結局、産後の腰痛ってなぜ起こるの?
本日は、多くの産後女性が感じている「腰痛」について、いくつかの論文を読み、まとめた内容をお伝えしていきたいと思います。
9割以上の女性が産前産後の体のトラブルを感じていたというデータもあります。(↓のURLよりアンケート結果をご覧ください)
https://sangomama.info-web.site/questionnaire/
その中でも腰痛に関しては、
妊娠中→70.6%
出産後→63.6%
の女性が感じており、産前産後の女性が抱えるトラブルの中で、最もメジャーな症状ともいえますね。
今回は、以下の項目に分けて、論文から得た知見をもとに書いていきます。
なぜ産後は腰痛になるのか
①妊娠中の体重増加や姿勢の変化
妊娠によって女性の体重は増加し、腹部が大きくなるため、これに伴って重心が前方に移動します。
重心が前方に移動すると、頭が前方に出て、腰は反るような姿勢になります(下の画像参照)。
この変化により、腰部や骨盤周辺の筋肉や関節に負担がかかります。筋肉は体を支えるためにずっと緊張させているため、硬くなり、伸び縮みがしにくくなります。
筋肉は、過緊張の状態が続くと、その長さ自体を縮めてしまう性質がああります。
妊娠中にお腹が大きくなってからずっと腰の筋肉は緊張し続けますので、産後に背中を丸めて腰のストレッチをいきなりしようとすると、腰の筋肉はうまく伸ばせず、かえって緊張を強くしてしまい、痛みを感じてしまいます。
さらに厄介なのは、腰の筋肉が緊張し続けると、腹筋や骨盤底筋群の収縮が入りにくくなると言われています。
反り腰により腹筋や骨盤底筋群が過剰に引き延ばされるためです。
良い姿勢を維持するために必要な腹筋や骨盤底筋群を収縮させることができない状況では、余計に腰の筋肉に頼らざるを得ないので、腰をさらに緊張させてしまいます。
このような姿勢の変化により、腰部や骨盤にかかる圧力が増加し、腰の筋肉を過剰に緊張させ続けることで腰痛を引き起こしやすくなります。
②ホルモンの変化
妊娠中や産後には、リラキシンというホルモンが分泌され、関節や靭帯を緩める役割を果たします。
これは出産時に骨盤が柔軟になるために必要なプロセスですが、同時に骨盤や腰椎の安定性を低下させることになります。
この結果、腰の筋肉を過緊張させることで安定性を得るように働くため、①でお話しした、腰の筋肉の過緊張傾向が強まり、腰痛が発生しやすくなります。
⓷育児や家事による身体的な負担
新生児の世話や抱っこ、授乳などの動作は、腰に大きな負担をかけます。
特に、繰り返し同じ姿勢をとることや、負担がかかりやすい姿勢で重いものを持ち上げることが腰痛を悪化させることがあります。
以下は、論文から得られた知見ではなく、個人的にまとめたものになりますが、育児動作は以下のように分けることができると考えます。
以上の画像のように、
・重心が前方(爪先寄り)か、後方(踵寄り)か
・立って行うか、座って行うか
といった2つの観点から4つの象限に分類することができると考えています。
どの動作の時に症状を感じやすいか、によって対策も少しずつ変わってきますので、参考にしてみてください(このタイプ別の対策は下記に記載しています)。
ちなみに腕や手首については赤ちゃんを持ち上げる際には常に使うことになりますので、どのタイプの動作でも負担はかかってきますので、記載しておりません。
腰痛はどのような影響を及ぼすのか
産後に腰痛が起こると、産後うつになりやすい、ということもいくつかの論文で言及されています。
上記は、「産前も産後も、腰痛がある人は、腰痛がない人よりも3倍程度うつ症状が出やすかった」ということが示されている論文です。
うつ状態とは言わないまでも、腰痛があることによって精神的にストレスを感じることは多く、産後うつの予防という観点でも腰痛を改善することは大事だと考えます。
また、腰痛は動作中だけでなく、睡眠時にも感じることがあるという話も多く聞きます。
産後は赤ちゃんの夜泣き対応や、授乳などで睡眠不足になりやすいですが、腰痛を感じることによって睡眠が妨げられてしまうということもあります。
こういったことからも腰痛と睡眠不足には関連があると考えられます。
腰痛は精神的な症状とも強く関連していると言えますので、こういった精神的な症状や生活のリズムを整えられなくなる状態を防ぐには、腰痛への対策が重要であると言えるでしょう。
どのように直していくべきか
じゃあどうやったら良くなるのか?ということですが、論文に書いてあったアプローチをまとめると以下のようになります。
・理学療法
・運動
・鎮痛剤
・心理的ケア
これらのアプローチについて書いていきます。
・理学療法
理学療法とは、身体機能の低下に対し、運動療法やマッサージなどの徒手療法、機器を使用した物理療法などを用いて、症状緩和・機能向上を目指す方法です。
産後の腰痛に対しては、
・骨盤底筋や腹部の筋肉を強化するエクササイズ
・マッサージなどの手技療法
・姿勢や動作の修正
などを行います。
エクササイズを行うことによって腰部や骨盤の安定性が向上し、痛みが軽減されます。特に、骨盤底筋のトレーニングは重要であり、適切なエクササイズを継続的に行うことで、症状の改善が期待できます。
理学療法士によるマッサージや手技療法も、筋肉の緊張を和らげ、血行を促進する効果があります。
また、理学療法の中で姿勢や動作についてもアドバイスをすることができますので、先ほど書いたような姿勢や動作の特徴も捉え、負荷のかかりにくい姿勢や動作をその方に合わせて指導します。
・運動
適度な有酸素運動は、全身の筋肉をリラックスさせ、痛みを軽減する効果があります。
軽いウォーキングやヨガなどが良い選択肢です。これにより、筋力の回復と全身の血行促進が図られます。
また、日常生活における姿勢や動作の改善も重要であり、正しい姿勢を維持することで、腰部への負担を減らし、痛みの予防につながるとともに、腹筋や骨盤底筋群のトレーニングにもつながります。
先ほど示したように、基本的に産前も産後も腰は反りやすく、その姿勢や動作を改善する必要があります。
立っている姿勢ではお腹を引っ込め、頭を前に出さないように顎を引きながら少し後ろに頭の位置を保持するようにすることで腹筋のトレーニングにつながります。
おしりをキュッと締めるように力を入れると骨盤底筋群にも収縮が入りますので、併せて試してみてください。
・鎮痛剤
また、痛みが強い場合には、医師による薬物療法が必要となることもあります。
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)などの痛み止めは、短期間の使用により痛みを和らげる効果があります。
ただし、薬物療法は一時的な緩和に過ぎないため、根本的な解決には運動療法や理学療法を併用することが望ましいです。
かかりつけの産婦人科や整形外科を受診することで処方してもらうことができます。
また、整形外科では先ほど取り上げた理学療法や家庭での運動方法の指導も行ってくれると思いますので、腰痛が強くなってきた場合は検討してみてください。
基本的には、
・動くと毎回痛く、何をしても改善しない
・痛くて腰が曲げられない
・足やお尻にしびれるような症状がある
といった状況では整形外科の受診をお勧めします(もちろんこういった症状が出てくる前に相談いただくのはOKです)。
・心理的ケア
心理的なサポートもまた、産後腰痛の管理において重要と言われています。
先ほども書いたように、産後の精神的な症状と腰痛は関連がありますので、心理的なケアやサポートを受けることはとても重要です。
以下の論文では、産後女性のパートナー(つまり夫)への産後支援協力プログラムによって、産後女性のストレスが減少したということが述べられています。
カウンセリングやサポートグループへの参加は、心理的な負担を軽減し、全体的なQOLの向上に寄与することもあり、有効だと考えられます。
以上、論文を引用しながら、産後腰痛について述べてまいりました。
調べた論文は上記だけではありません。他にも多くの調査がありましたが、まとめると上記のようになりました。
また調べていく中で、産後の体のトラブルに対する調査やフォロー体制などがまだまだ日本では不十分だと感じました。
今後その体制を構築するために、できることを探してやっていきたいと思います。
具体的に試してみて欲しいこと
さて、ここからは具体的に家ではどのようなケアやトレーニングをしていけばよいのか?ということを私個人の意見として書いていきます。
産後の妻や知人に対して行ってきたケアなどの経験も含みます。
実際に行う場合、できるだけ身体へのリスクが内容に配慮しておりますが、エビデンスとして正確なデータが示されていない情報もありますので、ひとまず参考程度にご覧になってください。
ご自宅で簡単にできることとして、以下の3つを取り上げたいと思います。
①腹式呼吸
②マッサージ
③姿勢保持練習
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