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18年の時を経て共感できた映画のセリフ。

2006年に公開された映画『かもめ食堂』は、静かで、景色が美しくて、何気ない会話に気づきが詰まっていて、食器やインテリアが素敵で、ごはんが美味しそうで・・・何より私の中のフィンランドという国の存在感を大きくしてくれた大好きな映画です。

実際、その10年後の2016年に初めてフィンランドを訪れ、美しい緑を眺めながらトラムに乗って街を散策し、ロケ地となった本物の“かもめ食堂”で食事ができた時は一つの夢が叶ったような高揚感に包まれました。そして、その時に一緒に食事をしたお相手は、なんとお店に入る直前に出会った日本人女性!

私は左から、彼女は右から、道の両サイドからかもめ食堂を目指してやってきた私たちは、お店に辿り着くタイミングがぴったり同じでした。扉の前で顔を見合わせ、お互いが日本人であると認識した時の驚きと安堵感といったら! 何だか新たな物語が始まりそうな出会いに胸が高鳴り、「こんなことある!?」と信じられないような感覚になったことを覚えています。

お互いに初めてのフィンランド旅行、それも一人旅、ふたりとも映画『かもめ食堂』を観て、同じタイミングでその食堂へとやってきたこと・・・不思議なご縁を感じて、一緒に食事をすることになりました。料理をシェアし合いながらお互いの話を夢中で聞いたあの夜のことは、きっとずっと忘れません(東京在住のNさん、お元気かなぁ)。

そんな素敵な出会いにも恵まれたフィンランドの旅。映画を観ていなければフィンランドに行くことはなかったかもしれません。そしてデンマークやスウェーデンといった北欧の国に興味が湧いたことも、今では日常的に愛用しているマリメッコやアラビアの食器、北欧のヴィンテージ家具との出会いも、元を辿ればこの映画が始まりだったように思います。映画『かもめ食堂』から受けた影響は、実はとても大きいことをあらためて実感しました。

・・・と、つい前置きが長くなってしまいましたが、映画のあるシーンに、こんなセリフが出てきます。

「やりたくないことは、やらないだけなんです」

映画『かもめ食堂』(2006)より

小林聡美さん演じる主人公のサチエさんが、食堂にやってきた日本人客のマサコさんに言うセリフなのですが、2006年に初めてこの映画を観た時から、この言葉がずっと胸に引っかかっていました。

当時の私は、「そんな風に生きられたらいいな」と憧れつつも、「“やりたくないことはやらない”なんて難しいよな〜。やりたくなくてもやらなきゃいけないことって、実際はたくさんあるし…」と、誰にも言わずに、心の中ではそんな風に思っていました。

18年前といえば、新卒で働き始めて一年とちょっと。元銀行員で、ひと回り以上も年の離れた先輩に、マンツーマンで厳しく仕事を教わる毎日でした。帰宅後も、長文の“指摘メール”が届く日々。心身ともにヘトヘトな状態で観た『かもめ食堂』は、私にとってオアシスのような映画でしたが、サチエさんのこのセリフにだけは何だかモヤモヤを感じていました。

当時はまだ、“若い時の苦労は買ってでもせよ”的な風潮があり、幼い頃から父親の苦労話を繰り返し聞いて育った私は、例に漏れず、“苦労には価値がある”といった固定観念にとらわれていました。そして本当はやりたくなくても世間体を気にしたり、「みんなもやっているから」といった理由で我慢してやっていたこともたくさんありました。

・・・あれから18年。ここ最近の私は、ようやく“苦労”や“やりたくないこと”はやらなくて良いと思えるようになってきました。「〜せねばならない」「〜でなければならない」といった型に自分を押し込めることや、ズーンと暗い気持ちになること、心がはちゃめちゃに抵抗することはいったん横に置いてみることを少しずつ自分に許可するようになりました。

そして自分のやりたいことに目を向けて、楽しい!と感じること、面白くてただただ夢中になれること、ひゃっほー!とテンションが上がること、考えるだけで「むふふ」と笑みがこぼれてしまうことを積極的にやるようにした結果・・・

心がとても軽くなり、「次はあれをやろう!」「その後はこれ!」と、やりたいことがぽんぽん浮かび、毎日が忙しくなってきました(この記事も「書きたい!」と思い立ち、わくわくしながら書いています✨)。「〜したい!」と思いついた時の、心が踊り出すような感覚がたまらなく好きです。そして不思議と眠りも深くなり、身体も心も過去に比べると健全な状態を保っていることに気がつきました。

・・・そんな日々の中、サチエさんのセリフをふと思い出した時のこと。頭の中であらためて反芻してみると、何の違和感もなく、むしろ共感できるようになっている自分に驚きました(感涙)

2006年と2024年の私は、住んでいる場所も、興味関心も、休日の過ごし方も、家族構成も、周りにいてくれる仲間や友人も、何もかもが違います。当時、結婚すると思っていた人とは全く違う人と結婚し、京都に住み続けたいと思っていたはずが大阪へと引越し、不思議なご縁で“こぎん刺し”に出会い、そして引き寄せられるかのように出会った星読みの世界では、yujiさんを通して仲間と呼べるお知り合いが全国にたくさんできました。私の世界は、2006年の私が思いもしなかった方向へと広がり、私自身の感じ方や考え方も、知らず知らずのうちにアップデートされていたようです。

やりたくないことや、必要以上の苦労を背負い込む日々はもうおしまい。セリフに共感できるようになるまで18年もかかりましたが、これからも自分自身が夢中になって楽しめることや、心が踊るようなことに目を向けていきたいと思います。一つのセリフに感じたモヤモヤが、まさか18年後に解消されるとは思ってもいませんでしたが、2006年から2024年に至るまでの自分自身の変化を感じられたことは、とても感慨深いです。

ちなみに、「やりたくないことは、やらないだけなんです」というセリフが出てくるシーン。今では特にお気に入りで、Amazonプライムでその部分だけを何度もリピートして観てしまいました(笑)セリフはもちろん、サチエさんの言い方や表情、仕草もとっても良いんですよねぇ。

短くまとめられず長くなってしまいましたが、最後までお読みくださりありがとうございます。
Kiitos!


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