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編集者・竹村俊助さん「文章を書くことで、そもそもなにを伝えて、なにをしたいのか?」イベントレポ

「顧問編集者」という耳慣れない肩書きの仕事を、今夜参加したオンラインイベントではじめて知った。

全体を通して「編集」がメインで語られていて、イベントタイトルにある「『書くスキル』を高める方法とは?」とは、「編集」目線をとりいれ、より読み手に届きやすい文章を書くスキル、ということなのかな、と理解した。

1番心に残ったメッセージは、イベント最後に竹村さんが視聴者にくださった言葉。

文章を書くことで、そもそもなにを伝えて、なにをしたいのか?

どかんと心に響きました。

イベント概要

ゲストは、編集者の竹村俊助さん。話題のベストセラーを多数手がけてこられたほか、Twitterでは4.2万人のフォロワーをもち、文章を書くコツを発信しているnoteのマガジン「WORDSの文章教室」は、累計150万PVを超えているのだそう。2020年7月、初の著書『書くのがしんどい』を出版。

聴き手の高橋朋宏さんも編集者で、あのこんまりこと近藤麻理恵さんの『人生がときめく片づけの魔法』を担当されたのだそう。全世界での販売数、1千万部超。
(こんまりさん大ファンなので、ちょっと震えた。。!)

2時間という長丁場だったこのイベント、高橋さんが竹村さんに質問を投げかけながら、編集者としてのキャリアを時間軸でなぞっていき、そのときどきでの経験から学んだことをシェアしてくださる、という流れだった。

「顧問編集者」という仕事

「顧問編集者」の話が出てきたのは、イベント最後のQ&Aでのこと。竹村さんの説明を聞き、それまでの2時間でバラバラと頭に入ってきたことがバシっとつながり、「編集」という仕事への理解がぐぐっと深まったように感じた。
(質問してくださった方、ありがとうございます!こういう場での質問力、本当に大事だと思う)

竹村さんがいわく、「顧問編集者」は以下のようなお仕事らしい。

・クライアント企業の経営者に、毎週1時間取材をする。そこで聴いた話をもとに、Twitter(毎日)とnote(月1/5,000字前後)上(雑談)で発信をする。

・リリース文や、wantedly(ビジネスに特化したSNS)に掲載するメッセージや社員インタビューなどの文章を書く
(竹村さんが編集としてディレクションし、ライティング自体はライターさんが行う場合もある、とのこと)

要は、クライアント企業の文章面での発信を総合的にディレクションする、ということ。竹村さんが繰り返し語られていた「編集」の仕事そのものだなと感じた。

書籍の編集であれば、著者の主張がうまく伝わるように、本の構成を組み立てる。筆者が書いた文章をそのまま並べるのではなく、読者が疑問に思うだろうことを先回りして提示するなど、読者の視点で順番をかえたりもする。著者の文章がより引き立ち、魅力的にみえるよう、組み替える。

ブックライティングであれば、著者に取材をして、文字起こしした原稿をロジカルに整え、本の全体を考えながら、構成する。素材やエピソードが足りなければ、自分で書き足すのではなく、追加で取材をする。
(竹村さんにとってはブックライティングもあくまで「編集」「代弁者」であり、「ライティング」というのはおこがましいかも、と感じられるそう)

どちらにしても、自分の意向は一切いれず、あくまで著者がいっていることを日本語的に整えていく。

敏腕編集者である竹村さんが編集職を極めていき、たどりついているのが「顧問編集者」というところを、とても興味深く感じた。

(ちなみに料金体系は月額制で、わりといい条件の報酬を受けとるぶん、結果はシビアに数字を見られる。クライアントさんはTwitterのフォロワーが3倍に増えたり、採用のミスマッチが減ったり、新規問い合わせが増えたり、といったことを価値として感じている、とのことでした)

*顧問編集者について、竹村さんがnoteにまとめてる文章はこちら。

竹村さんのTwitter/note活用術

編集者としていくつかの出版社で経験を積んだのち、フリーランスの編集者として独立。その半年前ぐらいから、力を入れてnoteを書き始めたのだそう。

質の高いフォロワー(*)を獲得するために意識したのは、「面白い雑誌」のようなタイムラインを意識した、とのこと。
(*質の高いフォロワーとは、ただ自分を認知していたり、情報源としてみているのではなく、発信するコンテンツに価値を認めて仕事を依頼してくれたり、ファンとして継続してコンテンツをみにきてくれたり、書籍を購入したり、イベントに参加してくれるフォロワー)

そのため、普段からひっかかることなどをメモしているのだそう。最近だったら、「『clubhouseに招待して!』と言えるひとと言えないひとのちがいはなんだろう」とか、「voicyじゃなくてclubhouseがこんなに盛り上がっているのはなんでだろう」とか。

Twitterでもnoteでも、「目の前に全然知らないひとがいたら、どうやって話しかけて、なにから話すか」をイメージする。そのために竹村さんが意識されているのは、たとえばこんなこと。

・プロフィールには信頼してもらえるような情報をいれる。

・最初の書き出しで「読んだらどういういい情報が手に入るのか」「どんなノウハウがわかるのか」を明確にする。

・Twitterなら最初の5文字が超重要!最後まで読んでもらえると思ったら大間違いで、最初の1〜2秒でつづきを読むかどうか、判断される。

(ここらへんのことはもうすでに竹村さんのnoteにぎゅっとつまっていることだと思います。わたしはまだあまり読めていなかったので、メモしてます)

「自分が本当に書きたいことを読んでもらうためには、どうしたらよいのでしょうか?」という質問への、竹村さんの答え

Q&A、いい質問が多かったなあと思うのだけど、この質問もわたしには刺さりました。

(イベントでの話を聴いて)自分の書きたいことと、そこに需要があるかどうかは別問題だということを理解しました。となると、自分が本当に書きたいことを読んでもらうためには、どうしたらよいのでしょうか?

竹村さんの答えは、まずは「あなたは誰なんですか?」というのを確立すること。マーケットの需要にあわせて、自分に求められていることを発信する。発信しつづけて、自分を認識してもらえるようにあれば、聴いてもらえるようになる。
(逆だと、せっかくいいことを言っていても、聴いてもらえない)

これって、まさに竹村さんがTwitterとnoteで実践しつづけてきていることそのものなんだろうなあ、と。

ちがう文脈での発言ではあったものの、ここらへんもこの質問への答えになりそうものも、箇条書きでくっつけておきます。

・講演会を開くとしたら、なにを話す?
(自分の言いたいことよりも、自分に求められていることを話すのでは?)

・すべての文章は手紙。誰かに手紙を書くように、文章を書く。

・文章の読み手をイメージするときは、30代の主婦のようなぼんやりしたターゲットではなく、親戚のなんとかさんのように具体的に思い浮かべ、そのひとなら絶対読んでくれる(書籍なら買ってくれる)、というような内容を書く。

・抽象論ではなく、自分のエピソードを書く。

・自分の当たり前が、みんなにとっての当たり前じゃない。自分の当たり前を素直に書いてみる。
(取材してても、「こんなことで面白いんですか?」ってよく言われる。

・自分にとって自分はオンリーワンだけど、向こうからするとone of themでしかない、という認識を持つ。

「文章を書くことで、そもそも自分はなにを伝えて、なにをしたいのか?」

2時間のイベントのしめくくりに、高橋さんから「最後に視聴者へのメッセージを」と促されての竹村さんの言葉は、「書くな、伝えろ」。

文章を書くことで、そもそも自分はなにを伝えて、なにをしたいのか?
書くことでなにを成し遂げたいかをはっきりさせれば、実現するための手段が見えてくる。本を1冊書くよりも、Twitterで発信しつづけることが正しいかもしれない。もしくは、Twitterのように流れていくフローのチャネルではなく、書籍のようにまとまって残るものにして、次世代に伝えていけるようにするほうがいいかもしれない。

ああ、本当にそうだなあと、このイベントで1番心に残った。

2時間聴いたことを全部ひっくり返すようだけど、それらはすべて竹村さんが自身の経験からひとつひとつ身につけてきたことであって、こうしてイベントに参加して話を聴かせてもらったくらいで、わたしが明日から同じようにできるわけじゃない。するのがいいわけでもない。だって、みんなそれぞれ、書くことで実現したいことがちがうわけだから。

たとえば、先日別のオンラインイベントでお話を伺ったフリーライターの神田桂一さんは、竹村さんとは真逆のことをお話されていた(「マーケティングより、自分が面白いと思ったことを信じる方がいい」)。神田さんもご自身の経験から神田さんにとっての「書くこと」を確立されてきたわけで、竹村さんと考えがちがって当たり前。

いまはありがたいことに、こうして「書くこと」について学ぶ場をいくらでも得ることができる。でも、いくら学んでも、その学びからヒントを得ることはできても、結局はわたしもわたし自身の経験を積んで、じたばたしながら、自分なりに身につけていくしかない。

あらためて、気が引き締まるような想い。よい学びを得られた、よいイベントでした。

*イベントでお話してくださった内容含め、竹村さんの「伝わる文章術」がたっぷり詰まった著書。タイトルだけで撃ち抜かれました。。!

*フリーライターの神田桂一さんのイベントレポはこちら。




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