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【歴史解説】本にまつわる5000年の歴史!1番初めの本ってなんだ?【諸星めぐる】

みなさん、本は読みますか?
最近忙しくて読めてない……という方も少なくないかと思います。
今回は、そんな「本」をめぐる歴史について解説したいと思います。

めくるめくめぐるの世界へようこそ、書店員VTuberの諸星めぐるです。

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本ってなんだ?

そもそも、みなさんは「本」と言われたらどんなものをイメージするでしょうか?

書籍または書物とも呼ばれ、紙・木・竹・絹布などの軟質な素材に、文字・記号・図画などを筆写、印刷し、糸・糊などで装丁・製本したもの

Wikipedia

なんだか、「など」おおくね?
これだけの定義であれば、ノートでもよくね?
そもそも、電子書籍やオーディオブックはどうなるの?
そう思う方もいるのではないでしょうか。

実は、一言に「本」と言っても、素材 内容 製法 について、それぞれの歴史が異なるために定義がとても難しいのです。


このため、今回はそれぞれの歴史を解説していきます。

本の歴史「素材」

本は、今では一般的な素材である「」が発明される前から存在していました。
そして、紙の代わりに使われたものは地域によって異なります。

アバウトではありますが、5000年前のそれぞれの文明の中に「本」とその素材の始まりは散見されます。

彼らは、それぞれの自分たちの「文字」によって記録を【何か】にまとめてきたのです。


「死者の書」エジプト


◇古代エジプト文明

5000年前のエジプトは、「パピルス」による本が登場します。
ちなみにパピルスは、今日の「ペーパー」の語源でもあります。

パピルスはナイル川のほとりに茂るカヤツリグサ科の植物の1種、カミガヤツリの地上茎の内部組織から作られます。

①地上茎をスライス、叩いて伸ばし、隋を取り出す。
②水に浸し2,3日放置
③短冊状の茎を交互に編み合わせる
④重しをして乾燥させて、出来上がり

パピルスのアバウトな作り方


パピルスの原料


一般的にイメージする【紙】ではないことがわかるかと思います。
パピルスは縦30センチの横長で、折り曲げには弱く、そのため何枚もついで、長いパピルスで巻物を作りました。
長いものでは、エジプトで30メートルのパピルスの巻物があるそうです。

この「本」は4000年以上前から3000年間作られていきました。

使用方法としては、収穫の記録や死者の書など、様々な使用法があったといいます。
また、エジプトには当時最大級の図書館があったことも有名です。


羊皮職人(ドイツの木版画)

羊皮紙

当時パピルスの輸入をしていたペルガモン(現トルコ)では、
気候の違いから傷みやすいパピルスの代わりに、2世紀ころからはヒツジやヤギの皮からつくる羊皮紙(パーチメント)を主要な素材として置き換えていきます。

子牛の皮を使ったものはヴェラムと呼びます。

羊皮紙はインクが染み込みにくいので、書き損じは削って直せるという利点があり、そのため公文書などが改竄されることもしばしばありました。

また古い写本は表面を削って再利用することがあったそうです。
その後、17世紀頃まで教会の楽譜などとして活躍します。


くさび形文字の刻まれる粘土板

◇メソポタミア文明

5000年ほど前メソポタミア文明では、「粘土」による絵文字を記すようになりました。
紀元前2400年ころには「くさび形文字」になります。

この素材である粘土は、チグリス川・ユーフラテス川の上流から運ばれた粘土の層が豊富にあったためであるとされます。

そこで取れた粘土板をアシの茎を三角形に切ったペンを押し当てて書き、
乾くまで待つと「粘土板」の完成です。

大事なものは窯で焼いて丈夫にしていました。

粘土板には神話や寓話、世界で最も古い地図などが残っています。
当時のバビロニア人は、世界は「円盤の形をしていて、周りは海が輪のように取り囲んでいる」と考えたことが、その粘土板からわかるのです。

紀元前2,000年の古代バビロニア人が契約相手などに送るために、粘土の封筒もありました。

◇アジア

アジアに目を向けると、推定2世紀の写本断簡があります。
インド、スリランカ、タイでは生き物の命を取ってはいけないため、動物たちの皮で本を作らずヤシ科の木の葉に書いた「貝葉(ばいよう)」を「本」の素材としていました。
これは貝多羅葉(ばいたらよう)の略称です。

仏教の経典は初期には「貝葉」に書かれたことがわかっています。


◇黄河文明

中国では3000年前から亀の甲羅や牛の骨・青銅などに「甲骨文字」を刻んできました。
これらは儀式的な用いられ方がおおく、気軽に使い始めたのは「木簡」「竹簡」の方です。

木簡は細い板に、文章を一行ずつ書き、入らないときは広い板にしていました。
長い文章は何枚もの木簡に書いて、ひもで編んでまとめて「本」にしていた。
当然のことながら、とても重かったそうです。
また、他の素材として絹に文字を書くこともあったのですが、こちらはとても高価でした。

これらのお互いの短所を補うために、紙の発明へとつながっていくのです。

本の歴史「紙の発明」


紙の明確な発明者は不明です。

ただし、中国の蔡倫(さいりん)が改良発展させた製法がさまざまな地域に時間をかけて広がっていったとされます。

2世紀頃の中国

麻くず、魚の網、ぼろ布などや植物の皮も入れて石うすで砕き、すのこですいて作る【製紙術】が発明されます。


日本の和紙

この製法で作られた紙は6世紀の仏教の伝来とともに、日本に入ってきました。
その後7世紀には国内での製紙も盛んになっていきます。

こうして、8から9世紀には「流しすき」による和紙が生まれます。


洋紙

西洋に紙の作り方が伝わるのは8世紀ころ。
サマルカンド(現ウズベキスタン)に工場ができたとされます。

この製法はシルクロードを通って10世紀になり、エジプトでも製紙工場ができます。

15世紀になると、ようやくヨーロッパでも紙の本が作られていきます。
この同時期に、「本」にとって画期的な発明、活字による印刷が起きます。


本の歴史「印刷」


印刷の源流

印刷のもとになるものとしては、次の3つが挙げられます。

①ハンコ(印章)②拓本 ③型を使って模様を染める

①はメソポタミア文明に存在していました。
円柱の型にインクを塗り、紙の上に滑らせて版を押す。
この原理は今の輪転印刷機の原理と同じです。

②は5世紀の中国で石碑に彫られた文書を拓本にとることが始まりとされます。
ハンコとことなり、写す文字や図の向きは反転しないのが特徴です。

③はインドにある布模様染、「印仏」になっていきます。
いわゆるスタンプとして、もともとは全部1枚の板を使っていたものが、だんだんと仏像それぞれの判へとセパレートされていったようです。
この製法は、やがてインドから中国、日本へと伝わっていきます。

また、現存する世界で一番古い印刷物は8世紀の日本の【百万塔】というものです。
お経が入った木製の3重の塔が、法隆寺などに収められています。
ただし、どうやって刷ったのかは不明です。


グーテンベルク

ヨーロッパの印刷

ヨーロッパでの木版印刷は14~15世紀からありました。

そして、15世紀の初め
グーテンベルク(ドイツ)が活字による印刷を発明します。

鉛活字を別に作成し、「プレス式印刷機」を使って紙に刷りました。
これにより【聖書の印刷】が1450年ころから始まり、50年ほどで1000もの工場が生まれ、大量に聖書という「本」が印刷されます。

活版印刷の活字


その他の活字印刷


活字印刷は中国では11世紀に粘土による活字印刷、木の活字による印刷もありました。
朝鮮で銅活字は、13世紀に生れています。

日本では15世紀中ごろまで一枚板の木版で印刷されていたした。
16世紀末には遣欧少年使節の彼らが、1590年に九州に帰国した際、西洋式の活字や印刷機・技術者を連れてきました。

さらに別ルートとして、1593年。
豊臣秀吉の侵攻により、朝鮮から活字印刷技術が持ち込まれます。

ただし、これらはキリスト教禁止の政策、また文字数が多い日本語の事情に合わなかったために日本に根付くことはありませんでした。

ここから200年「木版印刷」が続けられ、西洋式印刷は19世紀中ごろにやっと西洋式製本による本が登場します。

同時に紙も、和紙から洋紙へと大きく変わり、
現代ではその紙も用いない「電子書籍」や本を読み上げる「オーディオブック」が登場しています。


シャーロックホームズの初版本たち


本という「オブジェ」

いかがでしょうか。
ざっと5000年の本の旅ですが、ここから印刷技術やインク、タイプライター、パソコンの登場などとさまざまな発展を遂げる「本」の旅はまだまだ続いていきます。

ほかにも、世界最古の印刷物である「百万塔」やグーテンベルクの「聖書」のように、世界を変えた「本」はたくさんあります。

ここらへんはまた、別の機会にまとめます!

今回はここまで。
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それでは皆さん、さようなら✕3