
生物学が苦手だけど年ごろの男子ならば絶対興味を抱けると思う。
セックスセックス言うからな、この本。

いや、やっぱり男子とだけ分けるのはやめよう。
ジェンダーの意識改革をせねば……。

それに多分、これに関してはやはりBLを愛するお姉様方の妄想を捗らせる良き知識がつまっていると思うのだ。

で、私にとってのオスはどこかしら。
絶対に食べないから出てきてほしい。
約束する←

いいなと思ったら応援しよう!

篝 麦秋
サポート代は新しい本の購入費として有効活用させてもらいます。よろしければお願いします。

この記事が参加している募集