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人のベンティを笑うな。
とにかくデカかった。
スターバックスのあたりレシート(ドリンクが一杯無料で飲める)の使用期限が今日までだったので、スターバックスへと駆け込んだ。
せっかくなので、飲んだことがないのを飲んでみたい、と思ったので、今一押しで販売している、ロイヤルアールグレイブーケ&ティーラテを注文した。
レシートを出すと、せっかくならいちばん大きいサイズでご用意しますね、と言われ、僕は突然のベンティーデビューとなった。心の準備はできていなかったが、店員さんの優しさを無下にするわけにはいかない。
あと、ホイップクリーム入れると美味しいですよ、と言われたので、されるがままだった。どちらにせよ今日は、お金を払わなくて良いのだ。
ふとベンティとはどのくらいの大きさなのだろうか、と思った。
いつもはトールだ。たまにグランデを頼むこともあるが、コーヒーをタンブラーに入れるので、サイズ感がよくわからない。
でか!というより、長い!という印象であった。
この紙コップで飲んでいる人をみたことがない。
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ふと、みたことがないのは、僕だけではないんじゃないか、と不安に駆られた。
「ベンティーサイズお待たせしましたー!」
と言われた刹那、店中の視線を一斉に浴びることになるのではないか——ベンティだ、ほんとだ、ベンティ頼む人初めてみた、でか!、わあ、インスタインスタ。ざわざわざわ——ええい、人のベンティを笑うでない!
ということが起きるのではないかと危惧したが、もちろんそんなことはなかった。
みんなパソコンやスマホや、勉強に夢中であった。誰も他人のベンティーに興味などないのだ。
ベンティのラテを飲みながら、海猫沢めろん先生の本を読んでいた。
文章はもちろん面白いんだけど、エピソードの一つ一つが強い。これだよ。
目玉が飛び出た、とか、イタコの話とか。経験しなきゃかけないもんなあ。
作家たるもの、なんでもないことを面白く書くのはもちろん必要な技術で、そこが腕の見せ所なのかもしれないが、まずはやはり面白い経験に飛び込んでみる必要があるのでは、と思った。
今の僕の生活は凪だ。風も吹いていない。
面白エピソードを拵える必要がある。
窓を開けて、新しい風を取り込もうではないか!
何かを求めてゲストハウスに泊まった時も、特に何もなかったしなあ、
きっと治安が良過ぎたのだ。
誰かと話がしたい。
切実にそうおもった。
そして、何か面白い方へ、面白い方へ、徘徊していかねばならない。
本を読むだけでは書けないことがあるんだろうな、と思った月曜であった。
ベンティの満足感はすごかった。
ドリンクだけで腹がパンパンになった。
糖分を摂取したので少し元気になった。
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