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第三回 ブランドとデザイン(2)      デザインをむやみに変えないことが大事

 Underwood(2003)は、デザインは消費者の記憶を喚起し、ブランド連想を引き起こすとしているが、消費者がデザインを見て、特定のブランドを連想するようになるには、反復学習が必要になる。つまり、何度も同じようなデザインに遭遇しなければならないのである。また、長崎(2003)は、デザインの特徴が部分的にでも維持されていれば、ブランドは認知されるとしているが、こちらも、時間や製品の枠を超えてデザインを継承・共有していくことの重要性を示唆している。
 このように、デザインをブランド構築に活用するには、デザインをむやみに変えないことが大事になってくるのである。

https://www.amazon.co.jp/ブランド・リレーションシップ-小川-孔輔

 しかし、だからといって、何世代にもわたって全く同じデザインを繰り返したり、すべての製品を同一のデザインにしたりすることは得策ではない。消費者の記憶の中に強固なイメージを築くことができる反面、飽きられてしまうからである。それでは、デザインをどのように活用すれば、ブランド構築することができるのであろうか。
 結論を先取りすると、デザインをブランド構築に活用するには、企業は、個性的で統一感や一貫性のあるデザインを開発することが必要になる。ブランドを構築するには、デザインはまず個性的でなければならない。没個性的なデザインでは、その企業や製品に対する独自のイメージを築くことは難しいからである。さらに、それらの間に統一感や一貫性が確保されていなければならない。バラバラのデザインでは、消費者はブランドに対するアイデンティティを認識したり、信頼感を抱いたりすることができないからである。
 なお、ここでいうデザインの統一感とは、複数の製品の間でデザインの特徴が共有されている状態のことを指す。一方、デザインの一貫性とは、時間を超えてデザインの特徴が継承されている状態のことを指す。

https://www.amazon.co.jp/経営学者が書いた-デザインマネジメントの教科書-森永-泰史

 製品の枠や時間を超えてデザインの特徴が共有・継承されていると、企業単位でのブランド(いわゆる、コーポレートブランド)が構築しやすくなる。また、仮に製品間のデザインにバラつきがあったとしても、特定の製品において、時間を超えてデザインの特徴が継承されている場合は、製品単位でのブランド(いわゆる、個別ブランド)が構築しやすくなる。つまり、いずれにしても、デザインを点ではなく、線や面で展開することで、はじめて「らしさ」を創り出すことができるのである。

参考文献                                森永泰史(2016)『経営学者が書いたデザインマネジメントの教科書』同文舘
 出版。                             
長崎秀俊(2003)「ブランド管理におけるパッケージ戦略:パッケージ・アイ
 デンティファイアの役割とコミュニケーション効果」小川孔輔編『ブラン
 ド・リレーションシップ』同文舘出版、27-54頁。  
Underwood, R. L. (2003) “The Communicative Power of Product
 Packaging:  Creating Brand Identity via Lived and Mediated
 Experience,” Journal of Marketing Theory and Practice, Vol.11, Issue1,
 pp.62-76.


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