行動コストの低い人が、事業開発を上手く進められるという話
こんにちは、世界中のヒトや組織の可能性を拡げたい、もりやまん(@moriyaman0)です。株式会社アトラエにて、組織力向上プラットフォーム Wevoxの事業責任者をしております。
最近はもっぱらPdMの強化・育成に僕も含めて取り組んでおり、ユーザーリサーチやプロダクト企画など、言語化しながら社内のメンバーと取り組んでいます。その中で、改めてPdMや事業開発において「行動コストを下げること」意識することが大事だなと思ったので、学びや気付きを書きます。
※ この記事は、BtoB事業開発 Advent Calendar 2023の記事です。 アドベントカレンダーの記事や感想に関してはXのハッシュタグ「#BtoB事業開発アドカレ」をご覧ください!
大体のことは上手くいかない
Wevoxの事業を立ち上げて7-8年が経ちますが、大体のことは上手くいきません。1つの機能リリースをとっても、感覚的には、5回改善サイクルを回してようやく想定の20%くらいの成果に到達するイメージです。(逆に1回のリリースや仕込みで、上手くいったことは1度もありませんw)
企画も同様に、10個企画して1つ想定していた価値につながれば良い方かなと思ってます。プロダクトの企画に限らず、顧客への提案・検証などでも同じことが言えると思います。
ただし、シリアルアントレプレナーの方や、過去にいくつもの挑戦を実施してきた方、プロダクトの企画力に優れている方など、1/10の打率(10%)を1/5(20%)にする経験値やスキルを持っている方もいます。
最近ではそういう方々の有り難いお言葉やナレッジやフレームワークがXやnoteにもよく流れてくる為、「この考え方にきちんとハマれば、自分も上手くいくはず…」と考えがちです。認知負荷が高すぎると、人は行動を選択することができず、気づけば時間が流れてしまいます。フレームワークはとても有用なのですが、フレームワークで整理ができたからといって事業が上手く進むわけではありません。
失敗するアンチパターンは存在している
フレームワークで整理をすると、「ここの要素が甘い…」「ここをもう少しこうしたらいいのではないか…」と通称企画入念おばけに取り憑かれます笑
最近は、LeanStartupのアプローチではだめだ!という話も良く耳にしますが、改めてEric氏のインタビューを聞いていると、
・多くの起業家や事業開発者は"失敗したくないという恐怖"に囚われる
・失敗ではなく実験と捉える
・仮説を検証する為のMVPを作り学習し、段階的接近を行う
などと話しており、企画入念おばけにとりつかれない方法を説いているとも言えます。(ちなみにEric氏は、複数の起業家と伴走する中で、失敗するアンチパターンをLeanStartupにまとめたと言ってます。)
つまり、企画だけと向き合うのではなく、顧客を通して実験を行いながら学びを得ていくことが大事です。
…とまぁここまでは、事業開発やPdMを志す人であれば、ある程度の人は頭では理解しているはず。(ここでの理解は、知っている程度かもしれません)
頭ではわかってるんだ…でもできないんや…という声が聞こえてきそうです。僕も今でも企画入念おばけと日々闘ってます。
"行動コスト"が高すぎることが足かせになる
「頭ではわかっているのに、できない」を、もう少し紐解くと、実験する為の行動コスト(心理・物理の両方)が大きすぎることが原因になっているケースが多いです。
例えば、大きく課題理解と仮説検証、対1と対nで分けると図のようになります。これらを実施しながら、事業やプロダクトの輪郭を作っていきますが、大体の人が苦手領域やどういう行動をすればいいのかイメージを持てないというものが存在します。
例えば、各要素に対して、下記のようなことがコストとなり、行動を取ることのハードルが高くなります。
行動コストが高いと、そこで足踏みしてしまい、違う手段を取ろうとします。自身の頭の中で入念に企画することが最もコストが低い行動になるため、企画入念おばけに取り憑かれてしまい、アンチパターンにハマってしまいます。
例えばエンジニア出身のメンバーが、PdMや事業企画をする際には、N1側との接点が薄くコストが高い為、上2つで回避しようと動きがちです。
この場合データで構造を理解し、仮説の中で企画を進める為、「それユーザーが本当に求めてるものなの?」「ユーザーのペイン本当に理解している?」という落とし穴にハマりやすいです。
逆にカスタマーサクセスや営業側を担当しているメンバーが企画した際には、構造よりはN1を捉えやすく、下記2つで回避しがちです。
この場合N1の事例を元に、企画を進めていく為、「それ〇〇の特殊ケースが前提になってない?」「個別に機能を作るってこと?プロダクトが破綻しちゃうよ?」という落とし穴にハマりやすいです。
実際には、この全てのアプローチをいったりきたりしながら、ユーザーの課題やコンテクストを理解し、仮説検証を行うことが重要であり、各行動コストを如何に下げていくかが求められます。
優れた起業家や事業家は、どのエリアに対しても行動コストが低い傾向にあり、高速でPDCAを回すことができます。経験を積めば積むほど、行動コストが下がっていき、より高速で改善ができる。
シリアルアントレプレナーがITの世界で強いのは、マーケット嗅覚もありますが、この行動コストの低さにも現れていると感じています。
行動コストを下げるには「土台」と「経験」
行動コストを下げるには、土台視点と経験視点の2つが大事になります。「上の行動って、一人が全て担えなくていいよね?」という声も聞こえてきそうですが、深さはさておきPdMや事業開発を担うのであれば、一通りすべて担えることが前提だと思います。
なぜなら先ほどお話ししたように、人間は行動コストが高いと、無意識的に行動コストが低いもので回避しようとしてしまい、結果として企画入念おばけに取り憑かれるからです。
では、どのようにこれらの行動コストを下げていくのでしょうか?Wevoxでは、「土台」と「経験」でアプローチしています。
まず、「土台」の構築です。ここでの土台は、「何かをしようとした際に、自走できる環境」を指します。例えば、データ分析の基盤がなければデータを分析することはできませんし、N1の仮説検証も取れる手段がなければスタックしてしまいます。
次に、事業開発者やPdMメンバーが、「最も行動コストが高いもの」を意図的に実行してもらいます。
例えばエンジニアメンバーの場合は、N1側が弱くなるため、ユーザーインタビューをとにかく実施してもらい、インタビューすることのコストやハードルを下げたり、Engagement Run!に参加してもらい、積極的にユーザーと触れてもらいます。
そして、行動する中で必要なスキルや能力を身に着けてもらい、経験と共に行動コストを下げていきます。Engagement Run!でも経験学習サイクルに則った学習プロセスをデザインしており、経験を伴うことを重視してます。
あなたはどの"行動コスト"が高いだろうか?
今日は行動コストに着目して書いてみました。第一歩目として、「どの行動コストが高いのか?」を知ることが大切です。また本気で事業開発やPdMを目指すのであれば、苦手な部分を役割分担で片付けず、きちんと経験しスキルや能力を身に着けながら行動コストを下げることをオススメします。
データ分析が苦手であれば、SQLを覚えながら自分の仮説をデータを使って検証するトレーニングをしてみるも良し。
プロトタイプ検証のイメージが持てなければ、機能ではなく人を介して同じ価値を提供する為に何をすべきだろうか?と考えトライしてみるのも良し。(この動きはまさにカスタマーサクセス)
社内の事業開発をしているメンバーが取っている手段をマッピングして、可視化するも良し。
最後に、僕は元任天堂社長の岩田さんが大好きで、自分で思い描いたらガーーっとコードを書いてプロトタイプを作ってしまえる行動コストの低さが素敵だなと思ってます。初期コストが低く事業やプロダクトを作れるのがIT産業の凄さなので、ぜひ皆さんも自分の行動コストを下げて良い事業やプロダクトを社会に提供してもらえると嬉しいです!
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